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日考協 第15号

2004年5月25日

文化庁長官         河合 隼雄様
奈良県知事         柿本 善也様
奈良県教育長        矢和多忠一様
奈良県文化財保護審議委員長 鈴木 嘉吉様
天理市長          南  佳策様
天理市教育長        吉岡 溥 様
有限責任中間法人 日本考古学協会
会長 田村 晃一

 当協会の事業・活動に対し、つねづね御理解と御支援をいただき感謝いたしております。
 さて、当協会では、本年5月22日、千葉大学で開催された第70回総会において、遺跡を守る立場から、別紙の声明を発表いたしましたので、送付させていただきます。
 意のあるところをおくみとりのうえ、よろしくご高配賜りますようお願い申し上げます。

以上

オオヤマト古墳群の国史跡指定を求める声明

 奈良県天理市南部から桜井市にかけての山麓地帯に広がるオオヤマト古墳群は、古墳時代前期の大型前方後円墳を中心に約50基の古墳から構成され、日本列島における初期王権成立過程を解明する上で不可欠な文化遺産である。しかしながら、文化的・学術的意義の大きさに反して、国の史跡に指定されている古墳は、櫛山古墳や黒塚古墳などごくわずかであり、文化財として十分な保存対策がとられ、活用が図られている古墳は数少ない状況である。

 現在、この古墳群の北端部を縦断するかたちで、奈良県が県道バイパス「天理環状線」の建設を進めている。県道の計画路線は、マバカ古墳の墳丘西側をかすめ、ヒエ塚古墳とノムギ古墳の間を貫通するものであり、日本考古学協会はかねてより、古墳群の保存・活用と、道路建設計画の変更を求めてきたところである。

 さらに近年行われた県道計画路線部における発掘調査では、マバカ古墳やノムギ古墳の築造時期、墳形、付属施設などに関わる重要な知見が得られており、両古墳が全国最古級の古墳である可能性が高まるなど、その重要性が再認識されている。

 こうした新知見があるにもかかわらず、道路建設計画は見直されることなく本工事の着工が目前に迫っており、古墳群の保全にとって憂慮すべき事態となっている。現在進められている道路建設は、地域全体の歴史的景観を大きく改変するものであり、特に史跡指定を受けていないこれら古墳の保護・保全を図る上では、大きなマイナス要素となることは必至である。

 以上のことから日本考古学協会は、オオヤマト古墳群の重要性に鑑み、県道天理環状線建設の見直しを求めるとともに、ヒエ塚古墳・ノムギ古墳・マバカ古墳に対する国史跡指定を早急に行うことを、国および奈良県に対して強く求めるものである。

 以上、日本考古学協会総会の名において、ここに声明する。

2004年5月22日
日本考古学協会第70回総会