文化庁長官 青木 保 様 島根県知事 溝口善兵衛 様 島根県教育長 藤原義光 様 松江市長 松浦正敬 様 松江市教育長 福島律子 様
標記の件について、別添書類の如く、当該遺跡は学術上きわめて重要な内容をもつものでありますので、貴殿において、その適切な調査の実施についての対策を速やかに講ぜられることを要望いたします。
なお、当件の具体的な措置、対策については緊急を要するため、12月1日(月)までに、ご回答をくださるようお願いいたします。
記
一、別添書類 一通
文化庁長官 青木 保 様 島根県知事 溝口善兵衛 様 島根県教育長 藤原義光 様 松江市長 松浦正敬 様 松江市教育長 福島律子 様
島根県松江市歴史資料館の建設計画に起因する松江城城下武家屋敷遺構群の発掘調査では、近世初期の城下町建設にかかわる、きわめて重要な考古学的成果を挙げつつあります。
日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会は、本遺跡の重要性を認識し、本年9月8日に現地の調査状況を視察し、松江市教育委員会教育長ならびに島根県教育委員会文化財課長に対して遺跡の重要性を訴えるとともに、10月24日付で「松江城城下武家屋敷遺構群の保存・活用についての要望について」を関係諸機関に提出いたしました(この要望書につきましては、市・県より回答をいただきましたこと、申し添えておきます)。
その後、なお発掘調査が継続されていることを聞き及び、11月15日に再度、現地視察を行ないました。この際も、市教育委員会より当委員会の視察に対しまして、格段のご配慮をいただきましたこと、有難く存じております。
さて、先般の現地視察の結果でありますが、家老屋敷跡およびそれに伴う苑池遺構(大池・小池)、上級武家屋敷跡の遺構群などをはじめ、なお、個々の遺構プラン・変遷過程が充分には把握できていないことがみてとれ、遺跡全体の性格や変遷等を明らかにするためには、なお一定の期間を保証していただき、慎重に調査を進める必要があると判断いたしました。しかしながら、聞くところによれば、当該遺跡の調査については11月末を目途に終わる予定ということであります。遺跡の現状をみますと、調査に対しての必ずしも充分な時間が保証されているとは言い難い状況であります。
私どもは、調査に対する松江市のご尽力に対して敬意を表するものでありますが、このまま、発掘調査自体が不十分な状況で中断・終了することになれば、近世武家屋敷遺構群の歴史的な意義を正しく評価することが不可能となり、これまでの市の努力が灰燼に帰すことになりかねません。このような結果は、考古学・歴史学上由々しきことであることはもとより、松江市民にとってもきわめて大きな損失になるものと思われます。
以上のことから、日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会は、本発掘調査において、遺跡の性格や構造を把握するための充分な調査体制と調査期間が確保され、当該遺構群に対する適切な調査が実施されるよう、必要な手段を早急に講じられることを強く要望する次第です。