2005年5月17日
和歌山県知事 木村良樹 様 和歌山県教育長 小関洋治 様 和歌山県議会議長 小川 武 様
標記の件について、別添書類の如く、当該遺跡の学術上の重要性に鑑み、早急なる保護・保存対策を実施されますよう要望いたします。日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会は、現在、和歌山県が実施しております登録文化財「一乗閣(旧県会議事堂)」の移転計画を見直し、根来寺遺跡の保護・活用と歴史的環境の保護・保全対策を速やかに講ぜられますよう要望いたします。
なお、当件の具体的な措置、対策については6月6日(月)までに、ご回答を下さるようお願いいたします。
一、別添書類 一通
和歌山県知事 木村良樹 様 和歌山県教育長 小関洋治 様 和歌山県議会議長 小川 武 様
和歌山県那賀郡岩出町に所在する根来寺遺跡は、和歌山県のみならず日本を代表する中世遺跡として全国的にも広く周知されており、学術上きわめて重要な内容と意義をもっています。
日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会ではその重要性に鑑み、埋文委第5号(2004年6月7日付)において、大湯屋遺構・坊院遺構の保存・整備と大門池周辺地域の歴史的景観の保全、旧寺域全体の整備・活用等を要望し、埋文委第19号(2004年11月24日付)では、「大門池地区」での町立図書館建設計画の変更と調査委員会の設置による確認調査の見直しとともに、周辺地区の歴史的景観の保全についても再度要望して、その後の動向を多大な関心をもって見守ってまいりました。
この度、登録文化財「一乗閣(旧県会議事堂)」の移転が計画され、移転予定地の確認調査が実施されました。その結果、羽柴秀吉による天正13(1585)年の根来攻めに関連すると思われる焼土層が把握され、その下位には中世の僧坊に関わる地割と遺構・遺物が良好に保存されていることが確認されました。これらは『根来寺伽藍古絵図』に描かれている根来寺旧境内の景観の一部に相当するものと推察されます。こうした調査の結果から、移転予定地が中世根来寺の中心域に位置していることは明らかであるといえます。
この5月9日、新たに和歌山県指定文化財として指定されることが発表された登録文化財「一乗閣(旧県会議事堂)」を現在の境内地内から、より良好な環境の場所に移転する計画は、その保存・活用の面から高く評価される措置と考えられます。しかしながら、現在の移転計画は中世根来寺の遺構群を大きく破壊・改変させるもので、国指定史跡を目指す根来寺遺跡全体の保全・活用にとって、大きなマイナス要素となることは避けられません。
以上のことから、日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会は、根来寺遺跡の重要性に鑑み、「一乗閣移転計画」の見直しを強く求め、以下の通り要望いたします。
1.現在計画されている登録文化財「一乗閣(旧県会議事堂)」の移転計画を見直し、移転予定地 の歴史的景観と遺構・遺物の保全・活用に配慮する等、早急な対策を講じること。
2.登録文化財「一乗閣(旧県会議事堂)」の移転予定地を含む根来寺遺跡の範囲確認調査を計画 的に実施し、旧寺域全体を国民的遺産として整備し、将来にわたりその保護・活用を図ること。
文化庁長官 河合隼雄 様
標記の件について、別添の要望書(写)を事業・調査主体者である和歌山県宛てに送付いたしました。改めて述べるまでもなく、根来寺遺跡が学術上きわめて重要な意味を持つ遺跡であることは、ご承知のことと存じます。
現在、和歌山県では、この中世根来寺寺域内に登録文化財「一乗閣(旧県会議事堂)」の移転を計画しています。しかしながら、移転予定地内の確認調査において、中世根来寺遺跡に関連する極めて重要な遺構・遺物が発見されました。こうした状況を鑑みると、移転計画そのものを早急に見直す必要性があると判断されます。
貴庁といたしましても、和歌山県に対し、移転計画の見直しと埋蔵文化財の保護についての適切な指導を講ずるとともに、将来にわたる当該遺跡の保護・活用と歴史景観の保全対策を図られますよう要望いたします。
一、別添書類 一通
岩出町長 中芝正幸 様 岩出町教育長 數見之男 様
標記の件について、別添の要望書(写)を事業・調査主体者である和歌山県宛てに送付いたしました。根来寺遺跡は、重要な意味を有する地域の文化財であるばかりでなく、日本の中世史を考えるうえでも、きわめて重要な内容を持つ遺跡です。
現在、和歌山県では、この中世根来寺寺域内に登録文化財「一乗閣(旧県会議事堂)」の移転を計画しています。しかしながら、移転予定地内の確認調査において、中世根来寺遺跡に関連する極めて重要な遺構・遺物が発見されました。こうした状況を鑑みると、移転計画そのものを早急に見直す必要性があると判断されます。
貴町といたしましても、この移転予定地の埋蔵文化財保護に向けて適切な進言・協議等の措置を行うとともに、将来にわたる当該遺跡全域の保護・活用対策を図られますよう要望いたします。
一、別添書類 一通
新義真言宗総本山根来寺
座主 別府精宏様
標記の件について、別添の要望書(写)を事業・調査主体者である和歌山県宛てに送付いたしました。根来寺遺跡は、長い歴史を持つ根来寺を考える意味においてのみならず、学術上きわめて重要な内容を持つ遺跡として、かけがえのない文化遺産と考えられます。
現在、和歌山県では、この中世根来寺寺域内に登録文化財「一乗閣(旧県会議事堂)」の移転を計画しています。しかしながら、移転予定地内の確認調査において、中世根来寺遺跡に関連する極めて重要な遺構・遺物が発見されました。こうした状況を鑑みると、移転計画そのものを早急に見直す必要性があると判断されます。
根来寺といたしましても、この移転予定地の埋蔵文化財保護に強い関心を持たれ、その保存に関し適切なご進言・ご提案等を行うとともに、将来にわたる当該遺跡全域の保護・活用対策に向けて、ご尽力下さいますよう要望いたします。
一、別添書類 一通