標記の件について、別添書類の如く、当該遺跡は学術上きわめて重要な内容をもつものでありますので、貴殿において、適切な保存の対策が速やかに講じられることを要望いたします。
なお、当件の具体的な措置、対策については、2013年1月18日(金)までに、ご回答をくださるようお願いいたします。
青森県五所川原市の五月女萢遺跡は、土砂採取事業にともない、平成22年度から五所川原市教育委員会により発掘調査が行われ、縄文時代後期後葉から晩期の大規模な集団墓地や平安時代の畑跡が、砂丘砂に保護され非常に良好な状態で発見されました。
縄文時代の大型環状土坑墓群は、その多くに盛土(マウンド)が良好な状態で残る全国でも稀有な遺構で、縄文時代の墓地景観を考える上で重要な発見といえます。そのほかにも、貝塚をともなう大規模な捨て場をはじめ、大型掘立柱建物跡、柵木列、道路状遺構、祭祀場と考えられる集石遺構などが発見されており、縄文時代の集落構造が良くわかる遺跡です。捨て場からは土器や土偶をはじめ縄文晩期(亀ヶ岡文化期)の遺物が、層位的に多量に出土しており、その量や内容の豊かさは、目を見張るものがあります。墓からは人骨やベンガラ(赤色顔料)に加え、ヒスイをはじめとする玉類・サメの歯の装飾品・土製耳飾といった死者が身につけていた装身具が多数発見されており、今後それらを分析することで、縄文時代の社会組織の解明が期待できます。
また、白頭山火山灰の直上から発見された大規模な平安時代の畑跡は、古代の蝦夷の生業を知る重要な手がかりとなるものです。
北海道・北東北3県に所在する「北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群」がユネスコの暫定リストに記載され世界遺産登録を目指した活動が行われている現在、特別史跡三内丸山遺跡のある青森県は、縄文に対する市民の関心がとりわけ高い地域といえます。さらに全国的に有名なつがる市亀ヶ岡遺跡とは同時代の遺跡であり、距離も近いことから、両遺跡の保存・活用を連携させることも考えられます。
以上のように、五月女萢遺跡の学術的重要性に鑑み、日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会は、下記のとおり要望いたします。