広島県の鞆港埋め立て・架橋計画撤回を歓迎する声明

　去る６月22日に多数の報道機関を通じて配信された「広島県の鞆港埋め立て・架橋計画撤回」のニュースは、国民の大きな関心を呼び話題となりました。

　広島県の、住民の生活の利便性向上と景観保全を両立させるという決断は、行政機関の本来担うべき役割を明確に示していると理解でき、日本考古学協会はこれを歓迎いたします。

　日本考古学協会は、広島県福山市鞆の浦が瀬戸内海沿岸の近世港町の面影をいまに伝える貴重な歴史的文化遺産であると同時に国内でも有数の近世港湾遺構群（文化財）であり、且つ中世に遡る港湾遺跡である可能性を持っているという認識から、2008年5月に日本考古学協会第74回総会において協会の総意のもとに『鞆の浦の歴史的景観および港湾文化財の保全・保護を求める声明』を採択しています。また、同年1月には本会の埋蔵文化財保護対策委員会から『鞆の歴史的景観の保全ならびに文化財の保存・活用に関する要望書』を提出するなど、わたしたちはこの間、鞆港の埋め立て・架橋計画をめぐる問題の推移を強い関心を持って注視してまいりました。

　今後は、今回の広島県の英断に基づき、港と町並みが一体となった鞆固有の歴史的景観ならびに港湾文化財を全面的に保全・保護し、活用して、住民の生活と歴史的景観・文化財の保全のバランスが取れた町づくりの方策を速やかに検討・実践していただくことを真摯に願っております。広島県と福山市の協業による鞆の浦における歴史的町づくりの事業が、これからの文化遺産の保全と地域住民の生活向上の融合という点で、全国の同様な問題を抱える地域のモデルケースとなることを期待しております。

　以上、日本考古学協会を代表して、ここに声明いたします。