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埋文委 第4号
2006年11月21日
文化庁長官    近藤信司様
平城遷都1300年記念事業協会長 秋山喜久様
奈良県知事    柿本善也様
奈良県教育長   矢和多 忠一様
奈良市長     藤原 昭様
奈良市教育長   中尾勝二様
有限責任中間法人日本考古学協会
埋蔵文化財保護対策委員会
委員長 近藤英夫

平城遷都1300年記念事業計画に係る要望について

 標記の件について、別添書類の如く、当該遺跡は学術上きわめて重要な内容をもつものでありますので、貴殿において、その保存の対策を速やかに講ぜられることを要望いたします。
 なお、当件の具体的な措置、対策については12月8日(金)までに、ご回答をくださるようお願いいたします。

一、別添書類 一通

以上
埋文委第4号
2006年11月21日
文化庁長官    近藤信司様
平城遷都1300年記念事業協会長 秋山喜久様
奈良県知事    柿本善也様
奈良県教育長   矢和多 忠一様
奈良市長     藤原 昭様
奈良市教育長   中尾勝二様
有限責任中間法人日本考古学協会
埋蔵文化財保護対策委員会
委員長 近藤英夫

平城遷都1300年記念事業計画に係る要望書

 平城遷都1300年記念事業協会では、2010年に平城京遷都1300年目を迎えることを記念して、1年間にわたる大規模な祭典の実施を計画しています。祭典に伴う記念事業の根幹を成す「平城宮跡事業」では、平城宮跡を会場とした「特設会場型事業」として象徴的な記念イベントの開催が計画されており、半年間の開催期間で500万人の参集者が想定されています。「平城宮跡事業」では、復原される第一次大極殿院や朱雀門等の施設を活用した様々なイベントをはじめ、平城宮跡内に天平文化や東西文化の交流をテーマとした10箇所のパビリオン建設などが予定されています。いわば、平城京博覧会ともいうべき事業内容であり、1988年に奈良公園を会場として開催された「なら・シルクロード博」をはるかに凌ぐ一大イベントとなっています。また、来場者に対する会場へのメインアクセスとして、平城宮跡近傍への近鉄奈良線仮設駅の建設も検討されています。

 「平城宮跡事業」のメイン会場となる平城宮跡は、国の特別史跡に指定されており、飛鳥・藤原宮跡とともに、古代国家の成立と律令制社会の実態を解明するうえで、極めて重要な歴史的価値を有する都城遺跡であり、宮跡および京域内の地下には、官衙や邸宅をはじめとする諸遺構や木簡などの豊富な資料が良好に遺されています。また、1998年には京都で開かれたユネスコ世界遺産委員会において「古都奈良の文化財」として世界遺産にも登録され、国際的にも広く認知された人類共有の文化遺産として、高く評価されている遺跡です。

 このような歴史的・文化的価値を保有する貴重な平城宮跡内を中心に、上記のようなイベントが開催されることについて、展示場などの構造物により地下遺構や遺物に対する悪影響が懸念され、現時点では多大な危惧を抱かざるを得ません。国民共有の財産である平城宮跡を活用した文化の交流と普及を理念とする事業であるならば、まず、これら遺跡の保護と歴史的環境の保全が第一に優先されるべきと考えます。

 以上のような、平城宮跡の歴史的・文化的重要性に鑑み、日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会は、下記のとおり要望いたします。

1 平城遷都1300年記念事業に伴い、平城宮跡に建設予定の建物や近傍に建設が検討されている仮設駅などの位置や構造を具体的に明らかにしたうえで、埋蔵文化財保護の観点から、地下遺構や遺物の損壊を防ぐよう万全の対策を講じること。

2 平城宮跡および周辺の歴史的環境や景観・価値を著しく損なうおそれのある、構造物の建設およびイベントの実施は自粛すること。

以上