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一般社団法人日本考古学協会第78回(2012年度)総会報告

 日本考古学協会第78回(2012年度)総会は、5月26日(土)・27日(日)の両日、立正大学において開催された。折しも立正大学は開学140年の記念すべき年にあたり、池上悟実行委員長の指揮のもと、全国から馳せ参じたOBを中心に十分な受入れ準備を整えていただき、当協会総会の開催受入れも今回が15年ぶり、実に5回目ということであった。

 今次総会にあたっては、前日の25日に理事会と埋蔵文化財保護対策委員会、26日は立正大学石橋湛山記念講堂において第78回総会と公開講演会、立正大学によるセッション1「板碑研究の最前線」(発表4件)が開かれ、その後、近在の「ゆうぽうと」7階重陽の間で懇親会を催した。翌27日は、立正大学4・5号館の3会場に分れて口頭発表(33件)、3号館ではセッション3会場(発表32件)、4号館ではポスターセッション(25件)が開かれた。また、図書交換会も6箇所に分れてにぎわった。両日の参加者は会員1,058名、一般487名、合計1,545名に上った。

 さて、総会ではまず、菊池徹夫会長から開会挨拶があり、「協会図書に係る特別委員会」、「東日本大震災対策特別委員会」が立ち上がり、それぞれが本格的に始動したことが紹介され、震災に関してはとくに被曝資料の回復を協会として力を入れたいことを強調された。課題として、協会賞の充実、会員制度の整備、協会財政の改善、協会組織の近代化等を上げられ、菊池会長が今総会をもって退任となることもあって、感慨を込めて、会員のさらなる理解と協力を求めた。会長挨拶ののち、実行委員会を代表して池上悟実行委員長から、創立140年を迎え5回目となる日本考古学協会総会の開催を歓迎する旨のご挨拶があった。続いて、司会から総会の成立要件を満たすことが報告され、議長団、書記団を選出したのち、議事(報告事項・審議事項)に入った。以下要点を報告する。

 まず、報告事項として最初に第2回日本考古学協会賞選考委員会報告並びに表彰があり、大賞を受賞した舟橋京子会員、奨励賞を受賞した樋上昇会員へ賞状及び記念品の授与があった。その後、理事会から酒井和子事務局次長への感謝状贈呈の提案があり、了承された。酒井次長は昨年度をもって定年を迎えたため、これまでの長年にわたる円滑な事務局運営に対しての感謝状である。続いて新採用職員林純子、堀田菜摘子両主事の紹介があった。新職員の採用は事務局職員の退職に伴うものである。2011年度事業報告ののち、入会資格審査報告があり、65名の申込みのうち64名が資格を満たしているとの報告があり、承認された。新入会員を代表して、水澤幸一氏(新潟県)が抱負を述べた。最近の入会者は減少の傾向にあり、色々な要因があろうが、会員制度の整備も必要な時期にきているといえよう。今年度の物故者は24名、退会者は47名となっている。なお、当協会の2012年度3月末日の会員数は4,206名である。

 続いて、今年度は理事改選年となっており、小野昭選挙管理委員長より理事選挙結果報告がなされた。立候補者数が理事定員24名を下回ったが、選挙管理委員会の責任において上位得票者から順次選出され、今後2年間を担当することとなった。委員長より今後は理事会として、立候補者数を取りまとめてほしいとの要望が出された。東日本大震災対策特別委員会報告では文化庁との面談を中心に報告があった。協会図書に係る特別委員会報告では泉拓良委員長から、会員に当てたアンケート調査結果をもとに、議論が慎重に進められている旨の説得力ある丁寧な報告があった。また協会で図書を一括管理し続けていく場合には、「当初経費1,600万円+資料搬送費、年間運営費420万円+施設借料」が必要となるなど、財政面で大きな問題点のあること、特別委員会の設置を2年間と決めており、10月の福岡大会での臨時総会の開催も視野に入れて決着を図りたいということなども示された。この他の事項に関する説明と質疑応答ののち、報告事項は全体が承認された。

 続いて、審議事項に移り、2012年度事業計画案並びに事務局規則の改正について提示された。後者は事務局職員の職制について、書記を廃して主事・主任・主査とする案であるが、いずれも承認された。2012年度予算案についてもいくつかの質疑応答ののち、承認され、ついで白井久美子氏(千葉県)と吉田哲夫氏(埼玉県)を監事とすることが議され、承認された。最後に理事会から、東日本大震災に伴う、福島県を中心とした文化財の放射線被曝資料の回復を要望する総会決議案が提出された。福島県の原発事故被害区域に所在する文化財の保全に関する決議で、内閣総理大臣をはじめ関係閣僚、福島県知事等に宛てたものであるが、一部字句訂正ののち承認された。

