文化庁長官 青木 保 様 大阪府知事 太田 房江 様 大阪府教育長 綛山 哲男 様 岸和田市長 野口 聖 様 岸和田市教育長 永本 定芳 様 岸和田市議会文教民生常任委員長 雪本 清浩 様
標記の件について、別添書類の如く、当該城跡の学術上の重要性に鑑み、早急に市民および研究者が納得できる適切な施策を取られることを要望いたします。日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会は、現在、岸和田市教育委員会が実施しております共同住宅建設に伴う調査によって、岸和田古城跡の重要性はさらに高まったものと判断しております。このうえは、文化財の保護は行政の責務であることを深く認識され、速やかに岸和田古城跡を後世に伝えるうえで、適切かつ充分な対応策を講じられますよう要望するものです。
なお、当件の具体的な対応策については、7月13日(金)までにご回答をくださるようお願いいたします。
一、別添書類 一通
文化庁長官 青木 保 様 大阪府知事 太田 房江 様 大阪府教育長 綛山 哲男 様 岸和田市長 野口 聖 様 岸和田市教育長 永本 定芳 様 岸和田市議会文教民生常任委員長 雪本 清浩 様
大阪府岸和田市野田町に所在する岸和田古城跡は、14世紀に和田高家によって築かれた城郭であると伝承されてきた城跡であります。この伝承の当否についてはともかく、「岸」の地に「和田」氏が築いたことから、現在の「岸和田」という地名もそこに由来するとされています。
岸和田古城伝承地については昨年、城郭の構造を詳細に記した「南郡加守郷岸和田古城図」(大阪歴史博物館蔵)が発見され、本伝承地が近世の早い段階では岸和田古城として認識されていたことが明らかになりました。また、岸和田市教育委員会が実施しているこれまでの発掘調査では、土塁・腰曲輪や堀などの城郭関連遺構群が検出されており、その調査成果からも本伝承地が岸和田古城跡であることが明瞭となっております。
さらに、「南郡加守郷岸和田古城図」の元禄縄張図からは、岸和田古城が15世紀後半を中心とする戦国期の城郭であると判断され、発掘調査による出土遺物が示す時期とも一致しております。旧和泉国ひいては大阪府下においても稀有な戦国期の平地城郭の調査事例として、その学術的価値は極めて高いものと評価できます。
以上のように、本伝承地は考古資料・文献資料の双方から見ても岸和田古城と判断するに足る充分な証拠を備えていると判断されます。要するに、岸和田古城跡は現在の岸和田市の原点ともいうべき大切な存在であり、岸和田市民のアイデンティティにも関わる貴重な歴史遺産と言っても過言ではありません。したがって、岸和田古城跡の全体像を調査によって明らかにすることは、岸和田市にとって将来にわたり極めて重要な意義を持つものと考えられます。
しかしながら、これまでの調査成果については一部で報道されているにとどまり、市民の高い関心に対し十分に対応できていないのが実情です。また、今回の調査が極めて厳しい環境・条件下で実施されていることはたいへんに残念な状況であり、市民や研究者の期待に答えられるだけの調査成果が挙げられるのか危惧を感じざるを得ません。
以上のことから日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会は、今回の調査で明らかとなりつつある岸和田古城跡の重要性から、以下の点を強く要望いたします。