文化庁長官 近藤誠一 様 京都府知事 山田啓二 様 京都府教育長 田原博明 様 向日市長 久嶋 務 様 向日市教育長 奥野義正 様
標記の件について、別添書類の如く、当該遺跡は学術上きわめて重要な内容をもつものでありますので、貴殿において、その保存の対策を速やかに講ぜられることを要望いたします。
なお、当件の具体的な措置、対策については2月28日(月)までに、ご回答をくださるようお願いいたします。
一、別添書類 一通
文化庁長官 近藤誠一 様 京都府知事 山田啓二 様 京都府教育長 田原博明 様 向日市長 久嶋 務 様 向日市教育長 奥野義正 様
このたび、京都府向日市向陽小学校の校舎建て替えに伴う長岡京跡第481次の発掘調査が行われ、大型3列の柱掘方と石組みの雨落ち溝を有する大規模な複廊式の回廊遺構が見つかりました。これらの遺構については、『續日本紀』の記載にあるところの桓武天皇による長岡京遷都当初の内裏(西宮)にともなう回廊である可能性も指摘されています。これまでの研究成果からみて、このような回廊を有する遺構は、難波宮跡などの宮殿遺跡をはじめとしたごく限られた施設に使用された特殊な回廊形式と考えられ、古代宮都の構造を解明するための重要な考古学的成果として評価できるものです。
今回の発見は、長岡宮第一次内裏(西宮)の所在を解明する上でも、また、長岡京・宮における中枢施設の存在形態を含む全体構造を復元する上においても、その学術的意義は計り知れないものがあります。このような貴重な遺構が消滅することは、国民共有の文化遺産としての長岡宮跡を保存活用してゆく上で大きな損失といえるでしょう。
さらに、長岡京跡関連遺跡および周辺に所在する元稲荷古墳をはじめとする古墳時代前期の古墳群などは、将来的には文化的景観保全の側面からも一体的に保存されるべき、向日市の中核的な歴史的環境であると認識いたします。
貴市が遺跡の調査のみならず、長岡宮跡の大極殿院、朝堂院、第二次内裏などの保存・活用にも大きな努力を払われてきたことは、わが国の歴史や文化財関連諸学会の広く知るところであり、その姿勢は高く評価されております。よって、今回の検出遺構に関しても適切な措置が講ぜられることを希求いたします。
以上のように、長岡宮跡の歴史的・文化的重要性に鑑み、日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会は以下のとおり要望いたします。