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埋文委  第5号
2011年12月26日
文化庁長官  近藤 誠一  様
福島県知事  佐藤 雄平  様
福島県教育長 遠藤 俊博  様
相馬市長   立谷 秀清  様
相馬市教育長 山田 耕一郎 様
一般社団法人日本考古学協会
埋蔵文化財保護対策委員会
委員長 矢島國雄

相馬市中村城跡カネボウ跡地調査地点で発見された遺構の保存を求める要望について

 標記の件について、別添書類の如く、当該遺跡は学術上きわめて重要な内容をもつものでありますので、貴殿において、適切な保存の対策が速やかに講じられることを要望いたします。
 なお、当件の具体的な措置、対策については、2012年1月20日(金)までに、ご回答をくださるようお願いいたします。

一、別添書類         一通


以 上



埋文委  第5号
2011年12月26日
文化庁長官  近藤 誠一  様
福島県知事  佐藤 雄平  様
福島県教育長 遠藤 俊博  様
相馬市長   立谷 秀清  様
相馬市教育長 山田 耕一郎 様
一般社団法人日本考古学協会
埋蔵文化財保護対策委員会
委員長 矢島國雄

相馬市中村城跡カネボウ跡地調査地点で発見された遺構の保存を求める要望書

 福島県指定史跡中村城跡は、大永年間(16世紀初め、戦国時代)に中村広重により、初めてこの地に城が築かれたと伝えられ、慶長16年(1611)に相馬利胤による普請が完成して以後、相馬氏の本城として、今日に至るまで残されてきた城郭であることは周知のことと存じます。

 本丸を中心とした中館、西館などの曲輪(くるわ)、堀と土塁を組み合わせ技巧を凝らして構築された枡形、横矢掛などの防御施設は、厳しい軍事的緊張の中にあった戦国期の遺制を残しています。これを囲むように位置する東三の丸、南二の丸、大手門、さらには中堀、北堀、泣面堀、桜堀、桜馬場など、周辺に広範囲に展開する遺構は、利胤による普請をはじめ、近世大名となった相馬氏による造作と考えられます。各時代の特徴が反映されたこれらの遺構は、中世から近世に引き継がれた中村城の学術的な価値を構成する重要な部分であり、一つとして欠くことのできないものです。堀の一部が埋められてしまっているものの、本丸だけでなく付属する曲輪や堀などが良好に残されていることは、全国的にも希有なものであり、この点からも中村城跡の学術的重要性はきわめて高いと言えます。

 さて、カネボウ跡地で実施された調査では、中堀の一部が初めて発掘されました。これにより、堀を護岸する石垣が改修を経ていたことが明らかとなりました。護岸石垣は、上部が破壊された部分があるとは言え、石垣を支えるもっとも重要な部分である基底部は全体で残されており、当時の石垣構築技術を知る上でその重要性は高く、中村城の解明に大きく寄与するものです。

 現在の市民会館建設計画では、工法の一部変更によって、中堀跡の北東コーナー部分の石垣を残す方針と伝えられていますが、北東コーナーから南南東方向に伸びる中堀跡東辺については建設工事で破壊されてしまいます。したがって遺構の保存には、建設計画の見直しが必要です。市民会館建設について相馬市民を対象としたアンケートが行われておりますが、発見された堀跡の重要性についての十分な検討と、重要性の周知がなされない中で実施されたことは遺憾であります。市民会館が、相馬の歴史と文化を伝える遺跡を破壊して建設されるのであれば、本当の意味での文化振興につながるとは言えません。市民会館建設位置の見直しによって、今回発見された中堀を保存することは可能であると考えます。今回発見された中堀跡を完全に保存し、将来の中村城全体の保存と活用へ道筋をつなぐことによって、相馬市における文化活動の拠点としての市民会館の意味は、いっそう大きくなるものと考えます。

 江戸時代の武家文化を伝える伝統行事として名高く、すでに国指定重要無形民俗文化財となっている相馬野馬追が、相馬市のみならず広く国民にとって貴重な文化遺産であることは言を俟ちません。中村城は、まさに相馬野馬追を生み育んできた舞台であり、ともに後世に伝えられる必要があります。東日本大震災の地震、津波に加え、福島第一原子力発電所の事故により、想像を絶する辛苦の只中におられる福島県相馬・双葉地方の住民の方々にとりまして、かつて当地方に居住した人々が結集し、地域の発展の中核となった中村城が、震災からの復興においても、必ずやその精神的支柱たり得ると信じ、またそれを願って止みません。

 以上のように、中村城跡カネボウ跡地調査地点で発見された遺構の重要性に鑑み、以下のとおり要望いたします。

  1. 中村城跡カネボウ跡地における相馬市民会館建設の計画を見直し、検出された遺構の十全なる保存のため、早急な対策を講じること。
  2. 中村城跡で今回発見された中堀を、福島県史跡に追加指定するとともに、国史跡指定へ向けた取り組み等、さらなる史跡の保存・活用を図ること。

以上