HOME > 文化財保護 > 要望書


埋文委 第4号
2007年6月5日
文化庁長官  青木  保 様
宮城県知事  村井 嘉浩 様
宮城県教育長 佐々木義昭 様
仙台市長   梅原 克彦 様
仙台市教育長 荒井  崇 様
有限責任中間法人日本考古学協会
埋蔵文化財保護対策委員会
委員長 近藤英夫

与兵衛沼窯跡の保存に関する要望について

 標記の件について、別添書類の如く、当該遺跡は学術上きわめて重要な内容をもつものでありますので、貴殿において、その保存の対策を速やかに講ぜられることを要望いたします。
 なお、当件の具体的な措置、対策については6月22日(金)までに、ご回答をくださるようお願いいたします。

一、別添書類 一通

以上


埋文委 第4号
2007年6月5日
文化庁長官  青木  保 様
宮城県知事  村井 嘉浩 様
宮城県教育長 佐々木義昭 様
仙台市長   梅原 克彦 様
仙台市教育長 荒井  崇 様
有限責任中間法人日本考古学協会
埋蔵文化財保護対策委員会
委員長 近藤英夫

与兵衛沼窯跡の保存に関する要望書

 宮城県仙台市青葉区小松島に所在する与兵衛沼窯跡は、台の原・小田原窯跡群のほぼ中央に位置する窯跡です。台の原・小田原窯跡群は、陸奥国府多賀城・陸奥国分寺を中心に瓦を供給した古代の官窯として著名で、日本窯業史の研究上、極めて重要な意味を持つ窯跡群となっています。

 この与兵衛沼窯跡(新堤地区)に都市計画道路「川内・南小泉線」建設が計画され、2006年6月から仙台市教育委員会により行われてきた事前調査において、古代の半地下式窖窯7基と半地下式ロストル平窯2基が極めて良好な保存状況で発見されております。

 発見された半地下式窖窯群は、一般的な瓦窯と比べて非常に小規模で、数基の窯跡が並列して同時操業したと考えられる極めて特徴的なあり方を示しております。また、半地下式ロストル平窯は、平安京における造瓦技術が直接導入されたもので、869年の大地震に伴う「陸奥国修理府」の経営による瓦窯と考えられております。このなかの3号窯では、燃焼部の壁に文様瓦が埋め込まれ窯体の装飾が行われていること、操業に伴う補修の状況が明瞭に把握できるなどの新たな知見も得られております。このように、与兵衛沼窯跡の調査では数多くの注目される内容が明らかとなっており、東北地方の造瓦体制を考えるうえでも極めて学術的価値が高く、全国的にも注目されております。

 さらに、台の原・小田原地区には、東北地方最古の須恵器窯跡で5世紀中葉頃に操業された大蓮寺窯跡や、藩政時代から操業された堤焼窯の存在も知られております。これらは、東北地方のみならず、我が国の窯業生産の歴史を具体的に示す貴重な文化的遺産として、地域の歴史や技術史を学習する場としての意義も極めて高いものと考えられます。今回の調査で発見された与兵衛沼窯跡を含めた台の原・小田原地区の窯跡群を、国民的文化遺産として将来にわたり有効に保存・整備・活用していくことは、埋蔵文化財保護行政上の責務と考えます。

 以上のことから、日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会は、与兵衛沼窯跡および台の原・小田原地区窯跡群の重要性に鑑み、下記の通り要望いたします。

  1. 与兵衛沼窯跡を現状で保存し、都市計画道路の工法等を検討して、史跡指定に向けた適切な整備・活用を図ること。
  2. 台の原・小田原地区における各時代の窯跡群について、国民的文化遺産として将来にわたる保全・活用を図るべく、有効的な対策・措置を講ずること。
以上