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2007.12 埋文委ニュース 第52号

日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会

埋文委・夏期研修会*********2007.10.6・7

 本年度の夏期研修会は10月6・7日の2日間にわたり、山梨県の東海大学セミナーハウスで開催された。今回の研修会は、文化財保護行政の現状と諸課題及び埋蔵文化財保護対策委員会の諸課題について、集中的に協議・検討することが目的である。参加者は埋文委幹事、関西連絡会、四国連絡会、長野・新潟県の全国委員の計13名であった。

※研修の経過

※協議の内容

1.文化財保護行政の現状と諸課題について

①中越地震に対する対応について

 今回の被災に関して様々な問題点が報告された。災害時の文化財保全については、これまでも議論・検討が行われてきたが、今後さらに、文化財の救済・支援ネットワークの確立、特に民間や個人所蔵の文化財の救済についての体制づくりが緊急の課題であることが指摘された。

②埋蔵文化財発掘調査体制等の整備充実に関する調査研究委員会でのヒアリング結果について

 文化庁設置の標記委員会から日本考古学協会に対してヒアリングの要請があり、近藤委員長と石川理事が出席し意見を述べたことが報告された。これに対して、自治体・財団の体制弱体化に伴う調査体制の転換、出土品の保管・管理体制の脆弱化、自治体職員の適切な調査の管理・監督の法規的な問題等が大きな課題であることが指摘された。

③早稲田大学の資格認定制度について

 早稲田大学で計画している埋蔵文化財調査士の育成プログラムの内容についての説明があった。これについて、認定機構の透明性の問題、対象者の問題、調査士養成プログラムの内容、文化財保護協会が行う資格認定との関係などの課題があり、埋蔵文化財保護行政とそれを取り巻く社会の動向と絡めて、制度の構築を考えて欲しいとの意見が出された。

2.埋蔵文化財保護対策委員会の諸課題について

 先に行われた埋文委内規改正により、全国委員は原則各県3名となり、選考準備会を経て選出されることとなった。このため、次期全国委員募集の時期や委員選出の手続き等について検討した。

3.その他

 「高速道路から世界遺産・平城京を守る会事務局会議」の動向、大阪府岸和田城の現地説明会の開催、広島県鞆の浦の埋め立て道路建設等にかかる歴史的景観を含めた保存問題などについて報告された。

(柳戸信吾 記)

埋文委・情報交換会*********2007.10.21

 本年度の日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会情報交換会は、2007年度秋季大会に熊本大学工学部2号館2階221号教室を会場として、全国委員18名の参加を得て開催された。最初に近藤英夫委員長が挨拶し、文化庁で行われている発掘調査体制の検討や近年の財団組織の見直しなど、埋蔵文化財保護行政の変質と問題点について触れ、こうした事態に協会としてどのように向き合うのかといったことについて述べられた。

1.2007年度前半期埋蔵文化財保護対策委員会の活動報告

 司会の松本富雄事務局次長から、今年度前半期の活動として、仙台市与兵衛沼窯跡・岸和田市岸和田古城の保存などを求めた要望書を提出し、このうち与兵衛沼窯跡については仙台市として保存が決定し史跡指定に向けて検討を開始している。また、昨年度末に要望書を提出した高知城北曲輪については、市が保存の方向性を示したことが報告された。

2.昨今の埋蔵文化財保護の課題−埋蔵文化財センター(財団)の民営化や解体と民間調査機関の導入−

 (財)かながわ考古学財団については、3年後を目途に「第3セクター以外の法人化を目指す」とされており、この動向は今後周辺への波及も懸念されることから、埋文委としても要望書等で神奈川県の埋蔵文化財保護行政の考え方に対する問題点を指摘してきた。今回はこれまでの経過、現在の問題点、今後の展望などについて協議を行った。現在、県は法人化に向けた具体的な検討に入っているが、文化財保護行政に対する県の責任という視点を欠落したまま既成の民営化路線へと進んでいくことが無いよう、今後も動向を注視してゆく必要があり、質疑でも、この点をさらに議論することによって問題点がより明確になり、世論にも訴えることができるのではないかといった意見が出された。

3.各地からの報告

①九州における埋蔵文化財保護の状況

 宮崎県:柳沢一男委員、熊本県:美濃口雅朗委員、福岡県:赤司善彦委員から、それぞれの県・市町村における発掘調査体制や職員配置状況などについて報告があった。

②各地からの報告

 まず広島県の藤野次史委員より、福山市鞆の浦の埋め立て道路建設による歴史的景観を含めた保存問題、広島県の調査体制の現状について報告があった。続いて愛媛県の吉田広委員から、四国連絡会の活動状況について、徳島県の岡山真知子委員から、徳島県鳥居記念館の現状について報告があった。そして奈良県の山川均委員から、関西連絡会の活動状況について報告があった。

(峰村 篤 記)