第1回 日本考古学協会賞

第1回(2010年度)日本考古学協会賞の発表

日本考古学協会賞の設立は、第76回(2010年)総会で承認され、「日本考古学協会賞規定」が制定され、第1回日本考古学協会賞の推薦を行われました。2010年11月30日(火)の締切日までに5件の応募があり、2011年2月26日(土)に選考委員会が開催されて、日本考古学協会大賞に池谷信之氏の『黒曜石考古学-原産地推定が明らかにする社会構造とその変化-』、奨励賞に水澤幸一氏の『日本海流通の考古学-中世武士団の消費生活-』が推薦されました。特別賞は3月26日(土)の理事会で、坪井清足氏を永年の考古学分野での業績を評価し推薦されました。この結果は、第77回(2011年)総会で報告され承認を受け、各受賞者に賞状と記念品が贈られました。

 

日本考古学協会大賞

池谷信之 著

黒曜石考古学-原産地推定が明らかにする社会構造とその変化-』 新泉社 2009年3月20日刊行

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推薦文

著者はこれまで、関東~中部地方の主要遺跡から出土した黒曜石製石器を蛍光X線分析によって原産地を同定するという方法で、石材採取・製作・流通・消費のプロセスから社会構造へとアプローチしてきた。本書はその成果であるが、出土黒曜石の全点分析という膨大な作業がその基礎をなしている。方法論の整理と学説史的検討を踏まえて、旧石器時代から縄文化過程、狩猟採集社会の終焉と弥生時代の石器利用など長いスパンを扱っている点も一つの特長で、例えば旧石器時代における環状ブロック群の分析から複数集団の存在を考察し、小集団の一時的集合によるブロック群形成の実態へと迫って従来の仮説の検証を行っている。著者はこれらの成果を踏まえて「黒曜石考古学」の確立を目指しており、今後その展開が期待されよう。
以上により、選考委員会は本書の著者、池谷信之氏を第1回日本考古学協会大賞として推薦する。

 

 

 

日本考古学協会奨励賞

水澤幸一 著

日本海流通の考古学-中世武士団の消費生活-』  高志書院 2009年9月15日刊行

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推薦文

著者はこれまで、中世の北東日本海沿岸地域の遺跡・遺物の調査研究を進めるなかで、おもに中国陶磁食膳具や国内産の瓦器・土器・漆器などの物資流通史に加え、城館跡の実相を通して中世武士団の消費生活の実態解明を目指してきた。本書はその10年来の成果をまとめた意欲作であり、考古学の堅実な手法に基づいた実証的な研究に拠っている。
序章では中世考古学の視点や位置付け、年代観を説く。そして本論第1部では、貿易陶磁に関わる国際情勢、時期別出土量の比較検討、当該地域の優位性、搬入ルート、越後国衙との連関、鎌倉遺跡群の遺物諸相、個々の器種の搬入時期、在地越前陶の変遷、茶道具の保有、漆器へのシフトなどを論じる。
第2部では、瓦器の器種と性格、中世在地・搬入土器の消長、漆器の器形変遷などに言及する。さらに第3部では切り離せない遺構論として、室町期国人領主館への移動や戦国期山城への移動のほか、京からの井戸構築技術の移入などにも触れている。このように出土資料を駆使し、当域中世の流通の実態を総合的に描き出そうとした貴重な試みと言えよう。
以上により、選考委員会は本書の著者、水澤幸一氏を第1回日本考古学協会奨励賞として推薦する。

特別賞

坪井清足 会員

受賞理由

永年にわたる考古学分野での業績並びに平成11年度の文化功労者受賞に対して、特別賞の授与を決定した。