広島城跡(サッカースタジアム建設予定地)における遺跡の保存に関する要望について

埋文委 第4号
2021年8月5日

 

広島市長   松 井  一 實 様

 

                      一般社団法人日本考古学協会
                        埋蔵文化財保護対策委員会
                      委員長 藤 沢   敦

 

広島城跡(サッカースタジアム建設予定地)における遺跡の保存に関する要望について

 

 標記の件について、別添書類のように、当該遺跡は学術上きわめて重要な内容を有するものであり、貴職におかれましては、適切な保存の対策が講じられることを要望いたします。

 なお、まことに恐縮ですが、当件に係る具体的な措置および対策につきまして、2021年8月16日(金)までに、当協会埋蔵文化財保護対策委員会委員長宛にご回答を下さるようお願いいたします。

 

 

 1 提出書類
   別添のとおり 1通


埋文委 第4号
2021年8月5日

 

広島市長   松 井  一 實 様

 

                   一般社団法人日本考古学協会
                     埋蔵文化財保護対策委員会
                    委員長 藤 沢   敦

 

 

広島城跡(サッカースタジアム建設予定地)における遺跡の保存に関する要望について

 

 広島城一帯は、近世から近代にかけて、「城下町広島」「軍都広島」の政治的・軍事的中枢として、「都市広島」の形成に重要な役割を果たしてきました。現在発掘調査の進むサッカースタジアム建設予定地も、史跡広島城跡の隣接地で、広島城の「西の出丸」「西の丸」に相当し、明治時代以降は「輜重兵補充隊」等として利用された場所にあたります。

 当該地点における、近代の軍事施設に対する前例のない規模での発掘調査により、溝や通路によって整然と区画された敷地に厩舎や兵舎、浴場に関わる建物が配置された、陸軍中国軍管区輜重兵補充隊関連施設の状況が明らかとなりました。軍事関連施設については不明な点が多いなか、今回の発掘調査成果は貴重な歴史資料となるものです。

 そして、これらの施設は原爆によって壊滅しており、直接的な被爆痕跡を留めている可能性を残しています。戦後から現在にいたる再開発により被爆痕跡の多くが消滅し、被爆体験の継承も課題となるなか、地中に埋もれた被爆の痕跡は、被爆建物・樹木・橋梁などとともに総合的に保存・継承の方策を検討することが求められます。

さらに、下層では近世の広島城西の丸関連の遺構群の出土が予想されます。天守閣の木造再建構想や三の丸の整備計画を含む「広島城基本構想」が策定されるなか、今回調査が進められている西の丸も含め、かつての広島城全体を歴史遺産として保存・活用していくことを構想しなければなりません。

 広島市が近代の軍事施設に関係する遺跡を埋蔵文化財として取り扱い、発掘調査を実施したことには敬意を表し、その調査成果を高く評価するものです。この評価を一層確かなものとし、さらに近世広島城に関わる文化財とともに、広島市の未来を考える歴史遺産として保存・活用していくため、広く市民や学識経験者の意見を聴取し、柔軟に検討・対応する必要があると考えます。

 以上により、日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会は下記の通り要望いたします。

 

 

1 陸軍中国軍管区輜重兵補充隊関連遺跡の調査成果を広く公開し、市民・学識経験者の意見と専門的知見・評価の収集に努めること。

2 平和都市広島市として、陸軍中国軍管区輜重兵補充隊関連遺跡の重要性と価値を十分に検討し、事業計画の見直し・現地保存を含めた遺跡の保護策を講じること。

3 上記1・2の対応および十分な発掘調査を実施するため、必要な期間を確保すること。

以上