埋蔵文化財保護対策委員会では2011年度栃木大会にあわせて、10月16日(日)午後2時から栃木市のサンプラザ2階会議室において、埋文担当理事、委員ならびに会員19名の参加を得て情報交換会を開催した。前半の進行役は大竹憲昭幹事、後半を馬淵和雄事務局次長が務め、矢島國雄委員長の挨拶の後、東日本大震災に伴う文化財への被害、出土遺物の取扱いをめぐる問題、その他について活発な意見交換が行われた。
齋藤弘委員より、栃木県内における被害状況に関して報告された。国および県指定史跡・考古遺物等への被害は11箇所ほどで、史跡では、飛山城跡の復元建物の一部損壊や侍塚古墳の地割れ、下野薬師寺跡の復元建造物等の一部損壊などが挙げられた。また、墓所や寺院等において墓石や石塔類の倒壊が多く認められ、今後の保全対策が求められた。
稲田健一委員からは、強い揺れに襲われた茨城県ひたちなか市埋蔵文化財調査センターの被災状況に関して、スライドを使用しての報告があった。陳列ケースや棚の展示資料157点のうち破損したものが50点ほどで、被害は比較的少なかった。収蔵庫内においては、コンテナが落下したり、埴輪・石棺等の復元資料が転倒破損したものが見られた。また、施設自体の被害については、駐車場の亀裂が確認され、閉館しての復旧作業が7月まで続けられたことが報告された。さらに、今後の課題として、停電時の防犯対策や復旧に要する人員・経費の確保が挙げられ、地震国における文化財の被災対策に関しての本格的な取組みが要請された。
続いて東北地方の宮城県における被災文化財レスキューの現状に関して、宮城県の藤沢敦委員より概要が報告され、7月末までに一応の目途がついたことや「宮城県被災文化財等保全連絡会議」が10月に発足すること等が述べられた。今後、復興事業に伴う発掘調査事業の展開に関しても、埋文委として十分留意すべき点が指摘された。
奥野麦生委員より、先般、都道府県や政令市を対象に実施した「出土品の取扱いに関する」アンケート調査の概要が報告された。今回は、要綱等の設置や運用状況等、各自治体における出土品の活用基準と廃棄措置の現状把握を目的とした。多くの自治体より多大な協力を得ることができ、その結果については埋文委において集約・検討するなかで、今後の埋蔵文化財保護に活用するための方途を検討することが提案された。
佐藤亜聖委員より関西連絡会の活動報告があり、和歌山県根来寺内の一乗閣移転地に係る保存問題が報告された。8月初旬に埋文委員長名で県に保存要望書を提出したが、その回答では、消極的な方向性が示されたことが報告された。今後は、根来寺全域を対象とする遺跡保存のあり方を摸索していくことが指摘された。その他、滋賀県塩津港遺跡や台風12号に伴う被害状況に関して報告された。