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日考協 第84号
2009年12月12日
文化庁長官  玉井日出夫 様
奈良県知事  荒井 正吾 様
奈良県教育長 冨岡 将人 様
香芝市長   梅田 善久 様
香芝市教育長 中谷  彪 様
一般社団法人日本考古学協会理事会
代表理事・会長  菊池徹夫

埋蔵文化財の適切な取り扱いをもとめる理事会声明

 日本考古学協会は、埋蔵文化財つまり遺跡や遺物の調査・研究を通して人類の歴史と文化の理解を深め、その成果を社会に還元することを使命とする学術団体である。そして遺物は、現在の学術の水準に応じて活用すべき、あるいは将来の学術の進展を展望した上で取り扱うべき学術資料の根幹である。

 そもそも文化財保護法は、「政府及び地方公共団体の任務」として「政府及び地方公共団体は、文化財がわが国の歴史、文化等の正しい理解のため欠くことのできないものであり、且つ、将来の文化の向上発展の基礎をなすものであることを認識し、その保存が適切に行われるように、周到の注意をもつてこの法律の趣旨の徹底に努めなければならない。」(第3条)と明記している。これまで国及び全国の地方公共団体は、この文化財保護法の理念に基いて、調査・保護(保存)・活用という、いわば三位一体の埋蔵文化財保護行政に真摯に取り組んできた。

 ところが、先般、奈良県香芝市が国史跡である尼寺廃寺跡から出土した飛鳥時代の瓦をはじめ、同市内の遺跡から出土したサヌカイト製遺物など20トン以上に及ぶ出土遺物を大量に不法投棄するという、きわめて憂慮すべき事態が起きた。

 こうした事態は地方公共団体が果たすべき文化財保護行政を放棄し、文化財保護法の理念を無にする行為であり、ひいては国民の歴史・文化の理解を妨げる結果を招くものと危惧する。

 国及び地方公共団体におかれては、あらためて文化財保護法の理念を確認し、埋蔵文化財を適正に取り扱い、真摯に文化財保護行政に取り組まれるよう、強く求めるものである。

以上