第87回(2021年度)総会報告

一般社団法人日本考古学協会第87回(2021年度)総会報告

 日本考古学協会第87回(2021年度)総会は、5月22日(土)・23日(日)に専修大学生田キャンパスにおいて開催された。本来、昨年度に専修大学生田キャンパスでの総会開催を計画していたものであるが、新型コロナウイルス感染症拡大により開催が見送られ、書面審議となった経緯がある。専修大学での開催は、はじめてとなる。

 今回は、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、総会・公開講演会は会場での参加人数を限定するとともにオンラインで配信し、研究発表会もオンライン(ライブ配信・オンデマンド配信)及び誌上発表で行うことになった。それに伴い総会への参加申し込み及び委任状は、いつものように『会報』に同封された葉書での投函だけでなく、協会ホームページ掲載の申込フォームから手続きを取ることになった。

 また総会会場となる専修大学生田キャンパスでのオンラインによる初めての総会運営にあたり、事前に総会開催に向けて協会総会担当理事田尻義了氏、協会企画担当総務理事滝沢誠氏、専修大学総会実行委員会委員長高久健二氏、南アジア文化遺産センター野口淳氏、厚沢部町役場石井淳平氏、國學院大學中村耕作氏、オブザーバーとして協会事務局林純子氏、専修大学大学院生行木絢子氏・中嶋友氏からなるワーキンググループが組織され、Zoomライセンス、発表者への通知やデータの提出方法、公開にあたっての著作権問題、会場のパソコン等発表環境の整備、リハーサルなどが随時行われ、その都度総務委員会・理事会に報告され、進捗状況や課題の共有を図るなど周到に準備が進められた。

【1日目:5月22日(土)】

 22日の総会は、午前10時から開催され、先ず司会の滝沢理事から総会が成立要件を満たしている旨の報告があり開催にあたり辻秀人会長、次に、専修大学の高久健二総会実行委員会委員長から挨拶があった。

 審議に先立ち、昨年度に逝去された21名の会員の名前が読み上げられ、黙祷が献げられた。

 議事に入るために、司会から定款によって会長が議長を務めることが説明され、議長から議長団(副議長:小林健二・佐藤晃雅氏、書記:小林孝秀・佐藤智幸氏)が指名された。また定款の規定により議長から本日の総会議事録署名者として岡崎完樹・山崎和己氏が指名された。

 第1号議案「新入会員の承認に関する件」では、入会資格審査委員会長谷川渉委員長から45名が入会審査を通過したとの説明があり、続いて中嶋郁夫担当理事からフレンドシップ会員3名、学生会員3名の賛助会員の申込があったことが報告され、いずれも原案通り承認された。いつもは承認された新入会員が壇上に並んでお披露目となるが、今回は新入会員を代表して別所鮎実氏・梶木理央・手嶋正貴氏の3人が総会に参加し、挨拶を行った。

 次に、第2号議案「2020年度事業報告・収支決算承認に関する件」の審議となった。最初に、佐藤宏之副会長から「日本考古学協会協会賞の報告」があり、小畑弘己氏の『縄文時代の植物利用と家屋害虫―圧痕法のイノベーション―』が大賞、阪口英毅氏の『古墳時代甲冑の技術と生産』と山崎健氏の『農耕開始期の動物考古学』が奨励賞、前田仁暉氏の「横槌・掛矢の機能論―近畿地域の原始・古代を中心に―」が論文賞に推薦され、理事会で承認されたことが報告された。

 続いて第2号議案「2020年度事業報告・収支決算承認に関する件」の承認について諮られ、以下の順で報告があった。「2020年度事業報告」(萩野谷悟理事)、「陵墓報告」(滝沢誠担当理事)、「研究環境検討委員会報告」(亀田直美担当理事)、「広報委員会報告」(足立佳代担当理事)、「国際交流委員会報告」(寺崎秀一郎担当理事)、「社会科・歴史教科書等検討委員会報告」(惟村忠志担当理事)、「埋蔵文化財保護対策委員会報告」(馬淵和雄担当理事)、「災害対応委員会報告」(岡林孝作担当理事)、「平成28年熊本地震対策特別委員会報告」(佐藤宏之副会長)、「将来構想検討小委員会報告」(佐藤宏之副会長)、「アーカイブス小委員会報告」(谷口榮担当理事)、「理事選挙制度検討小委員会報告」(大塚昌彦理事)、「2020年度収支決算」(中山誠二担当理事)の後、「2020年度収支決算並びに事業」の監査結果について都築恵美子監事から適正かつ正確であることが報告された。以上の事業報告を受けて、原案通り承認された。

 審議事項最後の第3号議案「名誉会員の承認に関する件」では、佐古和枝副会長から協会に52年在籍し、会長職を2期4年務められ、協会運営に多大な貢献をされた菊池徹夫会員を名誉会員に推薦する提案説明が行われ、拍手をもって承認された。

 その後、次第に従って報告事項に入り、第1号報告「2021年度事業計画・収支予算に関する件」について萩野谷理事の説明の後、「2021年度収支予算」について中山担当理事から一般会計と特別会計の説明があった。

 最後の第2号報告「永年在籍会員表彰の件」では、佐藤副会長から29名が永年在籍会員表彰となることが報告され、議案、報告事項を終えて、質問に入った。会場から高輪築堤問題に対する協会としての対応についての質問が2件あった。馬淵担当理事からは、埋蔵文化財保護対策委員会でも引き続き検討していきたいとの回答があり、辻会長から動画による情報発信も含めた保存要望書の発出等の協会の取り組みと、協会としても一般市民への注意喚起も含め高輪築堤問題の今後の推移に注視している旨の発言があった。

