高輪築堤跡4街区調査成果公表にあたっての日本考古学協会会長コメント(動画配信あり)

2021年4月5日
日本考古学協会 会長 辻秀人

 

最初に

 高輪築堤跡に関しまして、会長声明を発出し、保存の要望を公表してまいりました。昨日(4月4日)に新たに4街区の調査成果の概要が公表されました。日本考古学協会としての考えは、3月2日に発出した会長声明の通りですが、新たな調査成果とその後の報道された国およびJR東日本の方向性に関わり、会長としての考えを表明したいと思います。

港区から公表された第4街区の調査成果

 港区教育委員会から公表された内容の通り、4街区では鉄道開業時の信号機跡と推定される遺構を含む約380mの高輪築堤跡の遺構が検出されています。築堤の保存状態は極めて良好で、当時の景観が圧倒的なスケールで実感できる、かけがえのない歴史遺産と言えます。特に信号機跡は、明治5年(1872)の鉄道開業時のわが国最初の信号機の遺構と考えられ、極めて重要性は高いと考えております。

報道による保存の方向性

 報道によりますと、3街区の第7橋梁を中心に現地保存が検討されているとのことです。しかし、この築堤は日本の伝統的な技法にイギリスの先進技術を加えた最先端の土木工学により、世界的にも珍しい海上築堤という方法で造られたものであります。今回の事業区間内で検出された遺構を全面的に保存しなければ、その意義を根底から覆すことになってしまいます。また、信号機跡と推定される遺構の発見は、築堤全体の意義をさらに高めるものと考えております。

今後のあり方

今回初めて公表された4街区の調査成果については、充分な現地公開の機会を確保する必要があります。その上で、関係する専門家や幅広い市民の意見も聴取し、取り扱いを検討するべきであり、拙速な判断を行うべきでないことを、特に申し述べたいと思います。

日本考古学協会の立場

前回も述べた通り、高輪築堤跡は、世界史的にも稀有な遺跡であり、今回の調査成果をさらに高めるもので、日本近代史・科学技術史・国際交流史における価値は、疑問の余地なく国史跡あるいは国特別史跡に相当するものであります。私ども日本考古学協会は、国及びJR東日本に対し、開発計画の抜本的見直しと高輪築堤跡の現地における全面保存を改めて強く求めるとともに、そのための協力を惜しまないことを再度表明いたします。

 

声明読み上げはこちら

URL:https://youtu.be/pgIXc5OPnbs