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2009.8

埋文委ニュース 第54号

日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会

埋蔵文化財保護対策委員会*******2009.5.29

 本年度の日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会は、2009年度総会に先立って早稲田大学大隈記念講堂小講堂を会場として、委員47名の参加者を得て開催された。会議の進行は藤沢敦委員(宮城)が担当し、冒頭に近藤英夫委員長が挨拶した後、議長に吉田広・舘野孝各委員、書記に山川均・宇佐美哲也の各委員を選出した。主な議事は以下の通りである。

1.2008年度の埋蔵文化財保護対策委員会活動報告

①2008年度の活動概要報告

 橋口定志事務局長から2008年度埋文委の主な活動に関する報告があった。この中で保存要望書を提出した4件の状況や、文化庁の「あり方」報告に関する埋文委としての考え方が報告された。

②2008年度決算報告と2009年度予算案

 松崎元樹事務局次長から2008年度決算の報告と2009年度予算案の説明があり、若干の質疑応答を行った後、原案のとおり総会にはかることで了承された。

2.2008年度埋蔵文化財保護をとりまく状況の調査結果と諸問題

①アンケート結果の集約

 全国の埋蔵文化財保護対策委員を対象としたアンケート調査は今年で6年目を迎え、今回は36都道府県から回答が寄せられた。各アンケート項目の集計結果とそれに基づいた2008年度の動向について、柳戸信吾・峰村篤両委員から項目ごとに詳細な報告があった。

②アンケート結果をめぐる埋蔵文化財保護の諸問題

 上記の結果を基に、奥野麦生・北澤滋両委員による総括と諸課題の抽出と解説が行われた。さらに、調査における民間導入問題に関し、「あり方」報告との関係についても整理された。これを受けるかたちで、小川勝和氏(流山市教育委員会)より民間発掘会社の調査事例報告があり、民間調査機関の導入に関する多くの重大な問題提起がなされ、活発な議論が交わされた。

3.各地からの報告

①北海道・東北連絡会の報告(藤沢委員)/岩手・宮城内陸地震における文化財被害の状況については、『宮城考古学』第11号に掲載された。平泉の世界遺産登録に関しては、対象遺跡の見直しが指示される。

②関東甲信越静連絡会の報告(北澤滋委員)/1月に連絡会開催、アンケートに沿った協議を実施。

③関西連絡会の報告(佐藤亜聖委員)/3月に民間調査機関に関する勉強会開催。今後、遺跡の保存問題については、平城遷都1300年祭事業や大和北道路建設に関する注意が必要。

④四国連絡会の報告(吉田広委員)/近藤委員長、橋口事務局長を招き高知城に関するシンポジウムや意見交換会などを実施。また、資格制度の問題に関して勉強会を行ったが関心が高まっている。

⑤その他地域からの報告/大竹憲昭委員(長野)より中世居館跡の松本市殿村遺跡、富山直人委員(兵庫)より大阪府枚方市台場遺跡、栗林誠治委員(徳島)より延命遺跡・川西遺跡、江上幹幸委員(沖縄)より米軍基地内遺跡、山田康弘・内田律雄委員(島根)より松江城下武家屋敷跡と出雲国府跡、藤野次史委員(広島)より福山城舟入遺構・鞆の浦、渡辺芳郎委員(鹿児島)より鹿児島城に関する保存問題等がそれぞれ報告された。近年の傾向としては、福山城や高知城の例にみられるように、城館等を中心とする中・近世遺跡 に関する保存や取扱いに係る問題が顕在化しており、今年度のポスターセッションにおいて取り上げたテーマでもある。これに関しては、今後も継続的な取組みが必要との意見が近藤委員長より出された。また、藤野委員からは、城だけではなく城下の近世町屋遺構の調査・保存に関しても、全国的な視野から埋文委で取り組むべきとの提言もあった。