いわき市平城跡の保存に関する要望書

埋文委 第6号
2020年11月20日

 

 文化庁長官   宮 田 亮 平 様
 福島県知事   内 堀 雅 雄 様
 福島県教育長  鈴 木 淳 一 様
 いわき市長   清 水 敏 男 様
 いわき市教育長 吉 田   尚 様

 

                                                           一般社団法人日本考古学会
                                                            埋蔵文化財保護対策委会
                                                             委員長 藤 沢  敦

 

いわき市平城跡の保存に関する要望について

 

 標記の件について、別添書類のように、当該遺跡は学術上きわめて重要な内容を有するものであることから、適切な保存の対策が講じられることを要望いたします。

 つきましては、当件に係る具体的な措置および対策について、誠に恐縮ですが、2020年12月18日(金)までに、当協会埋蔵文化財保護対策委員会委員長宛にご回答を下さるようお願いいたします。

 

 

1 提出文書
    要望書  1通
  別添のとおり


埋文委 第6号
2020年11月20日

 

 文化庁長官   宮 田 亮 平 様
 福島県知事   内 堀 雅 雄 様
 福島県教育長  鈴 木 淳 一 様
 いわき市長   清 水 敏 男 様
 いわき市教育長 吉 田   尚 様

 

                                                           一般社団法人日本考古学会
                                                            埋蔵文化財保護対策委会
                                                             委員長 藤 沢  敦

 

いわき市平城跡の保存に関する要望書

 

 いわき市平に所在する平城跡は、1615(慶長20)年に譜代大名の鳥居忠政によって建てられた近世城郭で、内藤氏、井上氏、安藤氏の居城をへて1868(明治元)年の戊辰戦争で焼失し、その後民有地として売却され近年にいたります。

 この平城跡に対し、いわき市は2018年に本丸部分を公有地化し、2019年に策定した「(仮称)磐城平城・城跡公園基本計画」にもとづき、体験学習施設建設のため2020年6月から本丸中心部の発掘調査を開始されました。調査の結果、数時期の文化面が認められ、最上層では戊辰戦争による火災跡とみられる焼土層、礎石列、雨落ち溝などの遺構が検出されるとともに、肥前産の大皿などの高級陶磁器、瓦、戊辰戦争で使用された砲弾など数多くの遺物が出土しました。絵図や文献などにもとづくと、この場所は平城の本丸御殿の一角に当たるものと考えられます。

 近世城郭の中枢部である本丸御殿跡がこれほど良好な状態で確認された例は全国的にも少なく、国史跡に指定されている他の近世城郭に匹敵する極めて高い学術的価値を持つと考えられます。この成果を受け、清水市長が2020年9月1日の記者会見において平城跡を将来にわたり保存するとの意向を表明されたことは、英断として高く評価されるものと考えられます。

 しかし、今回の発掘調査の原因となった公園計画は現在も進行中であり、特に本丸内に建設予定の体験学習施設がどのような形で建設されるかは、平城跡の保存と活用の行方を大きく左右します。仮に現計画どおりの場所と内容で建てられた場合、遺跡の適切な保存が困難になるだけでなく、将来の県・国の史跡指定を目指すうえで重大な障害になるものと言わざるを得ません。

 以上により、日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会は、下記のとおり要望いたします。

 

 

 1.いわき市は、平城跡の遺構・遺物の適切な保存に影響が及ばないよう、本丸跡内に建設予定の体験学習施設の計画を変更し、福島県および文化庁は適切な助言を行うこと。

 2.いわき市は、福島県および文化庁と密接な連絡調整を行い、平城跡の県・国史跡の指定に向けた検討を開始すること。