 総会閉会ののち、直ちに新理事による臨時理事会が開催され、新会長の選任が議された。田中良之理事が会長に選出されたのち、倉洋彰理事、松尾昌彦理事が副会長に、またそれぞれの業務主担当理事も決まり、新理事会の体制が整った。こののち、田中会長の就任挨拶があり、抱負が語られた。引き続き公開講演会に移行した。菊池前会長の開催挨拶ののち、関俊彦会員による演者紹介、山崎和海立正大学長の挨拶に続き、坂誥秀一立正大学名誉教授による「釈迦の故郷を掘る」の講演会が開催された。もの静かないかにも学者然とした先生の積年の仏教考古学研究の蓄積が語られ、満員の聴衆を魅了した。公開講演会に引続いて、「板碑研究の最前線」と題する立正大学セッションが開催され、5名の演者により板碑研究の起源から、その生産・流通、造立と教団の関係などがテンポよく語られた。このセッション終了後、会場を近在する「ゆうぽうと」に移し、懇親会が開催された。北村行遠立正大学文学部長をはじめとする各氏のご挨拶をいただきながら、しばし愉快な歓談の時間を過ごした。

 翌27日は3会場に分れて33件の口頭発表、同時に3会場に分れてセッション2(遺跡資料リポジトリをめぐって/5件)・3(中国海域をめぐる金属器時代の葬制−東南アジアから台湾、沖縄、奄美、薩南諸島へ−/6件)、4(考古学と人類学のコラボレーションによる遺跡研究の試み−愛知県保美貝塚を事例として−/5件)・5(子供の骨考古学−小さな骨が語る歴史−/5件)、6(日本考古学協会東日本大震災対策特別委員会「東日本大震災から1年−文化財の被災と復興に向けて−」/5件)・7(資源環境系の人類史−中部高地の黒曜石と人類活動−/6件)が開催された。いずれも最新の研究成果が提示され、各会場において熱気あふれる発表と質疑がなされた。例年のごとく関心あるテーマごとに会場を行き来する参加者の姿がみられた。詳しくは『一般社団法人日本考古学協会第78回総会研究発表要旨』を参照願いたい。ポスターセッションは25件のエントリーがあり、工夫を凝らしたポスター展示と熱心な解説で、参加者とのやり取りがみられた。また、協会の常置委員会によるポスターセッションも、通路となる場所での会場設定といった工夫で多くの参加者の注意を引くことができた。

 今回の総会も受入れ大学の用意周到なる準備のもと、多数の参加者を得て、盛会裡に終了できた。立正大学の実行委員会には大きな負担をお引き受けいただいたが、その実行部隊を構成した100名を超すOBの協力は傍から見ているだけで感心するものであった。そして天候に恵まれたのは池上実行委員長のお人柄によるものであろうか。会員ともども心よりお礼申し上げたい。

(総務担当理事 古瀬清秀)

一般社団法人日本考古学協会第78回(2012年度)総会(抄録)

 午前10時、藤田富士夫理事の司会で開会し、冒頭、前年度に他界された会員24名の方々のご冥福をお祈りし、黙祷を捧げた。続いて菊池徹夫会長、池上悟実行委員長から挨拶があった。次に司会から、現在の会員数が4,206名で、本日の出席者116名、委任状預り分が1,286名であり、合計1,402名となり総会成立の定足数に足りているので、この総会が成立する旨の報告があった。続いて議長団及び書記団の選出に移り、議長団として村田文夫会員、柳川清彦会員、久保田正寿会員が、書記団として市川修会員、唐澤至朗会員がそれぞれ選出された。議長団、書記団は登壇し、自己紹介の後、議事に入った。

【報告】

1.第2回日本考古学協会賞の報告並びに承認、表彰

 川名広文理事から、大賞に舟橋京子会員、奨励賞に樋上昇会員が選考委員会から理事会に推薦され、理事会で協議の結果これを了承した旨の報告があり、推薦文が読み上げられた。議長は2名の受賞について承認を求めたところ、拍手をもって承認された。

 承認後ただちに表彰に移り、菊池会長から2名の受賞者に賞状と記念品が授与された。

 協会賞表彰式の後、石川日出志理事から理事会からの提案として、3月末日をもって定年退職を迎えた酒井次長に対し感謝状を贈呈したい旨説明があり、拍手をもって承認された。

