HOME > 文化財保護 > 日考協声明


日考協 第29号
2008年5月26日
大坂府知事   橋下 徹 様
大阪府教育長  綛山哲男 様
大阪府議会議長 畠 成章 様
有限責任中間法人 日本考古学協会
会長 菊池徹夫

大阪府の博物館・資料館見直しに対する決議文の提出について

 当協会の事業・活動に対し、常々ご理解とご支援をいただき感謝いたしております。
 さて、当協会では、本年5月24日、東海大学湘南校舎で開催された第74回(2008)年度総会において、別紙の声明を発表いたしましたので、提出させていただきます。 
 意のあるところをおくみとりのうえ、よろしくご高配賜りますようお願い申し上げます。

一、別添書類         一通

以上

大阪府の博物館・資料館見直しに対する決議

 大阪府では、財政再建のため、府立施設の統合・廃止を含めた見直しがおこなわれている。その中には全国的に高く評価されている博物館・資料館が含まれている。弥生文化博物館や近つ飛鳥博物館、最古の須恵器生産窯址群の存在を伝える泉北考古資料館、土木建築と考古学の協同という他に例のない狭山池博物館である。弥生文化博物館は池上・曾根遺跡、近つ飛鳥博物館は葉室一須賀古墳群、泉北考古資料館は泉北古窯址群、狭山池博物館は狭山池遺跡の歴史的価値を深く認識する施設として、保存された遺跡と一体性をもつように設立された唯一無二の施設である。いずれも、わが国古代史の解明に欠かせない重要な博物館・資料館であるが、大阪府民と全国の研究者が長年にわたり遺跡の保護と活用を要望してきたことによって設立された経緯があり、日本の考古学研究と遺跡保存運動の歴史に大きな足跡を残している。

 いうまでもなく、博物館・資料館は、たんに文化財を陳列する建物ではなく、地域の魅力やアイデンティティを描きだし、地域住民の誇りや郷土への愛着をはぐくみ、子孫へ引き継ぐという社会的使命をもっている。上にあげた博物館・資料館は、大阪府においてそれぞれの個性を発揮し、地域に密着した研究や普及活動により、大阪が日本の歴史のなかで大きな役割を担ってきたことを府民が実感する場、アイデンティティを創出する場として機能してきた。その活動は、国内はもとより海外でも高く評価されている。

 こうしたことを考えるなら、これらの博物館・資料館は、「子供が笑う大阪」という大阪府再建の大きな命題に必要不可欠な要素であり、その社会的使命や存在意義を強く認識しなければならない。伝えられているような財政的側面からだけで、充分な検討もなく性急な統合・廃止ということが行われるならば、大阪府は文化財施策のうえで大きな汚点をのこし、国内のみならず国際的な魅力や信用を失墜することになりかねない。

 以上のことから日本考古学協会は、大阪府が検討している博物館・資料館の統合・廃止を含めた「見直し」について再考を促し、博物館・資料館の存続とさらなる発展を希求するものである。

 以上、日本考古学協会総会の名において、ここに決議する。

    2008年5月24日

有限責任中間法人日本考古学協会第74回総会