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2014.8

埋文委ニュース 第66号

日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会

埋蔵文化財保護対策委員会*******2014.5.16

 本年度の日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会は、2014年度総会に先立って日本大学文理学部百周年記念館会議室2を会場として、担当理事および委員32名の参加を得て開催された。冒頭に矢島國雄前委員長が挨拶し、各地において埋蔵文化財保護を担う次代の人材育成が重要になってきており、委員会においても機動力を有する人材の確保が要請された。その後、事務局の推薦により議長団に松本富雄(埼玉県)・舘野 孝(東京都)、書記に小笠原永隆(千葉県)・山川 均(奈良県)の各委員を選出した。主な議事内容は以下の通りである。

1.2014−2015年度委員の改選について

 橋口定志担当理事より、新委員の選任に関する経過報告等がなされた。今回は委員不在県がないものの、例年より委員数は少なく46都道府県から117名の委員が選任されたこと、福岡県の委員を1名選考委員会において追加で選任したい旨の報告があった。

2.委員長・副委員長等の選出

 新委員長については、立候補により矢島國雄委員を再選した。また、委員長の指名により、副委員長に藤沢 敦(宮城県)・藤野次史(広島県)両委員が推薦され、前回一致で承認された。この後、新委員長の挨拶があり、新しい方向性をもって委員会の運営を図る旨の発言があった。

3.2013年度の埋蔵文化財保護対策委員会活動報告

 @ 2013年度の活動概要の報告

 松崎元樹前事務局長により、2013年度における埋文委の主な活動について報告された。内容としては、月例の幹事会(計10回)における会議の内容や、要望書を提出した大分県杵築市杵築城遺跡をはじめ、和歌山県岩出市根来寺遺跡、静岡県沼津市高尾山古墳、神奈川県茅ケ崎市下寺尾官衙遺跡群、佐賀県神埼郡吉野ヶ里遺跡、高知県南国市海軍通信基地跡等の保存問題等に関する検討と保存に関する取組みを行ったことが報告された。

 A 2013年度の決算報告と2014年度の予算案について

 同じく松崎より、2013年度決算の説明、及び2014年度予算案が提示された。昨年度は、保存要望にいたるケースは1件だったが、九州や関西地区の遺跡に係る案件が多々あり、幹事会の視察・連絡等に係る旅費を執行したことが報告された。今年度については、実績を考慮した予算案を総会に諮ることで了承された。
 これに対して、幹事会の活動を活発化するために、連絡会を含む全体予算の柔軟な執行に関して熊谷常正委員(岩手県)より提案がなされ、これを了承した。

4.2013年度委員アンケート集計結果の報告と協議

 28都道府県の委員から回答があった。各アンケート項目の集計結果とそれに基づいた2013年度の動向や総括について、小笠原委員(千葉県)より報告された。昨年度の動向では、東日本大震災復興に係る埋蔵文化財取扱いの問題、埋文保護体制の問題、出土遺物の保管・管理・活用問題、行政外郭調査組織および民間調査組織の動向、博物館・資料館の運営等に係る問題点等について結果報告がなされた。

 この中で、大震災復興事業に係る埋文調査に関しては、被災3県の事業量に差異はあるものの、総じて調査に要する人材確保が困難な状況があること、交付金対象事業が平成27年度までに完了できない点など、行政が抱える問題点が浮き彫りとなっている。また、行政や調査機関においては事業量の増加により職員採用が行われているが、世代間格差により調査技術やスキルの伝承が十分ではなく、監理体制を維持する上での懸念材料となっている。

5.アンケート結果による埋蔵文化財保護の諸課題

 上記の調査結果を受けて、松本委員(埼玉県)よりいくつかの課題が提起された。例えば、調査関係では記録保存の方法、報告書作成300部問題、出土遺物(品)の取扱い区分、文化財の活用問題と多岐に渉る。中でも、調査事業のデジタル化の進行によるデータ消失のリスクへの対応が必要であることや、報告書部数の制限が考古資料の有効利用の妨げになっている点などが指摘された。さらに、文化財レスキューの実践と成果が、今後広く活用されるような措置の必要性が説かれた。

 なお、矢島委員長よりこの10年継続してきたアンケート調査を取りまとめ、検討した上で『日本考古学』に掲載するという方針が示され、今後、具体的な検討に入ることが了承された。

6.各地からの報告

@ 北海道・東北連絡会の報告(藤沢副委員長・熊谷委員)

A 関西連絡会の報告(山川委員)

B 四国連絡会の報告(吉田 広・出原恵三委員)

C その他地域の報告(山梨県・閏間委員/広島県・藤野副委員長/沖縄県・山本委員/福岡県・佐藤委員)

(松崎記)