文化庁長官 近藤 誠一 様 福岡県知事 麻生 渡 様 福岡県教育長 杉光 誠 様 北九州市長 北橋 健治 様 北九州市教育長 柏木 修 様
標記の件について、別添書類の如く、当該遺跡は学術上きわめて重要な内容をもつものでありますので、貴殿において、その保存の対策を速やかに講ぜられることを要望いたします。
なお、当件の具体的な措置、対策については3月14日(月)までに、ご回答をくださるようお願いいたします。
一、別添書類 一通
文化庁長官 近藤 誠一 様 福岡県知事 麻生 渡 様 福岡県教育長 杉光 誠 様 北九州市長 北橋 健治 様 北九州市教育長 柏木 修 様
城野遺跡は、福岡県北九州市小倉南区に所在する弥生時代中・後期の遺跡であります。平成21年度から、北九州市教育委員会・(財)北九州市芸術文化振興財団埋蔵文化財調査室により調査が実施され、その具体的様相が明らかとなりました。
当該地は、これまで旧城野医療刑務所敷地として管理されてきたため、市街地化が進む中で、地形的に完結した丘陵とそこに展開した集落遺跡が良好な状態で残っています。
調査では、竪穴式住居が展開する生活空間と、弥生時代後期の大型の方形周溝墓1基が発見されており、当時の集落景観を具体的にみることができます。方形周溝墓では、並列する箱式石棺2基が検出されています。石棺は、内部を赤色顔料で鮮やかに塗彩しており、一部には絵画的・呪術的表現も施されており、当時の社会構成を考察する上でも重要な知見を提供しています。また弥生時代後期の竪穴式住居群の中には、玉つくりが行われたことを示す、水晶や碧玉の大量の剥片や未製品、破損品、そして鉄製工具や砥石などが集中的に出土する遺構が発見されています。まとまった玉つくり関係遺物が出土した遺跡としては、北部九州で2例目の発見で、集落内での手工業生産や、玉つくりを通じた広範な地域との交流をここから推し量ることができます。
さらに本遺跡の近隣には、同時期の重住遺跡や、広形銅矛が繰り返し埋納された竪穴式住居がみつかった重留遺跡が存在し、城野遺跡を含めた紫川流域一帯が、弥生時代後期において一つの地域弥生社会を形成したことがみてとれます。そして、これら遺跡群とあわせ考えると、弥生時代から古墳時代への転換の様相を地域社会から解明していく上でも、重要な遺跡であると言うことができます。
このように城野遺跡は、弥生時代後期における北九州市域の弥生社会の様相を知る上で、学術上貴重なものであると言うことができます。
以上のことから、日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会では、城野遺跡の重要性に鑑み、下記の事項を要望いたします。