 承認後ただちに酒井次長に対し、菊池会長から感謝状と記念品が贈呈された。

2.2011年度事業報告

 古瀬清秀理事から、総会・大会の開催、機関誌等の印刷物に関する報告や公式サイトの更新などについて報告があった。

3.入会資格審査報告並びに承認

 日高慎入会資格審査委員長から、65名の入会申し込みがあり、審査の結果64名が基準を満たし1名が基準に達していなかったこと。64名について異議申し立てを告知したところ1名につき異議申し立てがあったが、再審査により入会基準に達していると判断され、今年度は64名が入会資格該当者となったことが報告された。議長から64名の入会について承認を求めたところ、拍手をもって承認された。承認後、新入会員は登壇し入会者を代表して新潟県の水澤幸一新会員から挨拶があった。

4.理事選挙結果報告

 小野昭選挙管理委員長から、投票率が24.6%と低かったこと。立候補者が理事定数に満たなかったので、非立候補者のうち得票上位者から同意を得て当選者としたこと。得票に小数点が付いているのは、都道府県名の記載がない同姓のみの票があり、按分した結果によるものとの報告があった。また、今後は理事定数を満たす立候補者が出るよう対策を検討すること。同姓での得票数按分については見直したらどうかとの提案があった。委員長報告の後、議長から当選者について承認を求めたところ、拍手をもって承認された。

5.陵墓報告

 福永伸哉理事から、宮内庁との陵墓懇談、事前発掘調査の見学、立入り観察の実施等5件の事業を行ったことが資料に沿って説明された。また、本協会は16学協会の幹事として取り纏め役をはたしていること。2009年度に実施したシンポジウムの内容を中心とした『「陵墓」を考える 陵墓公開運動の30年』の単行本が刊行されたことなどが報告された。

6.研究環境検討委員会報告

 土生田純之理事から、資格問題について3箇所でシンポジウムを開催しており、その内容は協会の公式サイトに掲載されていること。今後は会員からの意見をいただきながらそれらを踏まえて事業を進めていくこと。また東日本大震災により、研究環境の整備が遅れていること等が報告された。

7.国際交流委員会報告

 新田栄治理事から、「発掘された日本列島展」から各時代毎に遺跡を選択し、公式サイトに英文で掲載していること。1月22日に明治大学において「第5回アジア考古学四学会合同講演会」を開催したこと。アジア各地の歴史教科書を分析し、まとめたものを出版する計画があること等が報告された。

8.社会科・歴史教科書等検討委員会報告

 岡山真知子理事から、小学校の教科書から縄文文化に関する記述が消えたことに危機感を持ったことを契機にして活動を続けていること。2011年は弥生・古墳時代に関するシンポジウムを開催し、学校現場からの提言をいただいており、今後はそれをどう活かしていくか検討を進めること。活動の一端が『日本考古学』第33号に掲載されていること。また、昨秋の大会に引き続き今回もポスターセッションを行うこと等が報告された。

9.埋蔵文化財保護対策委員会報告

 近藤英夫理事から、全国委員会、幹事会の開催及び情報交換会、研修会等で出土遺物の取扱い、その手続きについて議論し、その成果を明日のポスターセッションで発表すること。要望書は2遺跡・3件提出したこと等が報告された。

10.東日本大震災対策特別委員会報告

 渋谷孝雄理事(委員長)から、人的被害に加え文化財にも深刻な被害が出ていること。特別委員会では現地視察、現地担当者との協議を重ねてきたこと。被災地の各自治体にアンケート調査を行ったこと。募金は約130万円の協力を得て、その一部は現地でレスキュー活動を行っている団体に寄付したこと。委員を増員し組織の拡充を図ること。活動についてはセッションで発表すること等が報告された。

11.協会図書に係る特別委員会報告

 泉拓良委員長から、配付資料に沿って説明があった。最初に、委員会設置から今日までの経過及び特別委員会の基本的な考え方等の説明があり、3月に行ったアンケートの分析結果について報告があった。また、10月大会時に臨時総会を開催し、基本的な方向性を定めることが報告された。

12.2011年度決算報告並びに監査報告

 白井久美子理事から資料に沿って詳細な報告があり、東日本大震災対策特別委員会の募金から支出した内訳が「収支予算書」として資料に掲載されているとの説明があった。

 続いて金子直行監事から、原田道雄監事と共に監査を行った結果、適法かつ適正に処理されているとの報告があった。また、同監事から理事会に対し、会員減少に伴い収入減の対策を講じること、図書問題を早期に解決し財政負担を軽減するよう提言があった。