 以上をもって議案、報告事項はすべて終了し、拍手をもって了承され、一般社団法人日本考古学協会第87回総会における議長団は解散退席した。

 その後、壇上では名誉会員、永年在籍会員及び協会賞受賞の表彰式が執り行われた。最初に名誉会員になられた菊池徹夫会員が出席できないのでメッセージが寄せられ、名誉会員選考委員の佐藤宏之副会長によって代読された。引き続き、協会賞の表彰に移り、受賞された小畑氏はオンラインで、山崎氏と前田氏は会場で受賞の挨拶をされ、阪口氏は協会賞申込後に逝去されたため夫人の岩戸晶子氏が阪口氏に代わって挨拶された。続いて、永年在籍会員を代表して東京都の飯島武次会員から挨拶をいただき、最後に高校生ボスターセッション優秀賞の発表が行われた。

 これをもって総会の予定していた次第を終了し、佐藤副会長から閉会の挨拶があり、総会を終えた。

 午後2時からは恒例の公開講演会が催された。まず辻会長の挨拶に続き、総会開催校専修大学佐々木重人学長から挨拶をいただいた。公開講演会は、韓国の大東文化財研究院曺永鉉院長から「高塚の区画構造―韓半島南部を中心に―」と土生田純之専修大学教授による「横穴式石室研究略史」が行われた。曺院長は、通訳を介して表題の研究状況について韓国からオンラインで講演がライブ配信された。「横穴式石室研究略史」では、会場において長年に亘る研究史のポイントと研究の到達点が先生ならではの土生田節が披瀝され、ライブ配信もされた。コロナ禍という時節と専修大学という「場」が見事に表出された公開講演であった。

 公開講演後には、次回の金沢大会についての案内と第88回総会の近藤二郎実行委員長から開催に向けた挨拶があり、本日の所定のスケジュールを終えた。恒例となっている懇親会は、時節柄中止となった。

【2日目:5月23日(日)】

 23日は研究発表会として、口頭発表、セッション、ポスターセッション、高校生ポスターセッションが行われた。

 口頭発表は、第1会場で6件の研究発表がライブ配信された。特設サイトでは、4件の研究発表がオンデマンド配信されている(~6月4日迄)。

 セッションは、第2会場で午前にセッション1「東アジアにおける水稲農耕定着期の関東地方」(研究発表6件)、午後にセッション2「土器の機能や用途を考える―土器残留脂質分析による学際的アプローチ(2)―」(研究発表6件)がライブ配信された。第3会場では、午前に日本人類学会骨考古学分科会と共催によるセッション3「古代DNA解析と考古学の接点」(研究発表5件)、午後にセッション4「オープンサイエンス時代の考古学・埋蔵文化財情報」(研究発表5件)が催され、セッション3の研究発表の内3件がオンデマンド配信、他はライブ配信で行われた。第4会場では、午前にセッション6日本考古学協会英文機関誌編集委員会「国家形成過程の国際比較研究」(研究発表4件)、午後にセッション7日本考古学協会社会科・歴史教科書等検討委員会「続・旧石器時代を小学校の授業で語りたい―博物館・埋蔵文化財センターからのアプローチ―」(研究発表5件)がライブ配信された。第5会場では、午後にセッション8日本考古学協会研究環境検討委員会「考古学を仕事にしたいというあなたへⅡ―キャリア形成と職場のこれから―」(研究発表5件)がライブ配信された。このほかセッション5「湯取り法から米蒸し調理への転換過程―鍋釜のススコゲ分析と火処の分析―」(研究発表5件)、セッション9日本考古学協会災害対応委員会・平成28年熊本地震対策特別委員会・埋蔵文化財保護対策委員会「災害と文化財―令和2年7月豪雨から1年、平成28年熊本地震から5年、東日本大震災から10年―」(研究発表4件)が特設サイトでオンデマンド配信されている(~6月4日迄)。

 ポスターセッションと高校生ポスターセッションは、一昨年までは会場に掲示され発表者と会員とが意見交換できる総会ならではの交流の場となっていたが、今回は特設サイトから15件がオンデマンド配信となっている(~6月4日迄)。12件の高校生ポスターセッションも23日から協会公式サイトでの公開となった(~6月4日迄)。

 以上のように第87回総会では、専修大学総会実行委員会高久委員長のもと、卒業生、学生による実行委員会メンバーの献身的な尽力のお陰で、オンラインでの総会開催という初めての試みも滞りなく運営が進行した。特に、ライブ配信は実行委員会の技術的なサポートなくしてはなしえなかったと言っても過言ではない。また公開講演では、韓国と日本を繋いだライブ配信という初めての試みであったが、オンラインが国内だけでなく外国との研究活動のあり方としても有効であることが示されたのではないだろうか。コロナ禍の収束の見えない状況下において、今回のオンラインによる総会は、次回以降の金沢大会や第88回総会の準備を進める上でも有意義な経験となったといえよう。総会報告を終わるにあたり、今回の参加者を以下記しておく。

 5月22日(土)会場:71名(会員61、一般10)・オンライン:325名(総会75、記念講演会250)、5月23日(日)会場:20名・オンライン:389名(最高値:午前243、午後146)、2日間合わせ会場は91名、オンラインは延べ714名であった。               

(総務担当理事 谷口 榮)

