2004年5月25日
文部科学大臣 河村 建夫様 文化庁長官 河合 隼雄様 国道交通大臣 石原 伸晃様 奈良県知事 柿本 善也様 奈良県教育長 矢和多忠一様 奈良文化財保護審議委員長 鈴木 嘉吉様 国土交通省近畿地方整備局長 谷口 博昭様 国道交通省奈良国道工事事務所長 有野 充朗様 奈良市長 大川 靖則様 奈良市教育長 冷水 毅様 奈良市文化財審議会会長 菅沼 孝之様 独立行政法人文化財研究所 奈良文化財研究所所長 町田 章様 ユネスコ国内委員会委員長 平山 郁夫様 日本イコモス国内委員会委員長 前野まさる様 財団法人ユネスコ・アジア文化センター 文化遺産保護協力事務所所長 牛川 善幸様 高速道路から世界遺産平城京を守る会代表 小井 修一様
当協会の事業・活動に対し、つねづね御理解と御支援をいただき感謝いたしております。
さて、当協会では、本年5月22日、千葉大学で開催された第70回総会において、遺跡を守る立場から、別紙の声明を発表いたしましたので、送付させていただきます。
意のあるところをおくみとりのうえ、よろしくご高配賜りますようお願い申し上げます。
以上
「平城宮跡」は、かつて日本考古学協会が総力をあげ保存を訴え、国もその歴史的価値を認め、国の特別史跡に指定した遺跡である。また、近年にはわが国を代表する文化遺産としてユネスコ世界遺産に登録されている。
この「平城宮跡」とその周辺域に対して、国土交通省は大深度工法を採用した地下トンネル案を含む高速道路・大和北道路の建設案を提示している。この計画に対して日本考古学協会は一貫して計画に懸念を表明し、見直しを求めてきた。提示された道路建設案が、史跡の価値を損ねる恐れがあること、高速道路建設により史跡およびその周辺の歴史的景観が著しく改悪されることなどが、その反対理由である。
ユネスコ世界遺産センターも、日本政府に対し、この高速道路建設計画の経緯とそれが史跡に及ぼす影響を明らかにする報告書の提出を求めていた。これを受けて、本年2月に日本政府は、世界遺産センターに報告書を提出したが、その中で、高速道路計画の撤回は考えていないということが明らかになった。しかしながら、報告書は、高速道路建設による史跡の破損の可能性を指摘した諸点には充分に答えていないものであり、史跡を保全・保護する観点からは充分な評価を与えられないものである。
日本考古学協会は、国特別史跡・世界遺産「平城宮跡」を守り、将来に引き継ぐために、重ねて高速道路・大和北道路の建設計画の見直しを強く求めるものである。
以上、日本考古学協会総会の名においてここに声明する。
2004年5月22日
日本考古学協会第70回総会