総会声明の採択について
一般社団法人日本考古学協会第78回総会において、「福島県の原発事故被害区域に所在する文化財等の保全に関する決議案」提示され。別記のとおり総会決議として採択されました。
内閣総理大臣 野田 佳彦 様
総務大臣 川端 達夫 様
経済産業大臣・内閣府特命担当大臣
枝野 幸男 様
復興大臣 平野 達男 様
内閣府特命担当大臣 細野 豪志 様
文化庁長官 近藤 誠一 様
福島県知事 佐藤 雄平 様
福島県教育長 杉 昭重 様
福島県文化財保護審議委員会委員長
岡田 茂弘 様
2011年3月に発生した東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故により、福島県を中心とした広範な地域に深刻な放射能汚染の被害がもたらされたことは大変遺憾なことであります。
特に、有形・無形文化財の適切な保護と維持・活用が突然絶たれた事態は、きわめて深刻な問題を引き起こし、現在も有効な処置がなされないままです。これら文化財は、単なる保護の対象にすぎないのではなく、「土地の記憶」の証言者として、地域社会の真の再生に向けた原点であり、かけがえのない財産です。
日本考古学協会は、本年5月26日、立正大学で開催された第78回総会において、別添書類にありますように、全会員の総意に基づき、文化財の保全に関する具体的かつ有効な対策をとられるよう要望する決議を行いました。貴殿におかれましては、その対策を速やかに講じられるよう要望いたします。
2011年に発生した東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故により、福島県浜通りを中心とする2市6町3村(一部を含む)の地域は、「警戒区域」および「計画的避難区域」に指定され、立ち入りが厳しく制限され、住民の県内外への分散避難を余儀なくされている。
原発事故被害を受けた区域内には、遺跡はもとより、自治体設置の博物館施設や文化財収蔵庫等の収蔵品、さらに民間・個人所蔵品など、歴史・美術・民俗・考古・自然史等の文化財が多数存在する。文化財の大半は、いまなお区域内の劣悪な環境下で放置されている。
広範な地域の文化財の保護と維持が突然断たれる事態は、わが国がかつて経験したことのないものである。2012年に入り福島県教育委員会が相馬市内に資料の仮保管場所を確保したが、充分なものとはいえない。
文化財とは地域の紐帯である。その喪失は、地域社会の真の再生に対する重大な障害となる。いま何よりも求められるのは、危機に瀕し刻一刻と消失に向かっている有形・無形の文化財を、できるだけ多くすみやかに適切な環境下で保護・維持する専門的総合施設を設置することである。さらに、人員配置を含めた体制整備も不可欠である。かかる事態が引き起こされた原因に鑑みれば、国が責任をもって、これらの施策を実施すべきである。福島県は、施設の設置・運営にあたり、必要な役割を果たすべきである。
日本考古学協会は、原子力発電所の事故により、深刻な放射能汚染の影響を受けている福島県内の文化財を保護・保管する総合施設を、福島県内に早期に設置することを望むものである。
以上、日本考古学協会総会の名において、ここに決議する。