一般社団法人日本考古学協会第87回(2021年度)総会議事(抄録)

日   時 2021年5月22日(土) 午前10時00分~午後0時10分
会   場 専修大学10号館3階 10301教室
議 長 団 議長:辻秀人会長、副議長:小林健二会員・佐藤晃雅会員  司会:滝沢誠理事

 

 司会の滝沢理事から、コロナ禍のため例年の対面方式とは異なる方式を採用していることから、次の注意事項の説明がある。会場の方に質問の方法をはじめ感染症対策としてのマスクの着用、出入り口設置の消毒液の使用、間隔をあけての着席など。また、オンラインを通じて視聴する方からは事前に委任状を頂いていることのほか、使用するZoomウェビナーについての諸注意。例えば録音や録画の禁止などである。

 続いて、2021年5月22日現在の会員数は3,924名、うち本日の総会出席者数は午前10時現在で40名であること、それと委任状預かり分1,419名を加えて、合計1,459名で総会議事は成立する旨の報告があり総会を開始する。

 開会にあたり、一般社団法人日本考古学協会を代表して、辻秀人会長から次の挨拶がある。昨年度の研究発表会や講演会、秋の大会も実施できず、今回漸くオンラインを通して開催できたこと。また専修大学の佐々木重人学長、高久健二実行委員長をはじめそれを支える学生の皆さんに先ず感謝すること。昨年7月、あらたな組織の会長に就任した際、すでにコロナ禍にあったが学会活動は継続したいという意志を理事会に伝え、開始したこと。そして会員の皆さんには、高輪築堤跡の保存問題についてと、会員相互のコミュニケーションをはかる基盤となる会員名簿の刊行を予定しており、個人情報保護法に鑑み会員諸氏の理解と協力をお願いしたいとした。

 続いて、専修大学の高久健二実行委員長から挨拶がある。昨年度の中止を経て、今回の、対面とオンラインを併用したハイブリッド方式で臨むこととなり、新型コロナウイルスの感染対策のなか、これまでになかった新しい形態、つまりオンライン設備の様々な問題や、著作権の問題など様々な課題をクリアしての開催となったこと。さらに、本学が神奈川県にあり、新型コロナウイルスのまん延防止等重点措置の発令中でもあったことも考え合わせると、今回の方法が今後の学会開催についての新たな指針の一つになればと願う、と結んだ。

議 事

 議長から、議事に先立ち議事録署名者としての東京都の岡崎完樹会員、東京都の山崎和巳会員2名が指名され、やはり会場からの了承を得て、審議に入る。なお、以下、2020年度における事業等を執行するにおいて、各委員会等による説明では新型コロナウイルス感染対策及び政府による緊急事態宣言の発出等を主因とする事情・背景にあることが大半を占めていることから、以下の説明の中では、「コロナ禍により」と略記する。

【審議事項】

第1号議案 新入会員の承認に関する件

 正会員と賛助会員に分けて審議を受ける。正会員については、入会資格審査委員会の長谷川渉委員長からの説明による。入会申請は総数47名であり、第1次審査で1名が資格基準を満たさず、4名が保留とされた。その後追加資料を基とした第2回審査委員会では1名の辞退者を除く45名が入会資格基準を満たすと判断された。結果2021年度正会員入会資格者は45名との報告があり、それら45名の名簿は全正会員に送付し意見を求めた。また、その後の理事会において資格該当者に対する異議申し立ては無かったとの報告があり、承認される。

 賛助会員については中嶋郁夫理事の説明による。内訳はフレンドシップ3名、学生会員3名、法人会員の応募がなく、合計6件について理事会で審議し、承認される。

 議長から第1号議案「新入会員の承認に関する件」について、会場に質問を求めた。質問はなく直ちに決議に入り、拍手をもって原案どおり承認される。そこで会場参加の新入正会員が登壇し、手嶋正貴、別所鮎実、梶木理央会員3名の挨拶がある。

第2号議案 2020年度事業報告・収支決算承認に関する件

 配布資料記載の順により、最初に事業報告、次に収支決算について行う。事業内容及び各委員会に関わる業務については各担当理事からの説明で行う。

〈1〉2020年度事業報告
 1.日本考古学協会賞の報告

 佐藤宏之副会長からの説明。第11回となる今回の応募件数は過去最大の10件があり、本年3月14日のオンラインによる選考委員会で審査された。大賞には熊本の小畑弘己会員の単著『縄文時代の植物利用と家屋害虫―圧痕法のイノベーション―』が、今回の奨励賞は2人で、京都の阪口英毅会員の単著『古墳時代甲冑の技術と生産』と奈良の山﨑健会員の単著『農耕開始期の動物考古学』。そして協会機関誌編集委員会からの推薦により審査を行う優秀論文賞では、京都の前田仁暉氏から『日本考古学』49号に投稿された論文「横槌・掛矢の機能論―近畿地域の原始・古代を中心に―」が選ばれた。なお、英文機関誌編集委員会からは候補者の推薦は、今年度はなかった。以上4件を理事会に推薦し承認された。また、奨励賞受賞の阪口英毅会員については、応募された後、昨年12月にご逝去されたが、選考委員会では、このことと奨励賞受賞について議論を行った結果全く問題なしという結論に至った。会場では本年の応募作の特徴について泉選考委員長による講評の概略説明があり、推薦内容の詳細は後ほど会報及び協会サイトにて報告される予定であるとの説明がある。

