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東京学芸大学・日本考古学協会社会科教科書問題検討小委員会
第1回シンポジウム〜歴史教育と考古学〜

シンポジウムの趣旨

 現在の小学校第6学年の歴史学習においては、新教育過程の導入後、大幅に教育内容の削減が実施されました。特に、考古学に大きな関わりのある分野では、現行の歴史教科書から列島の基層文化を形成した「旧石器・縄文時代」についての記述が削除され、歴史学習は「弥生時代」から取り扱うことに改められました。日本列島における人類史のはじまりを削除し、その歴史を途中から教えるという不自然な教育は、歴史を系統的・総合的に学ぶことを妨げ、子ども達の歴史認識を不十分なものにするおそれがあります。

 日本考古学協会は、このような現状を改善し、わが国の歴史教育において、考古学の研究成果が適切に取り扱われるよう働きかけることも学会としての責務であるという認識から、2006年4月に『社会科教科書問題検討小委員会』を設置しました。

 現在、委員会では、1)教科書策定の基準とされている、文部科学省制定『学習指導要領』の問題点を明らかにし、その改訂を求めていく。2)現況の歴史学習の実態を検証し、より適切な内容となるよう提言していく。3)原始・古代はもとより中・近世以降においても、歴史学習の素材として考古学の研究成果が有効であることを提示していく。の3点を目指して、学習指導要領や学校現場で使用されている教科書・副読本、そして、総合的な学習の時間についての実態調査を行っています。また、2006年11月に開催された日本考古学協会の秋季大会では、教科書を規定している『学習指導要領』の改訂に対する声明文を国、及び中教審に提出し、総・大会等において教科書の現状と課題を伝えるポスターセッションを実施してまいりました。

 考古学は、祖先の生きた証となる物質資料を基に歴史を復元する学問です。列島全域に普遍的に存在する考古資料は、文字などの記録では知ることのできない人々の生活や、決して一律ではない地域の豊かな歴史と文化をいきいきと物語り、その成り立ちを理解する上で欠かすことのできない貴重な資料でもあります。また、掘り出された遺物や遺跡に触れる感動は、子ども達の自国の歴史や各地域の身近なふるさとの歴史を学ぶという知的好奇心を刺激し、祖先に対する畏敬の念や生きる力と知恵、そして、生命の尊厳等を学ぶ教材として重要な意味を持っています。

 歴史教育においてこのような考古学の特性や成果を十分に活かしていくためには、自らがこれまでの学会活動を振り返るとともに広く意見や情報を収集し、学校をはじめとする教育現場はもとより、他の学会との共同・連携が必要となります。

 本シンポジウムでは、その活動の一環として歴史教科書における原始時代の扱い、及び、考古学の成果の活用の見直しに対する日本考古学協会の基本的な立場をアピールし、将来、日本の教育現場の最前線にたつ若い世代の皆さんからも広く意見を求めながら、活発な議論を重ねていきたいと考えております。

―プログラム―

※敬称略、社会科教科書問題検討小委員会を小委員会と略

 ―司会・進行:渡辺 誠 (日本考古学協会副会長・小委員会委員)・佐古和枝 (小委員会委員)
■ 開会の挨拶 13:00〜13:10 東京学芸大学 鷲山恭彦学長
日本考古学協会会長 西谷 正:九州大学名誉教授
■ 基調報告13:10〜16:20
13:10〜13:40 Ⅰ 歴史教育と考古学小委員会委員長 岡内三眞:早稲田大学教授
13:40〜14:30 Ⅱ 小学校の教科書から消えた
旧石器・縄文時代の記述
小委員会委員 釼持輝久:元横須賀市立長井小学校教諭
 (休憩:10分)
14:40〜15:30 Ⅲ 小学校学習指導要領と教科書の変遷小委員会委員 黒尾和久:あきる野市前原遺跡調査会、東京学芸大学卒業生
15:30〜16:20 Ⅳ 学校教育と考古資料の活用小委員会委員 谷口 榮:葛飾区郷土と天文の博物館学芸員
 (休憩:10分)
■ パネルディスカッション「歴史教育と考古学」16:30〜18:00
  • 司会:黒尾和久
  • パネラー:西谷 正・岡内三眞・釼持輝久・谷口 榮・木村茂光 (東京学芸大学教授)・坂井俊樹 (東京学芸大学教授)・平田博嗣 (東京学芸大学附属小金井中学校教諭)
  • 会場質問係:小委員会委員(大竹幸恵・佐古和枝・西川修一・松本富雄・山岸良二)
■ 閉会の挨拶18:00 日本考古学協会副会長 木下正史:東京学芸大学名誉教授