13.日本学術会議報告

 木下尚子会員(学術会議会員)から、第22期は4名増員となり13名が4つの分科会(文化財の保護と活用に関する分科会・高校歴史教育に関する分科会・博物館美術館等の組織運営に関する分科会・福島原発災害後の化学と社会のありかたを問う分科会)で活動していることについて説明があり、それらは学術会議の公式サイトで公開されていること等が報告された。


 以上で報告が終了し、「(1)日本考古学協会賞の報告並びに承認、報告」「(3)入会資格審査報告並びに承認」「(4)理事選挙報告」を除く各報告について質問を受けた。

 神奈川県の戸田哲也会員から、図書問題に関するアンケートで方向性がみえたが今後の手順はどうなるのか。別に意見交換会を開催したらどうか。協会で一括保管する意見が5割近くあることを重視して欲しい、との提案・質問があった。

 泉委員長から、設置要綱で本特別委員会は2013年4月までの2年間と定められており、これを守るとすると資料で示した計画で進めざるを得ない。また、これまでに会員の意見を聞き終えたとは考えていない。議論を深めていきたい。所蔵リストのデジタル化は昨年度で完了している。蔵書は約57,000冊、当初の保管費用見積もりは4,200,000円余であるとの回答があった。

 東京都の石井則孝会員から、過去3年間の協会図書の保管費用はいくらになるのかとの質問と共に、図書を保管する場合には床構造も考慮しなければならないとの意見があった。白井理事から、これまでに約81万円かかっており、今後年間約9万円かかるとの回答があった。

 東京都の五十嵐彰会員から、デジタル化が完了しているのであれば募集要綱作成前に公開して欲しい。また、募集要綱作成が半年遅れている理由と、第3回特別委員会の報告がなされていないが、公開する予定はあるのかとの質問があった。

 田中良之副会長から、第3回特別委員会の報告については、本来理事会に諮るべき時期に未完成であったこと。ただし、理事懇談会で報告しているとの回答があった。

 また、泉委員長からは、デジタルデータは現在校正中であること。スケジュールが半年遅れだが、スピードよりも協会が一つになっていく方向を重視しており、少し時間が掛かっているとの回答があった。

 東京都の野本孝明会員から、未収会費の回収はどうなっているのかとの質問があり、白井理事から、3年間滞納者が8名おり24万円が未収となっているが、督促していること。8名の中には連絡先が不明となっている人もおり、会員の方々に情報提供をお願いしたいとの回答があった。

 ここで議長から報告に関する質疑を打ち切るとの発言があり、既に承認されている(1)、(3)及び(4)を除く各報告事項について諮ったところ、拍手をもって承認された。

【審議】

1.2012年度事業計画案

 石川理事から、大会は10月20日・21日に福岡県の西南学院大学で開催すること。公開講座は東北地方での開催を予定していること。その他『機関誌』『年報』等の刊行及び各委員会の活動は例年通り計画していること。公式サイトで会員以外にも情報公開を進めていくこと。東日本大震災対策特別委員会は6月から実務を開始することなどについて説明があった。

 議長から質問を受けるとの発言があったが質問はなく、2012年度事業計画案は拍手をもって原案通り可決した。

2.事務局規則の改正について

 石川理事から、職員の職務責任を明確にし、継続性を維持するため、従来の「書記」という職名を廃止し、新たに主査・主任・主事という職を設けたいとの説明があった。

 東京都の野本孝明会員から給料表も改めるのかとの質問があり、石川理事から給与体系の変更はないと回答した。また、同会員から給料表は公開したらどうかとの発言があったが、同理事から要望として承ると回答があった。

 埼玉県の橋口定志会員から、「昇任・昇格に支障をきたしている」という文言は不的確であり削除すべきとの発言があり、石川理事から、指摘の箇所は削除する旨回答があった。

 ここで議長から質問を打ち切るとの発言があり、提案理由部分を一部修正のうえ諮ったところ、改正案については拍手をもって可決された。

3.監事の選出について

 石川理事から、千葉県の白井久美子会員、埼玉県の吉田哲夫会員の推薦があり、両氏の略歴が紹介された。

 議長から質問を受けるとの発言があったが、質問はなく両氏の監事選出について諮ったところ拍手で可決された。そこで議長は白井会員、吉田会員に対し監事就任を承諾するか否か問うたところ、両会員とも会釈し承諾の意志を表した。

4.2012年度予算案

 白井理事から、東日本大震災で被害に遭われ、会費免除を申請された会員が66名いること。東日本大震災の募金については特別会計として一般会計とは分離したこと。二つの特別委員会の旅費を増額したこと等につき、詳細な説明があった。