 2.総会・大会・公開講座等 3.理事会等 4.年報・会報・機関誌等

 萩野谷悟理事から、総会資料に沿って上記事項のうち特に例年とは異なる点についての説明がある。2020年度事業は「コロナ禍により」まず、総会は専修大学生田キャンパスを会場として計画したが、協会発足以来初めてという書面審議による議決とし、研究発表は要旨の誌上発表のみとした。秋の金沢大会は2021年度に延期をし、アジア考古学四学会合同講演会は中止とした。

 理事の改選が行われ、その後の理事会は基本オンラインで行われ、他の委員会も含めたオンライン会議の実施の必要性からそのためのライセンス取得といったIT環境の整備にも迫られた。

 10月の日本学術会議会員任命をめぐる問題に関する声明の発出、3月には高輪築堤跡の全面保存を求める会長声明の発出。特にこの高輪築堤跡の声明発出にあたっての会長が声明を読み上げる動画のYouTubeでの配信は、ホームページともリンクしており、時代に沿った新たな発信形態を追加構築し、協会のプレゼンスを高めたものと評価された。さらに、年報や会報、機関誌である日本考古学、Webで公開している英文機関誌JJA 、それに公式サイトは定期的に刊行、公表、更新。年報は、特に記載対象年度から刊行まで間が空いているという状況に鑑み、次年度には刊行することとし、2020年度中に2018年度版である第71号と2019年度版である第72号の2号(2冊)を刊行した。

 5.陵墓報告

 滝沢誠担当理事からの説明。陵墓関係16学協会の運営委員会は、2020年5月31日に開催した。また、毎年宮内庁との陵墓懇談にあわせて実施している全体会議は、コロナ禍の影響により通常より約1か月遅れの8月2日にオンラインによって開催した。ただし、宮内庁との協議により、陵墓懇談は学協会側の出席者を6名に限定するかたちで12月にようやく開催の運びとなった。その間、京都府の御廟野古墳(天智天皇陵)の立会調査見学を9月29日に、奈良県ウワナベ古墳に関わる限定公開を11月20日に実施した。この2件は、新型コロナウイルス感染症の感染がある程度落ち着いたところで奇跡的に実施できたが、年明けの2021年1月8日以降は、緊急事態宣言が11都府県に発令されたため、その後に予定されていた陵墓に関わる立会調査見学及び立入り観察は全て中止となった。

 宮内庁との陵墓懇談では、2020年度の陵墓保全整備工事とウワナベ古墳の事前調査、立入り観察等について具体的な意見交換を行った(詳細は会報の№202参照)。なお、2020年度の陵墓懇談は、人数を制限するという極めて特殊なかたちで行ったが、平時に戻れば、従来通りの開催時期と方法で実施するということを宮内庁とも確認したところである。

 6.研究環境検討委員会報告

 亀田直美担当理事からの報告。当委員会は、考古学に関わる研究環境を改善し、考古学の発展と広い理解の促進を目的とした地方公共団体、大学、博物館、公益法人等の調査組織、民間調査組織など様々な組織に属する委員会で構成されている。加えて、2020年度には、新たに主にアイヌ民族における研究倫理審査委員会及び検討準備会といったものの実務的な窓口として、委員会内に研究倫理部会が設置された。この部会は、アイヌ関連の実務に特化し、その情報や問題意識を委員会内で共有しているが、研究環境検討委員会の通常の活動には含めないとした。

 当委員会では研究環境に関わる幅広い分野での検討をしてきたが、近年は、その中でも埋蔵文化財関連業務の後継者育成と、これまで培われてきた発掘調査技術の継承および報告書の質の堅持についてを課題とした。2021年度も引き続き、一連の取り組みを提言として、埋蔵文化財保護行政における後継者育成の現状と課題という形で取りまとめたい。

 7.広報委員会報告

 足立佳代担当理事からの報告。当委員会は会員及び社会に対して当協会の活動を広く発信するために設置された常置委員会であり、主な活動は会報の発行、ホームページの整備更新、プレスリリースなどである。

 会報は№200の刊行を機にA4判とし、表紙デザインも刷新したこと。2020年度の課題は協会ホームページの活性化で、その一つに「コロナ禍により」大学、博物館、調査機関、行政及び学会などで様々な対応が迫られたことを鑑み、それを記録し共有するため、協会ホームページ上に「コロナ禍の考古学」をテーマとしたコラムの連載を開始した。また全委員会の協力により、分かりやすく知りたい情報にアクセスしやすいようにコンテンツを整理した。プレスリリースは、会長声明(英訳も実施)発出による高輪築堤跡の保存問題が挙げられる。これは埋蔵文化財保護対策委員会の協力によりオンライン会場の設置、動画配信が行われた。

 さらに、「コロナ禍により」2020年度の総会が書面開催になることを踏まえ、従来の図書交換会の開催が困難となったためホームページ上で考古学スクエアを実施し代替とした。2021年度も実施する予定にあるが、今後は図書交換の代替としてだけでなく、関係団体のプラットホームとして機能できるよう取り組んでいきたい。コロナ禍にあって予定した活動ができない反面ホームページを活用した情報発信の重要性が増し、図らずも内容を充実することができたともいえる。

