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2015.12

埋文委ニュース 第69号

日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会

埋文委・情報交換会  ***2015.10.18

 埋蔵文化財保護対策委員会では2015年度奈良大会にあわせて、10月18日(日)午後2時から奈良大学C303教室において、埋文担当理事、委員等15名の参加を得て情報交換会を開催した。司会進行役は関西連絡会の山川均委員が務め、矢島國雄委員長の挨拶の後、飛鳥・藤原宮都の世界遺産化に向けた取組みや、各地の埋蔵文化財の保存問題等についての報告と意見交換が以下のとおり行われた。

1 基調講演

 「飛鳥・藤原の宮都とその関連遺産群と考古遺跡〜世界遺産登録に向けた文化財保護の取り組み〜」に関して、露口真広(橿原市)と西光慎治(明日香村教育委員会)の両氏により講演された。

 奈良県では、2007年に世界遺産『飛鳥・藤原』登録推進協議会を設け、県と橿原市・桜井市・明日香村が共同してその実現に向けた取り組みを行っている。具体的には、@古代宮都関連遺跡の整備と活用、A当該地域における埋蔵文化財保護体制の拡充、B日本遺産認定に向けての活動などが機軸となっている。

 @では、まず、明日香村が実施している史跡牽牛子塚古墳の発掘調査と整備に関する検討が挙げられた。調査によって、横口式石槨を有する越塚御門古墳が新たに発見され、八角形墳をもつ牽牛子塚古墳と周囲の歴史遺産に関する知見が加わり、整備復元ゾーンのプランニングが示されたことは大きな意義がある。さらに、檜隈寺を含む国営飛鳥歴史公園キトラ古墳周辺地区の整備に伴い、奈良国立文化財研究所、橿原考古学研究所、明日香村教育委員会が調査に当たり、大きな成果を上げていることなどが報告された。

 Aでは、飛鳥・藤原五者会議における、専門研究機関と行政機関との連携強化を図りながら、特色ある埋蔵文化財の保護に関する体制づくりを構築することを目指す。また、明日香村では文化財保存区域を階層的に把握し、広域的な視点からの史跡の保存と管理を行うことが明示された。また、五者会議のあり方に関しては、単なる調整会議に終止させず、飛鳥・藤原の史跡・名勝・包蔵地に関する効果的管理体制の拡充を図る方向性なども提示され、関係機関の熱意が感じられた。

 Bでは、文化庁が認定した日本遺産(Japan Heritage)「日本国創成のとき〜飛鳥を翔た女性たち〜」をテーマとして、橿原市・高取町・明日香村が数ある歴史的文化財群を有機的に活用して歴史のストーリーを語る遺産とする活動が大いに期待される。

 以上の内容は今後の埋蔵文化財保護と活用を模索する上で、意義ある内容をもつと認識された。

2 各地からの報告

 関西連絡会の山川委員より、広島県三原市の中世磨崖仏の劣化状況に関する現地視察の報告があり、何らかの対応策の必要性が議論された。また、福岡県春日市須玖タカウタ遺跡や出土した貴重な青銅器鋳型の保存問題に関し、矢島委員長はじめ佐藤委員、吉田委員により現地視察と市との懇談がもたれたことが報告され、一定の成果があった。

3 その他

 松崎事務局長より、本年5月に会長声明が出された沼津市高尾山古墳の保存問題に関して、市長が古墳撤去を前提とした調査を中止して、道路との両立をはかるための協議会を発足したことが報告され、協会としても支持することが確認された。 (松崎記)