埋文委ニュース 第78号

2020.12

埋文委ニュース   第78号

日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会

はじめに

 今年度は、新型コロナウイルスの流行により、総・大会の中止が余儀なくされ、埋蔵文化財保護対策委員会も通常の活動が不可能になるなど、大きな影響を受けた。以下、このような状況下での活動状況の概要について報告することとする。

 

1.2020年度総会時の埋蔵文化財保護対策委員会について

 2020年度総会時の埋蔵文化財保護対策委員会は、第86回(2020年度)総会の中止に伴い、書面で開催することとなった。この場合、書面を委員に郵送する形をとるのが通例である。しかし、新型コロナウイルス感染防止の観点から、協会事務局の開室時間短縮や在宅勤務が行われ、その中で郵送という方法は、事務局職員が出勤して行う作業が増加するため、できるだけ避けるべきと判断し、メールでの送付を行うこととした。本来なら開催予定の5月22日には資料を送付する必要があったが、今年度は委員の改選にあたり、改選された委員のメールアドレスを委員会事務サイドで集約する作業が生じた。新型コロナウイルスへの対応で本職の方も混乱している中での作業は、非常に手間取り、委員への資料送付は8月16日になってしまった。メールの不着による郵送への切り替えなども発生し、全委員への送付完了はさらに1~2週間を要することとなった。こうした大幅な遅延は、委員改選の際、委員会事務サイドがメールアドレスの収集を徹底しなかったことにすべての原因があり、大きな反省材料となったのはいうまでもない。

 書面開催とした委員会の議事内容は以下の通りである。

 1.2020-2021年度委員の改選について

 2.委員長・副委員長・幹事・地区連絡会代表の選出

 3.2019年度の埋蔵文化財保護対策委員会活動報告

   ①2019年度の活動概要報告

   ②2019年度の決算報告

 4.2020年度の埋蔵文化財保護対策委員会活動方針

   ①2020年度の活動方針について

   ②2020年度の予算について

 通常は各地の報告の時間をとり、さらに今年度は埋文委アンケート「2018-2019年度の埋蔵文化財をとりまく状況の調査」について、各地域連絡会からの報告を行う予定であったが、今後の幹事会で報告・協議を行ったうえで、地域連絡会を通じて各委員に周知していくこととした。

 なお、審議事項については、大きな異論はなく、いずれも承認された。

 

2.情報交換会について

 埋蔵文化財保護対策委員会情報交換会については、地方大会に合わせて開催するのが通例であった。本年度は、2020年10月3日に大会会場である金沢大学で開催する予定であったが、大会自体の中止に伴い、中止を余儀なくされた。情報交換会では、特に審議事項はなく、開催地報告や各地域連絡会報告が中心となるため、特に書面開催は行わないこととした。

 

3.幹事会について

 5月・8月・10月を除き、協会事務所を会場として毎月開催を原則とする幹事会についても、新型コロナウイルス流行の中で、4月の対面開催は中止とし、審議が必要な事項についてはメールで行うこととした。5月25日の非常事態宣言後も、幹事が所属する職場の中には、東京への出張や外部との会議について自粛を求めるところが多く、引き続き6月の対面開催も中止し、メールでの審議を行った。

 7月以降も終息の見込みが薄く、対面開催が引き続き難しいと判断されたことから、当面の間Zoomを使用したオンライン形式の会議を実施することとし、7月18日・8月15日・9月19日・10月17日の各日に開催した(11月は21日に開催予定)。結果として、これまでの対面形式ほどの意思疎通はできないものの、報告や協議は特に支障なく実施できている。とりわけ関東圏以外の幹事については、移動の時間を気にすることなく参加できるため、出席率が上昇し、緊急の課題についてはむしろ迅速な対応が可能になっていることは特筆すべき成果である。よって、体面開催が可能になった後もオンラインでの参加ができるようにすることで、より円滑な協議を行っていくことを予定している。

 

おわりに

 あらゆる社会活動全般のことであるが、埋蔵文化財保護対策委員の活動も新型コロナウイルスの流行に翻弄されている。特に総・大会時の委員会及び情報交換会の各地の委員が一堂に会し、意思疎通を図る機会が奪われた影響は大きい。ただ、幹事会を中心にかえって各地の課題に対して迅速な対応が可能になっている点もある。

 埋蔵文化財に対する危機的な状況は、新型コロナウイルス渦中においても、残念ながら引き続き各地域で発生している。今後は、危機下においてもに円滑に対処できる体制を構築するとともに、得られた利点を損じることがないように、引き続き活動を進めていきたいと考えている。                           (小笠原永隆)