 8.国際交流委員会報告

 寺崎秀一郎担当理事からの報告。例年の主な事業は、主要遺跡概要の情報発信とアジア考古学四学会合同講演会の開催であるが、2020年度は「コロナ禍により」アジア考古学四学会合同講演会は中止となったが2021年度は実施の方向で準備中である。もう一方の情報発信は、継続事業であり、「発掘された日本列島新発見考古速報2020」展で紹介された遺跡の中から今回は7件を選び、合わせて速報展の図録の中から「最新リポート日本発掘最前線2020」の部分を加えた。また概要等リポートの英訳を協会ホームページ上に掲載しているが、今回は委員会の規定を一部改正し情報発信の多言語化に対応する体制を整えたことで、新たに韓国語への翻訳も行い、2021年度に公開を予定しているとともに中国語版の準備も開始した。なお、関連して協会ホームページの構成及び内容のリニューアル化について、協会の広報委員会と事務局との調整を開始したところである。

 9.社会科・歴史教科書等検討委員会

 惟村忠志担当理事からの報告。当委員会は、1998年の学習指導要領改訂で2002年から使用する小学校の歴史教科書本文から旧石器・縄文時代の記述が削除されたことをきっかけに、2006年に小委員会として発足し2008年からは常置委員会となる。その任務は考古学の学問的特性や研究成果が学校教育に適切かつ有効に活用されるよう図るとともに必要な働きかけを行うことにある。委員会発足以来、第一に取り組んだのは、小学校教科書への旧石器時代記述の掲載に向けた活動である。このため委員会はそれを規定する学習指導要領等の分析検討を行い、結果を本協会の研究発表会及びシンポジウム等を通して公開発信し議論を深め、合わせて文部科学省や中央教育審議会に学習指導要領に関して要望書や声明文等を提出してきた。2020年度は次のような活動を行った。

 1点目は第86回総会においてテーマセッション「旧石器時代を小学校の授業で語りたい―博物館・埋蔵文化財センターからのアプローチー」と題して予定したが、総会の中止に伴い、報告要旨を誌上発表としたが、今回の総会において内容の充実を行い、その続編を実施することとした。第2点目は2020年4月から使用が開始された3社の小学校教科書について、旧石器時代から古代までの内容を検討し、問題点の洗い出し作業を行う。出版社が4社から3社に減り、また、唯一旧石器時代に言及していた1社のものからもその記述が消えたことが判明し、益々の問題点を認識したこと。第3に協会ホームページの「考古学と教育の充実・活用」の充実を目的に教材として利用可能な関係機関のホームページの検討を行い、第4に2019年度使用教科書まで旧石器時代に関する記述があった出版社への情報の収集のための訪問を計画したがコロナ禍により断念した。

 10.埋蔵文化財保護対策委員会報告

 馬淵和雄担当理事からの報告。埋文委員会とは遺跡の破壊、あるいは保存問題に関し、それに対応するための常置委員会である。全国に約120名を超える委員を配置して情報収集を行っている。昨年度は2020年度の委員改選をまず行った。2020年度の埋蔵文化財保護対策委員会は第86回総会の中止に伴って書面で開催し、毎年秋季大会時に実施している情報交換会については中止とした。2018年・2019年度埋蔵文化財を取り巻く状況の調査というアンケートを実施し、総会時の委員会において地域連絡会で取りまとめて報告する予定であったが、委員会が中止となったため、各委員に周知する方法を検討していくこととした。原則として毎月実施している幹事会は「コロナ禍により」4月と6月にはメール審議として、7月以降はオンラインで開催した。

 2020年度に発出した要望書は、長崎県庁跡地に所在する遺跡の保存活用に関する要望書、福島県いわき市平城跡の保存に関する要望書、東京都高輪築堤跡の保存に関する要望書、最近では島根県大社基地遺跡群や神奈川県横浜市稲荷前古墳群隣接地、徳島県国史跡徳島城跡隣接地の埋蔵文化財保護に関する要望書などがある。詳細は本書別稿を参照して欲しい。高輪築堤跡については、全面保存を求める協会会長声明、高輪築堤跡4街区調査成果公表にあたっての当協会会長コメント、高輪築堤跡4街区の破壊方針公表にあたっての当協会会長コメントなどがあり、谷川章雄前会長を解説者とする講演会の動画を当協会のホームページで配信中である。

 11.災害対応委員会報告

 岡林孝作担当理事からの報告。本委員会は近年頻発している大規模災害に伴い、会員及び埋蔵文化財をはじめとする文化財の被災に備えた対応を行うことを目的に設置された常置委員会である。主な活動は、①災害被害の状況を確認整理すること。②被災の経験や復興の取り組みを共有するための総会セッションを開催すること。③文化遺産防災ネットワーク推進会議の参画団体に当協会は加盟しているが、その活動に関すること。④埋蔵文化財保護対策委員会と連携した文化庁懇談、その他情報発信等である。2020年度は「コロナ禍により」総会セッションが開催中止となりできなかったことを含め、委員会全体としても十分な活動が行えなかった。2020年8月14日以降は、オンラインで委員会を開催し、九州における令和2年7月の豪雨、山形の7月豪雨、福島沖の2月地震、栃木県足利市における2月発生の山火事などの情報収集及び状況の整理に努めた。被災地にお見舞い申し上げるとともに、継続して経過の把握に努め、今後の活動方針としてバランスの取れた委員の配置や災害対応マニュアル作成の必要性等に鑑み今後の検討課題としている。

