HOME > 図書問題

「日本考古学協会蔵書の海外放出に反対する」署名簿の提出と声明について

 下記の「『日本考古学協会蔵書の海外放出に反対する』署名簿の提出と声明について」を掲載するにあたり、その経緯について一言申し上げます。この署名簿と声明文が協会事務局に提出されたのは、理事会前日の6月25日でしたが、翌26日に開催した理事会では長時間にわたり真摯に協議いたしました。その結果は、今回、本誌に掲載の「日本考古学協会所蔵図書の一括寄贈について」でご覧のとおり、声明にある要望には沿いかねるという結論でした。しかしながら、全会員の1/10以上(署名会員435人)※の批判的意思の表明があったことは確かですので、その事実は全会員に開示する必要があると判断し、ここに署名簿添書と声明文とをそのまま掲載することといたしました。よろしく会員の皆様のご理解とご判断をお願いいたします。

一般社団法人日本考古学協会理事会

※署名会員412人に、呼びかけ人31名中の署名している23人を加えた人数



2010年6月25日
日本考古学協会
会長 菊池徹夫様


考古学協会蔵書の海外放出に反対する有志
飯村 均五十嵐 彰植木 武小川 望大竹 幸恵大塚 初重梶原 勝上敷領 久河合 英夫桐生 直彦黒尾 和久小林 謙一佐古 和枝十菱 駿武武川 夏樹田中 信戸田 哲也中山 真治新里 康橋口 定志橋本 久和橋本 真紀夫長谷川渉畑 大介廣田 吉三郎松崎 元樹松本 富雄馬淵 和雄三瓶 裕司宮瀧 交二八重樫 忠郎(31名、五十音順)

「日本考古学協会蔵書の海外放出に反対する」署名簿の提出について

 私たちは、日本考古学協会蔵書を海外に放出することに反対し、別紙のような声明を発表致しました。そして、私たちの意見に賛同していただける方を募ったところ、北海道から九州にいたる広域から、日本考古協会会員の10%にせまる会員412人(呼びかけ人31人を併せると443人)、考古学を学ぶ非協会員および考古学に関心を持つ一般市民併せて1,186人というたいへん多くの方々から賛同の署名を頂戴いたしました。そして、現在も署名は私たちのもとに寄せられてきている状況であります。これにつきましては、一定の整理がつき次第、協会へ送らせていただきます。

 私たちは、日本考古学協会理事会に、以上のような日本考古学協会会員を含む考古学研究者および一般市民の意志を重く受け止め、これまでの理事会の判断を白紙に戻して、国内での活用の方途を多角的に再検討されることを強く望むものです。

 本署名簿に込められた多くの方々の思いを尊重した判断を理事会が表明されるならば、私たちはそれに全面的に協力する準備も有ることを、改めて申し添えます。

以上


2010年6月6日

日本考古学協会蔵書の海外放出に反対する(声明)

考古学協会蔵書の海外放出に反対する有志

 私たちは、考古学協会蔵書の英国セインズベリー日本芸術研究所への寄贈に反対します。

 私たちはこれまで報告書や考古学関連図書を、日本考古学協会が掲げる考古学研究の深化と普及・啓発の理念に同意して、協会に善意で無償供与してきました。当然、国内において活用して欲しいという前提であります。それに応えることは、考古学の調査・研究を牽引する日本考古学協会の責務であると考えます。

 その考古学協会が数万点の報告書および関連図書を、ほとんどの研究者が閲覧しがたい海外に押しやろうとしています。日本考古学協会そのものの存在意義が問われる行為でありましょう。

 私たちは、理事会議決を無効と考えます。したがって、それにもとづいて交わされたセインズベリー日本芸術研究所との「覚書」も、もとより成立しないと理解しています。

 国外への寄贈はまったくの想定外です。2009年度総会で理事会に図書の扱いを一任した時に決められた「日本考古学協会所蔵図書寄贈先募集要項」の文面は、海外を想起させるものではなく、しかも海外放出も想定内にあることに理事会は言及していません。総会後の状況の変化についても、理事会はその説明を充分に行なったでしょうか。全く行なっていません。

 協会所蔵図書は会員の付託を受けた日本考古学協会の学問的資産ともいうべきものであり、その措置が2009年度総会時の前提とは異なるものである以上、以後の取り扱いについては、理事会の承認事項ではなく、改めて総会での議決に委ねられなければならないものです。2010年3月までに決着を付けるというスケジュールも、必然的に白紙に戻されるべきものです。

 この1年間の状況を総会で報告し、今後の対応について議論し、賛否を会員に問うてこそ民主的な手続きと言えるでしょう。

 どの近代国家でも、その国固有の文化財を国外に出すことに制約を設けています。

 協会に蓄積された図書は、敗戦後日本考古学の歩みをたどることができるかけがえのない“原本”群であり、それ自体が文化財です。安易に文化財を海外放出させるべきではありません。国家的損失を生じさせかねない今回の動きは、独り理事会の判断で決せられるものではないのであります。

 セインズベリー日本芸術研究所では資料をデータベース化し、インターネットでの活用を検討していると言われています。驚くべきことに理事会は、これで日本考古学への世界的理解が進むと考えているようです。しかし、デジタル化するならば、他力本願ではなく日本国内で実行すべきではないでしょうか。海外に向けても、日本国内から情報発信してこそ真の国際化と言えるのであり、それこそが日本考古学協会の使命でありましょう。

 以上の認識から私たちは、日本考古学協会理事会の議決は手続き的に無効であり、日本における文化財保護の観点からも、協会蔵書の海外放出に反対し、再考を求めます。


考古学協会蔵書の海外放出に反対する有志(五十音順)
 飯村 均五十嵐 彰植木 武小川 望大竹 幸恵大塚 初重梶原 勝上敷領 久河合 英夫桐生 直彦黒尾 和久小林 謙一佐古 和枝十菱 駿武武川 夏樹田中 信戸田 哲也中山 真治新里 康橋口 定志橋本 久和橋本 真紀夫長谷川 渉畑 大介廣田 吉三郎松崎 元樹松本 富雄馬淵 和雄三瓶 裕司宮瀧 交二八重樫 忠郎