 埼玉県の鈴木正博会員から、昨年度に比べ人件費と交通費が増えており、会員サービスとしての印刷製本費が減っているのはどのような理由かとの質問があった。藤田理事から、経費には義務的経費と活動的経費があり、両者を同一の視点で扱うことはできない。事業の運営については懸命に努力しているとの回答があった。また続けて同会員から、予算編成には優先順位があるのではないか。検討すれば協会図書に関する保管費用等が生み出せるのではないかとの質問があり、白井理事から、東日本大震災特別委員会の旅費が増となり、印刷製本費は競争入札により減となっていること。また、インターネットでの公開に力を入れ会員サービスに努めているとの回答があった。ここで議長は質疑を打ち切り、「2012年度予算案」について諮ったところ、拍手をもって原案通り可決された。

 次に議長から、「(5)その他」で理事会から「総会決議」について提案があるのでこれを認めるとの発言があり、説明を求めた。石川理事から、「福島県の原発事故被害区域に所在する文化財等の保全に関する決議(案)」が読み上げられ、承認されれば総理大臣をはじめ関係大臣及び関係機関へ提出したいとの説明があった。

 岩手県の稲野裕介会員から、表題にある「文化財等」の等とは何を指すのか、どこまで広げるのか、等は削除した方が良いのではないかとの質問があり、石川理事から表題中にある「文化財等」の「等」を削除する旨回答があった。

 ここで議長は質問を打ち切り「総会決議」につき一部修正の上会場に諮ったところ、拍手をもって承認された。

 以上をもって議事はすべて終了した。(午後12時45分)

2011年度事業報告

2012年度事業計画


 会長就任のご挨拶(田中良之会長)



「第2回日本考古学協会賞」選考結果について

 「第2回日本考古学協会賞」につきましては、2011年11月30日(水)の締切日までに計10件の応募がありました。2012年2月25日(土)に選考委員会が開催されて、日本考古学協会大賞に舟橋京子氏、日本考古学協会奨励賞に樋上昇氏がそれぞれ推薦され、3月24日(土)の理事会において報告、承認されました。

 この経緯を受けて、5月26日(土)の第78回総会において、川名広文理事から日本考古学協会賞選考結果が報告され承認を得るとともに、菊池徹夫会長より両氏に賞状と記念品が授与されました。選考理由は、次のとおりです。

第2回日本考古学協会大賞  舟橋京子氏

 『抜歯風習と社会集団』すいれん舎 2010年6月刊

 本書は、縄文時代から古墳時代にかけての抜歯風習について、東アジア各地との比較を行いながら総合的に考察し、抜歯風習とその背後にある社会集団の解明へと迫った研究である。詳細な研究史の検討から問題の所在を明らかにしたうえで、抜歯鑑定の基礎となる歯科学的方法から検討し、考古学・自然人類学の方法を駆使して抜歯型式の再検討、遺跡での出土状況および抜歯の施工年齢・順序、血縁関係や出産経験の有無等の基礎的事実を明らかにし、起源・系統論、社会的機能に関する考察を行い、抜歯がソダリティ表示の成人儀礼として盛行することなど従来の抜歯学説を大きく塗り替える成果をもたらした。

 このように、歯科学、自然人類学、文化人類学の知見と方法を考古学の枠組みの中で融合させた本書は、抜歯研究や骨考古学の分野のみならず、先史社会研究において今後避けて通れない一書であることから、選考委員会は本書の著者、舟橋京子氏を第2回日本考古学協会大賞候補として推薦する。

第2回日本考古学協会奨励賞  樋上 昇氏

 『木製品から考える地域社会−弥生から古墳へ−』雄山閣出版 2010年5月刊

 本書は、当該期の木器資料を広く集成し、用材、製作技術、使用などに関する基礎的研究を行い、さらに木器流通システムや、木器専業工人の成立過程など意欲的な社会的考察を行ったものである。その基礎的研究は緻密であり、主要用材が広葉樹から針葉樹へ移行するプロセスや農具形態変化の意味の解明のほか、多くの新知見をもたらした。また遺物論と集落論を有機的に関わらせることによって、弥生中期から後期にかけて鉄製工具の普及にともない完成品が木器流通の主体となること、また弥生中期以後に精製木製容器が中核集落で専業的に製作されだし、弥生後期には超精製容器が首長の空間で製作されるようになったことを解明している。木器は非常に多様な用途に用いた重要な器物であり、本書は今後の当該期の生活と社会を考えるうえで不可欠のものになるであろう。以上の理由から選考委員会は、樋上氏の著作を日本考古学協会奨励賞にふさわしいものと一致して判断した。