 12.平成28年熊本地震対策特別委員会報告

 佐藤宏之副会長からの報告。この委員会は平成28年熊本地震に関わる対策特別委員会として設置され、昨年度が5年次限の特別委員会の最終年度だった。「コロナ禍により」面談は参加人数を縮小し、4名の委員で一度のみ、2020年9月10日に益城町教育委員会と熊本県教育庁文化課のみの面談を実施した。最終年度ということで、日本考古学協会『平成28年熊本地震対策特別委員会報告書』を作成し、本年3月に発行した。これは協会ホームページで見ることができる。この5年間の特別委員会の活動や文化財の保護対策の状況については、この報告書並び今回の研究報告・セッション9の発表を参照頂きたい。ここに特別委員会は解散するが、実は装飾古墳や熊本城の修復などは、まだ道半ばの状態であり、引き続き会員の皆様にはご支援のほど宜しくお願い致したい。

 13.将来構想検討小委員会報告

 佐藤宏之副会長からの報告。考古学協会では、理事会とは別に協会の将来的な課題について協議するため将来構想検討小委員会を設けている。委員会は総務会を構成する正・副会長と総務担当理事及び常務理事からなり、不定期に開催している。2020年度はコロナ禍のため理事会の開催自体がずれ込み、最初の理事会が9月にオンラインで開催されたこともあり、将来構想委員会も12月12日の1回のみの開催となり、次の3点が検討協議された。①コロナ禍の影響下で今後の理事会の開催方法について協議され、結果、当面の間はオンラインと事務局での対面を合わせた、いわゆるハイブリッド方式で理事会を開催するという方針になった。この方針は現在も継続しているが、同時に、多くの委員会もオンライン開催に移行したこともあって、協会で複数のZoomアカウントを取得することとし、理事会は事務局がホストとなってのZoomミーティングに移行した。②後ほど報告する名誉会員の選出と永年在籍会員の表彰を今年度も継続して行うかを検討。③現在、実施しているこの総会の開催形態がまだこの時点では未確定でもあり、検討を行った結果、今年度も実施する、従って総会も実施ということとした。

 14.アーカイブス小委員会報告

 谷口榮担当理事からの報告。当委員会は、本協会の歩みを証拠立てる文書等の記録を収集・整理し、その社会的責任をどのように果たしてきたのかを明らかにするとともに、将来的な継承・評価など本協会のアーカイブ資料の構築を目的に2019年9月に設立された。矢島前副会長を委員長にほか4名の委員による構成。2020年度の事業は、前年度の基本的作業を継続し、協会事務所に保管の文書及び電磁的記録に関わる悉皆調査を実施し、その資料のリスト化及びデータ化に努めた。一つは文書及び定期刊行物の類。文書については所管や内容・形状の区分、特に協会創設期を中心に実施。また定期刊行物等については、その残部や所在確認を進めた。もう一つは電磁的記録媒体である。これらは多種多様の資料が存在することが判明しているが内容の把握のため、2020年度は、カセットテープの内、遺存状況の良い約70本をデジタル化し、外付けのハードディスクに収納した。このほかの媒体ではCD、DVDが約700本やMO類、磁気ドラムを保有するが、このうち3.5インチFDの2DD 、5インチFD、磁気ドラムに関しては、再生機器の事情や予算からデジタル化が極めて難しく課題となったが、それ以外の媒体及び文書類や既刊冊子などのデジタル化を今後順次進めていく予定である。

 15.理事選挙制度検討小委員会報告

 大塚昌彦担当理事からの報告。2020年10月理事会において、当小委員会の設置が決定され、12月理事会において運営規程を整備のうえ委員9名が選任された。これまでにリモートにより準備会を含め4回開催した。理事選挙は会員にとって協会の会務執行権を選任者に付託する重要な意思表明の機会であり、一般社団法人となった今日の当協会には、その選挙制度に一層の公平性と透明性が求められるとの認識に立ち、検討内容は、長期的な課題と短期的な課題に分けて検討に入っている。長期的な課題には会員投票権の公平性を担保すべく、現状ではブロック間の格差が最大9.88倍という看過し難い状況にあることを踏まえ、ブロック内定数や連記式投票のあり方について一票の格差是正に向けた検討に着手した。一方の短期的な検討事案は、今般の「コロナ禍に」関わる緊急事態に際しての開票業務、顕現化した合理的選挙管理体制の在り方、選挙人及び候補者名簿の作成公表の可否、理事定数や当選者決定に関わる定款と規則の合理的整備の検討課題。今後の委員会では、理事会と意見交換を重ねながら理事選挙制度のあり方、合理性、合法性の観点から検討を行う予定である。

〈2〉2020年度収支決算

 中山誠二担当理事からの説明。2020年度の会計収支決算について配付済みの貸借対照表及び正味財産増減計算書を使用し、要点のみ説明する。貸借対照表は財務状況を示すもので、固定財産は前年度と動きがないこと、流動資産の方で39,433,700円あるものの未収会費628万円が含まれていること。この金額は2019年度と2020年度の2カ年の滞納分の合計であることから、つまり貸借対照表の考え方では、未収会費の債権という資産に含まれることとなる。会員の皆様には引き続き会費納入にご協力をお願いしたいこと。なお、正味財産は42,279,617円で、前期よりも7,698,564円の増になっている。

 正味財産増減計算書は、今期の収支状況を示している。経常収入46,158,363円で内訳とすると会費が大部分を占め、それ以外に国庫補助金390万円が含まれている。2020年度は「コロナ禍により」総・大会が縮小又は中止されたため、図書の売上が非常に落ち込んだ。その一方で総会の会場開催中止に伴う委託費の戻し入れも含め、2,354,211円の雑収入があった。支出についても、2020年度は総会・大会をはじめとする各事業が中止又は縮小開催されたこと、また各種委員会等のオンライン開催により交通費等の支出が縮小されるなど支出部門で大幅な減少が図られた。そのため増減額は当期一般正味財産増減額に示されている通り7,698,564円の増を示し、その金額がそのまま貸借対照表の正味財産の増加につながっている。

