『2016年熊本地震 日本イコモス報告書 文化財の被害状況と復旧・復興への提言』 『平成28(2016)年鳥取県中部地震による石造文化財の被害調査』

理事の杉井です。

前回の更新から少し時間が経ってしまいました。

その間、駒澤大学で5月19日に開催された第85回総会でのセッション8「災害と文化財-その現状と課題-」の準備、あるいは同日のポスターセッションに出すためのポスター作成などを行ってきました。

私が作成したポスターについては、追ってこのブログに公開したいと思いますが、今回は、標記2冊の報告書が発行されたことを皆様にお伝えしたいと思います。

 

1つは、日本イコモス国内委員会による『2016年熊本地震 日本イコモス報告書 文化財の被害状況と復旧・復興への提言』。

『2016年熊本地震 日本イコモス報告書 文化財の被害状況と復旧・復興への提言』

古墳以外の埋蔵文化財に関する記述はほとんどありませんが、被災建造物の現状と課題が要領よくまとめられています。同じ熊本にいながらも知らなかったことの多さにハッとすると同時に、とても勉強になります。
これは、以下のホームページで読むことができます。
https://icomosjapan.org/news/news190425.pdf

 

 

2つは、鳥取大学地域学部考古学研究室・保存科学研究室による『平成28(2016)年鳥取県中部地震による石造文化財の被害調査』。

『平成28(2016)年鳥取県中部地震による石造文化財の被害調査』

半年前の平成28年(2016年)熊本地震の陰に隠れ、平成28年(2016年)の10月に発生した鳥取県中部地震については、全国的にはそれほど報道されていません。
でも、この鳥取県中部地震においてもさまざまな文化財が被災しています。本書では、そのなかでも石造物の被害状況が詳細に報告されており、とくに私にとっては、横穴式石室の被災状況が大変気になるところです。熊本地震で被災した横穴式石室の復旧・修復と何らかのかたちで連携することができればと思います。
なお、本書には、鳥取県中部地域の「狛犬の劣化診断ノート」が100ページ以上にわたって掲載されています。こうした地道な文化財現状調査の記録こそ文化財の保護にとってはきわめて重要であることを、本書は強く訴えかけてきます。