標記の件について、別添書類の如く、当該遺跡は学術上きわめて重要な内容をもつものでありますので、貴殿において、適切な保存の対策が速やかに講じられることを要望いたします。
なお、当件の具体的な措置、対策については、2013年4月10日(水)までに、ご回答をくださるようお願いいたします。
一、別添書類 一通
茅ヶ崎市下寺尾に所在する西方A遺跡は、古代相模国高座郡衙跡に比定され、隣接地に現存する下寺尾古代寺院跡や津・祭祀遺跡等とともに茅ヶ崎市下寺尾官衙遺跡群を構成する重要な遺跡です。
西方A遺跡では、2002(平成14)年の北陵高校の建て替えに先行する調査で、郡庁や正倉を構成する掘立柱建物群が発見され、その所在が明らかにされています。さらにその後、今日までの10余年間に、茅ヶ崎市教育委員会による下寺尾古代寺院跡の確認調査等も継続的に実施され、古代の地方官衙を構成する様々な遺構群が揃って明確に確認されてきております。さらに、発掘調査の進展をうけて、全国の古代史研究者や考古学者による茅ヶ崎市下寺尾官衙遺跡群に関する研究も着実に積み重ねられてきています。
このような学術的な調査・研究成果の蓄積を基に、下寺尾官衙遺跡群が間もなく国指定史跡となるであろうことを、私たち日本考古学協会も強く期待していたところです。
そのようななか、神奈川県は、県立茅ヶ崎北陵高等学校の現校地内すなわち西方A遺跡内に新校舎を建設する方針が決定したという報道に接しました。しかし、残念ながら、新校舎建設については計画が語られているのに対して、肝心の下寺尾官衙遺跡群の利活用については全く議論がなされておりません。このことは、この10余年間の下寺尾官衙遺跡群の保護・整備・活用に向けて地道な努力を重ねてきた地元茅ヶ崎市や関係諸機関のこれまでの努力を無にするものであり、到底容認することができるものではありません。現地では、官衙域の発見後今日に至るまで、高校は仮設校舎で授業を行うなど、異例の事態が続いています。国指定史跡の実現には、問題の先送りを避けるべきで、県立北陵高校の移転も視野にいれた抜本的な対処をすることが望まれます。
日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会は、埋蔵文化財の保護と活用の観点より、下記のとおり、あらためて要望いたします。