 次に2つの特別会計である。科学研究費補助金会計では、収入の部が補助金と雑収入を加え、収入合計3,900,016円。支出の部は「コロナ禍により」国内外に関わる旅費等が0円に抑えられた反面、JJAのサイト制作などの外注費や英訳料が予算額よりも多く支出された。これらの支出額に残金の364,815円の返還分が生じた。もうひとつの平成28年熊本地震募金会計は、収入の部は、雑収入4円のみで前期繰越金を加えた収入合計が483,848円となる。支出の部は熊本地震に関わる活動報告書の印刷製本費の一部費として483,848円を支出しており、当期収支差額が0円となる。これをもって当該会計は終了し、銀行口座を閉じた。

 監査報告

 都築恵美子監事からの報告。監査は、決算その他を含め、もうひとりの橋本裕行監事と共に5月7日に実施した。一般社団法人日本考古学協会定款第25条に基づき2020年(令和2年)4月1日から2021年(令和3年)3月31日までの当協会第18期事業年度の事業報告計算書類及びこれらの附属明細について対象に進めた。監査当日以外にも、理事会等の重要な会議に私ども監事が出席し、あるいは当法人の理事等から職務の執行状況等について定期的に報告を受け、随時その際に方法及びその内容の説明を求めている。つまり理事の職務遂行については平常時に実施し、監査当日は主に会計帳簿・会計書類・重要な決算文書及び報告等を閲覧した。結果については次のとおりである。

 監査結果は、事業報告及びその附属明細書は法令及び定款の規定に従い当法人の状況を正しく表示していること。また職務の遂行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反するような重大な事実はなかったこと。また業務の適正を確保するために必要な体制の整備等について、理事会の会議の決議の内容については相当であること。計算書類とその他附属明細は当法人の財産及び損益の状況を全て重要な点において適正に表示されていることを認識したこと。以上が監査報告である。

 以上の第2号議案「2020年度事業報告・収支決算承認に関する件」について副議長から質問を受け、該当となる担当理事から回答がある。質問は例年の対面型とは異なり、質問者が質問用に用意されたブースに移動の上実施された。

(質疑)

 東京都の野口淳会員から。高輪築堤跡に関する声明発出に関して、遺構の現状保存について及び近現代遺跡の取り扱いや事前開発の協議についての見解の質問がある。馬淵担当理事から、従来の文化財保護法のシステムでは対応しきれない問題も多く含むことからも、これまで以上に、今後も委員会で検討を重ねる所存であると回答。

 群馬県の黒尾和久会員から。高輪築堤跡における特に遺構に対して協会の今後の対応方針についての質問がある。会長から、基本的には可能な限り保存を求めていくが、その前提にあるのは一般市民の方への公開があり、広く考え方をお伝えし、理解を得るなかで社会としてどう判断するかを問うていきたい、との回答がある。

 その他の質問がないことが確認され、第2号議案「2020年度事業報告、収支決算承認に関する件」は、原案通り承認された。

第3号議案 名誉会員の承認に関する件

 佐古和枝副会長から提案理由の説明がある。協会にある名誉会員に関わる規定には、①50年以上在籍し顕著な功績があることや②30年以上在籍し考古学上の功績により国内外の顕著な検証を受けた正会員。③正会員でないもので考古学上の研究や協会の活動に顕著な功績を挙げた者の以上3点のいずれかに該当する者という基準がある。名誉会員選考委員会で選考・推薦によりこの3月理事会で菊池徹夫会員を推薦することとなり、本3号議案として総会での承認を得ることとした。続いて菊池会員の経歴や業績についての概略報告がある。

 菊池会員は1939年北海道函館市生まれ、早稲田大学文学部を卒業後、東京大学大学院人文科学研究科考古学専攻修了後、東京大学文学部助手として北海道常呂研究所での勤務を経て、1982年から早稲田大学文学部にて教鞭を執り現在は早稲田大学名誉教授である。協会には1969年から52年間在籍され、この間2008年から2012年までの二期四年間会長を務められた。特筆すべき活躍は、前身の中間法人から現在の一般社団法人への移行や協会図書問題の解決に尽力・寄与されたことである。また、研究活動としては、北方考古学を中心に多方面にわたる多くの編著作があることは周知のとおりである。それに加えて、教育者としても多数の研究者、埋蔵文化財行政担当者の指導育成にあたられたり、『考古学の教室』や『はじめての考古学』等を執筆され、考古学の初心者や子どもたちに向けての考古学の普及教育にも力を注がれた等の紹介がある。 

 議長から、会場に意見の挙手を求めたが特に質問もなく、賛成多数の拍手をもって承認された。なお、次に第5号議案「その他」について理事に求めたが、特に追加議案等の提案はなく、審議を全て終了する。

 

