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日考協 第55号
2014年9月30日

内閣官房長官  菅  義偉 様
復興大臣    竹下  亘 様
文部科学大臣  下村 博文 様
国土交通大臣  太田 昭宏 様
文化庁長官   青柳 正規 様
岩手県知事   達増 拓也 様
宮城県知事   村井 嘉浩 様
福島県知事   佐藤 雄平 様
仙台市長    奥山恵美子 様

一般社団法人日本考古学協会
会長 髙倉 洋彰

会長声明「東日本大震災復興事業に伴う埋蔵文化財関係予算措置の延長要望に関する声明」の送付について

 日頃より本協会の事業推進にあたりご理解、ご支援を賜り誠にありがとうございます。

 さて、本協会では2011年度総会において「東日本大震災対策特別委員会」を設置し、被災された方々の支援をはじめ、被害を受けた文化財及び文化財保存施設の復旧・復興や、復興事業に伴い地元自治体・教育委員会などが行ってきた埋蔵文化財の事前調査と保護行政の円滑な遂行を積極的に支援・協力してまいりました。これらの調査は、国が措置した復興に伴う特別予算である復興交付金によって賄われて参りましたが、その期限が平成27年度末に設定されており、このままでは期限内に全ての復興調査業務を完了できない危惧が生じています。

 そこで、本協会は、関係する予算措置の延長を要望する標記「会長声明」を公表いたしました。
 貴職におかれましては、文化財の復旧・復興及び保存と活用に向けて適切な措置が講じられますよう要望致します。
 本協会はそのための協力は惜しまない所存です。
 なにとぞよろしくお願い申し上げます。




一、別添書類 一通

以上 


東日本大震災復興事業に伴う埋蔵文化財関係予算措置の延長要望に関する声明

 東日本大震災から3年を経過し、各地で復興に向けた取り組みや事業が本格的に行われています。このたび大きな被害を受けた東北の太平洋沿岸は、先史時代以来、多様で個性豊かな文化が展開した地域です。そこには史跡を含む多くの遺跡や文化財が所在しており、復興事業の過程で新たな遺跡調査の必要性が生じ、文化財保護法の趣旨に則って、全国の地方行政体・組織・機関などからの支援のもと、地元自治体・教育委員会などによって、献身的な事前調査が行われています。日本考古学協会は、円滑な復興と埋蔵文化財保護の両立を図るこれらの活動を積極的に支援し、協力して参りました。

 これらの調査は、国が措置した復興に伴う特別予算である復興交付金によって賄われて参りましたが、その期限が平成27年度末に設定されております。しかし、復興事業計画の策定等の遅延から埋蔵文化財調査に要する期間も当初の予定を越えることが確実視されます。このままでは、この期限内に全ての復興調査業務を完了することは困難と言わざるをえません。

 記録保存措置として実施される遺跡調査業務は、現地での発掘業務だけではなく、現地調査終了後に出土遺物と記録類を整理・分析し、遺跡発掘調査報告書として刊行することによって完了となります。これによって発掘調査された遺跡の文化財としての価値や意義を社会にひろく還元し、かつ将来にわたって活用することができるものです。

 今回の大震災は、地域の生命・財産に甚大な被害をもたらしました。そして、被災地域の復興に向けて全力を挙げた努力が各方面で繰り広げられています。埋蔵文化財の発掘調査もその一部であり、東北地方沿岸部の諸地域で育まれた歴史・文化の魅力を再認識する機会ともなり、調査成果は地域の復興に資する重要な資産というべきものです。

 東日本大震災の復興事業は平成27年度末までに終了するのは困難だと予想されます。日本考古学協会は、復興事業を完遂するまで復興事業関係予算措置が延長されることによって、震災からの復興と埋蔵文化財保護の両立が図られるべきであると考え、関係諸機関の理解を求めます。

  2014年9月27日

一般社団法人日本考古学協会
会長 髙倉 洋彰