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情報交換会報告

 日本考古学協会の2004年度広島大会にあわせて、11月7日(日)の午後2時から広島大学法学部経済学部2階「215演習室」を会場として、協会理事と全国委員28名の参加を得て開催された。
 近藤英夫委員長の挨拶後、事務局や各地からの報告等、活発な情報交換がなされた。

1)事務局報告

〔1〕新潟県中越地震の対策について

 協会理事会において積極的な対応をはかることが了承され、石川(総務)、橋口・大竹・佐古(文化財保護)の理事4名を中心に実態調査を行うこととなった。この件について石川総務担当理事から、当面は情報収集や支援対策の検討等を中心とした活動を行う旨の報告がなされた。

 また、昨年度の宮城県北部地震で民間博物館の考古資料救出ボランティア活動の経験を持つ藤沢委員(宮城県)から、災害地からの何が必要かという声にボランティアとして即時対応できる体制を用意しておく必要があること、文献の側ではネットワークが確立しているが、考古学でもそうしたネットワークの整備が必要との貴重な提言があった。

〔2〕文化庁との懇談会について

 10月18日(月)の午後、文化庁会議室において開催された。地方分権以降の自治体の独自性と文化庁の指導制の課題や市町村合併を巡る埋蔵文化財保護問題のほか、奈良県平城京跡、兵庫県徳川大坂城東六甲採石場跡、和歌山県根来寺遺跡、三重県久留倍遺跡、新潟県軽井川南遺跡群、埼玉県馬場小室山遺跡等の保存問題について協議のなされたことが報告された。

〔3〕その他

 9月25・26日の2日間にわたって千葉市で開催された夏期研修会、協会公式サイトへの保存要望書・声明文等の掲載、保存要望書提出遺跡(埼玉県馬場小室山遺跡、新潟県軽井川南遺跡群)の現状等についても報告された。

 なお、保存要望書等の協会公式サイトへの掲載について近藤委員長から、掲載は今年度から実施していること、関係機関に文書が到着した時点以降での公開となること、回答書についてはメディア等から公開を求められることもあるが、これは文書の発給者である相手側に求めて欲しい旨等の補足説明があり了解された。

2)『第3次埋蔵文化財白書』の刊行について

 橋口副委員長から、現在の編集状況や出版社との契約等について報告がなされ、2005年初頭の刊行予定が述べられた。当初の予定よりその刊行が大きく遅延していることから、一部の原稿については現状にそぐわない部分も生じてきている。こうした項目については補遺を行うこと、埋文委の活動報告は2003年度いっぱいまでを追記することが報告された。また、早期に入稿した原稿の取扱いについて意見交換がなされ、入稿日や追記等の掲載も含め、編集委員会が対応することで了承された。

3)各地からの報告

 【広島県】 藤野委員が作成した資料をもとに、広島県における埋蔵文化財保存の動向と問題点(調査機関の縮小・市町村合併による専門職員の減少・民間調査機関の導入等)について、吉田委員(愛媛県)から報告された。

 【山口県】 古賀委員より、市町村合併による調査負担量の増加、調査体制を巡る諸問題と、古墳・大砲鋳造遺構移築保存の事例が報告された。

 【島根県】 今岡委員より、現在史跡整備事業の行われている松江市田和山遺跡が,来年8月に仮オープンされることや、1960〜70年代の報告書未刊行遺跡の対応と課題(担当者の定年化等)について報告がなされた。

 【関西連絡会】 佐久間(奈良県)・小賀(和歌山県)・岡田(三重県)の各委員より、奈良県平城京跡、兵庫県徳川大坂城東六甲採石場跡、和歌山県根来寺遺跡(大門池)、三重県久留倍遺跡の保存問題や現状について各々報告がなされた。この中で、和歌山県根来寺(大門池)については、町立図書館建設が進捗していることから、再要望書の提出も早急に検討されることとなった。

 また山田委員(京都府)からは、山城・丹後の両郷土資料館において指定管理者制度導入の動きがあることも報告された。出席した各委員からも同様の状況が報告され、各地の博物館や資料館で専門職や予算の削減等、運営の縮小化等の問題が発生していることが判明した。

 【四国連絡会】 吉田(愛媛県)・大久保(香川県)両委員より、香川県鵜ノ部古墳(津田古墳群)・高知県宿毛貝塚・愛媛県番長遺跡の保存問題のほか、市町村合併による担当職員に対する調査量の増加、香川県でも県立歴史博物館などを対象とした指定管理者制度適用を進める動きがある。

 【北海道】 小杉委員より、保存の決定された鷲ノ木5遺跡について、国土交通省と当該自治体である森町の協議事項や現状についての報告がなされた。

 【群馬県】 石塚委員より、太田市成塚1号墳の保存を巡っての経過報告とともに、古墳解体調査の実施状況や今後の対応について報告がなされた。

 【その他】 十菱委員(東京都)より山梨県甲府城と東京都土屋塚古墳の保存問題について、大久保委員(香川県)から陵墓および陵墓参考地と周辺開発の問題について等が報告された。また、七原委員(愛知県)からは、資料報告ではあるが瀬戸市塚原古墳群への保存問題も提示された。

4)まとめ

 今回の情報交換会は、2002年度の奈良大会、2003年度の滋賀大会に次いで3回目の開催となるが、年々参加者も増加しており、埋文委の活動として定着してきた感を受ける。

 近年、埋文委で取り扱う諸問題をみると、今回の各地からの報告でも明らかなように、地方分権化により埋蔵文化財保護行政を巡る自治体ごとの温度差や格差、市町村合併を巡る担当職員の調査量増加、合併前の市町村の保護調整の不均衡から生じる問題点等が随所で噴出してきたように思われる。こうした傾向は今後さらに増加すると考えられ、埋文委としても埋蔵文化財保護を巡る看過できない問題点として情報収集を行って課題を整理し、対応してゆく必要性がある。