【報告事項】

第1号報告 2021年度事業計画・収支予算に関する件
〈1〉2021年度事業計画

 萩野谷悟理事からの報告。まず総会については昨年度専修大学生田キャンパスでの開催を計画しながら新型コロナウイルス感染症拡大により開催が見送られ、書面審議となったため、今年度は、改めて専修大学の協力を得て、公開講演会や研究発表会も含めオンラインを併用する今までにない形での開催に漕ぎつけたこと。大会については、昨年度計画していた金沢大会が中止となり、今年度改めて金沢での開催を計画していること。また、来年度が理事の改選時期にあたることから、選挙管理委員会の設置や選挙制度全般にわたる再検討を継続していること。このほか、新事業としては個人情報への配慮を厳重にしつつ計画している会員名簿の作成。また協会ホームページについては、外国語コンテンツに英語、韓国語に次いで中国語でのコンテンツを追加すること。定期刊行物の刊行や各委員会の活動は例年通り。ただ、平成28年熊本地震対策特別委員会は5年の期限をもって昨年度末で解散したが、復興そのものは道半ばであることから、災害対応委員会が対応することとなった。

〈2〉2021年度収支予算

 中山誠二担当理事からの説明。一般会計の収入の部は、正会員が3,970人で正会員と賛助会員を含めた会費収入が39,420,000円を計上。雑収入等を加えて収入合計が41,584,000円、これに前年度の繰越額14,500,000円を加えた収入総合計が56,084,000円となる。支出は、今年度はコロナ感染症の継続も想定し各事業において柔軟な対応ができるような予算としたこと。総会・大会事業に関わる外注費は、通常の実行委員会への委託経費に加えて、総会のオンライン開催システム委託費を100万円計上していること。また、新規の名簿作成に関わる印刷費には1,124,000円を計上することで支出合計が56,084,000円となる。特別会計は、熊本地震募金の事業が終了したため、この度は科学研究費補助金のみの3,900,100円を計上している。

第2号報告 永年在籍会員表彰の件

 佐藤宏之副会長からの説明。協会では、協会設立70周年記念事業の一環として会員の顕彰に関する内規を制定し、2018年度の総会において協会に長年在籍し、協会の事業活動に多大な貢献をいただいた正会員69名の方々の栄誉を称え顕彰を実施。翌年内規を一部改正して永年在籍者の条件の一つに正会員として50年在籍し、本会の発展に寄与したものを加えた。2019年度総会では1966年から1969年に入会された49名の方々の顕彰。昨年度は1970・71年度総会が学園紛争により中止されたため該当者がなかった。今年度は50年在籍された1972年度入会者29名(配付の資料のとおり)の正会員が対象とされ、その長年の貢献を讃えて協会からシニアフェローの称号を贈ることとした。

 その後、質疑のないこと及び第3号報告「その他」の理事会から追加報告等がないことが確認された。

 以上、報告事項に関して全て終了するにあたり、議長から決議事項ではないが、拍手をもってご承認を頂くこととした。(拍手)

 本日予定の議案報告事項はすべて終了し議長団の職を解く。以上をもって、第87回総会を終了する。

表彰式・記念撮影会の実施

 名誉会員、永年在籍会員及び協会賞受賞の表彰式を執り行い、その後会場にて記念の写真撮影が行われた。名誉会員に表彰された菊池徹夫会員から開始。表彰状の読み上げの後に、当日欠席により菊池会員からの「お礼とお詫び」と題したメーセッジが佐藤宏之副会長から代読披露された。

 続いて、先に報告された日本考古学協会賞大賞、奨励賞、優秀論文賞授与者には、壇上において会長からの表彰状の読み上げがあり、終了後に、恒例となった挨拶を頂く。対象となった著作・論文のボイントの解説と今後の研究に対する豊富などが語られた。大賞受賞の小畑弘己氏はオンラインにより会場のスクリーンに生動画で披露され、阪口英毅氏は応募後に冥界の地に行かれたことで代理で夫人の岩戸晶子氏により、また山﨑健氏、前田仁暉氏からは各々披露された。引き続いて、永年在籍会員の表彰が行われた。当日参加頂くことができた飯島武次会員から、29名を代表して1971年の入会当時のお話を頂いた。因みに欠席の会員には、後日事務局から表彰状を郵送するという案内がある。

 最後に通常では会場で行なっている高校生ポスターセッションの表彰式が行われた。今年度は12校の応募があったこと、オンライン開催であり、協会ホームページにて明日から公開されること、そして事前に審議を行ったことなどの説明につづき、辻会長から優秀校の発表と講評がある(詳細は本書参照)。私たちを引き継いで新たに考古学という世界で頑張ってくれる方々が、一人でも多くいて頂けるのが望みでもあります、と結んだ。

 総会は中間で閉めていたが、ここで改めて佐藤副会長から閉会の辞として、あるいは次回に向けての「新しいウィズコロナの段階の学会活動のあり方を追求していきたい」との決意が語られ、総会議事の全てが終了した。

 

 以上のとおり、例年とは異なる初めての総会会場における対面型を併用したライブ配信による進行は、つつがなく終了した。この抄録には具体的に語られることはなかったが、開催方法・企画段階から携わった多くの関係諸氏や当協会会長のもと1年前に設置されたWGや役員の結集、また当日の裏方となるコントロールセンターに詰めて頂いた方々も忘れてならない。

 さらにもう一つ、2日間にわたり、会場を借用する立場になる当協会としては、コロナ陽性者が出なかったことについては、関係各位から最大限の対応策を講じて頂いたことによるが、安堵に加え会員ともども慶びとしたい。これらの記憶も記録に止めておきたい。

 最後に、本抄録の作成にあたり、特に書記及び専修大学の実行委員会の協力を頂き、上記本文に掲げた議長団、議事録署名の諸会員による了承・確認を頂いた。感謝申し上げる次第である。             

(協会事務局長 高麗正)