第14回「コロナ禍の博物館 ―新米学芸員からの視点―」 飯村 円

 私が大阪府立弥生文化博物館に勤め始めたのは、2020年4月1日で臨時休館の最中でした。例年であれば、この時期の当館は学校の団体見学でにぎわっていましたが、お客様がご来館されていない館内は物寂しい雰囲気でした。

 当館は多くの方に「弥生文化を知ってもらいたい」、「考古学に興味を持ってもらいたい」という願いから、実物やレプリカだけではなく復元ジオラマや解説動画などを用いた展示をしています。展示だけではなく、出土品の土器や模造品の銅鐸に触れるコーナーや、貫頭衣と卑弥呼の衣装を試着するコーナーなど、多数の体験型コンテンツも設けていました。それらは日々さまざまなお客様が触れるため、コロナ禍の現在ではその大半が中止となりました。さらに、ミュージアムコンサートや夏休み・春休みに開催していた大規模イベントも、毎回多くのお客様が参加されるため、開催を見送ることとなりました。

 しかしながら、全ての体験型コンテンツやイベントを中止にしたわけではありません。感染状況を見て、開催方法を変更したり、再開したりしたものもあります。

 開催方法の見直しが行われて開催したものとして、講演会があげられます。今までの講演会は、当日でも誰でも聴講することができましたが、それでは会場に人が密集するため、危険な状態でした。そこで、定員数を設けた事前申込制を採用しました。また、席に番号を振り、お客様がどの席に座られていたのかを把握して有事の際に連絡ができるようにしました。

再開したものとしては、「子どもファーストデイ」があげられます。子どもファーストデイは、毎月第3土曜日に行っていた子ども向けワークショップです。レプリカの土器や銅鐸の破片を組み立てる「土器・銅鐸パズル」と弓矢体験や当館オリジナルの考古楽かるたなどの月ごとに変わるワークショップを行っていました。これらについても、人同士の距離が近く、特に接触も多いパズルやかるたなどのワークショップは避けて、昨年の9月から再開しました。さらに最近では、今まで使用中止にしていた常設展の一部の映像コンテンツも、操作ボタンをタッチボタンから非接触型のものに変更し、再開しました。

 こうした工夫や新型コロナウイルス感染症の予防対策の進展もあり、入館者数は6月末の再開館当初よりは増えつつありますが、コロナ禍以前に比べたらまだまだ少ないです。 

 中々収束の気配が見えない新型コロナウイルス感染症の流行。少し前から「アフターコロナ」ではなく「ウィズコロナ」という言葉を聞くようになりました。早く従前のように戻りたいと願う一方、コロナウイルスが撲滅できていないという前提でイベントやコンテンツの再開および内容を検討しなければなりません。

 「ウィズコロナ」の今、博物館にも柔軟な対応が求められています。私も少しずつですが、業務に慣れてきました。新人だから、若手だからと臆することなく、お客様が楽しんで学べる工夫を提案していきたいと考えてます。

再開した映像コンテンツ。ボタンが空中に映像として映しだされている。