標記の件について、別添書類のごとく、当該遺跡は学術上きわめて重要な意義を有し、杵築市にとってかけがえのない文化的資産であると思われますので、貴殿において適切な保存の対策が速やかに講じられることを要望します。
なお、本件にかかる具体的な措置・対策については2014年2月14日(金)までにご回答いただけるようお願いいたします。
杵築市立杵築中学校改築用地内の発掘調査で発見された大型礎石建物は、江戸時代初期の絵図面「杵築城内外古図」に描かれた御殿長屋と推定され、藩主御殿の一角を掘りあてた例として、全国的にも第一級の資料です。とりわけ、石垣の一角に確認された舟入とみられる遺構は、海上交通と杵築の関わりを具体的に示すものであり、この町の成り立ちを考える上で大きな手掛かりとなります。また、干潟に杭を打ち込んで基礎とした御殿跡の礎石下の工事は建築史上注目に値します。さらには、歴史的にもこの城をめぐる攻防は、黒田如水が一時期入るなど戦国史家の大きな関心を呼ぶところです。
以上のように、第一級の学術的価値をもつ杵築城跡が杵築中学校建築工事によって破壊の危機に瀕していることについて、私ども日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会は深く憂慮し、当該遺跡内での学校建設の中止と遺跡の保存・活用を求めるものです。
言うまでもなく、杵築城は城下町杵築市のシンボルであり、かけがえのない歴史的文化資産です。これを破壊することは、文化財の喪失のみならず、杵築市民の精神的な紐帯を損傷することにつながりかねません。また、城下は大分県内に残る豊臣系城下町として、唯一将来の復元が可能な事例でもあります。城下町と城跡は一体です。これを機会に藩主御殿跡を保存した上で、木付氏時代の城であった台山と城下町とを併せて景観を整備し、さらには現在移築されて商店や住宅になっている御殿の長屋建物を活用すれば、杵築市の新たな文化資源として、市に大いに活気をもたらすことが期待できるでしょう。
これらのことは、今回発見された重要な遺構が保存されてはじめて可能です。近年、全国的にも、遺跡との共生、およびその資源化が地域再生・振興の活路として注目されており、町の中心部にある近世城郭から公共施設等を移転し、城郭遺構を教育・観光資源として活用を図る傾向が顕著になってきています。杵築市においても、藩主御殿跡の保存は市の未来に光明をもたらすはずです。杵築市長におかれましては、将来的に市民にとって何が大切かを見極めた賢明な判断が求められております。
私ども埋蔵文化財保護対策委員会は、杵築城遺跡の重要性に鑑み、以下の措置が取られることをつよく要望します。