埋文委 第5号
2015年7月27日
文化庁長官 青柳 正規 様
沖縄県知事 翁長 雄志 様
沖縄県教育委員会 教育長 諸見里 明 様
那覇市長 城間 幹子 様
那覇市教育委員会 教育長 渡慶次 克彦 様
一般社団法人日本考古学協会
埋蔵文化財保護対策委員会
委員長 矢島國雄
標記の件について、別添書類の如く、当該遺跡は学術上きわめて重要な内容をもつものでありますので、貴殿におかれましては、適切な保存と活用の対策が速やかに講じられることを要望いたします。
なお、当件の具体的な措置、対策については、2015年8月14日(金)までに、当協会埋蔵文化財保護対策委員会委員長宛にご回答を下さるようお願いいたします。
以上
埋文委 第5号
2015年7月27日
文化庁長官 青柳 正規 様
沖縄県知事 翁長 雄志 様
沖縄県教育委員会 教育長 諸見里 明 様
那覇市長 城間 幹子 様
那覇市教育委員会 教育長 渡慶次 克彦 様
一般社団法人日本考古学協会
埋蔵文化財保護対策委員会
委員長 矢島國雄
沖縄史を語る上で、琉球王国世子の邸宅である中城御殿を欠くことはできません。その地で今回発見された遺跡は、『首里古地図』に描かれた御殿施設をきわめて良く残しており、見る者に往時の豪華な景観を彷彿とさせるものです。発掘調査では絵図にない施設の存在も確認され、御殿の空間構成が細部にわたって明らかになりつつあります。また、石積みや段部の構築方法、およびその変遷が判明したことにより、琉球王国の土木・建築技術についての豊かな情報が得られるとともに、世子御殿の歴史的推移を把握することが可能になってきました。さらに下層からはグスク時代の遺構も確認され、この地における中世から近世中城御殿への移行過程が明らかになる可能性もあります。当遺跡は琉球王国についての情報の宝庫なのです。
以上のように、この遺跡が沖縄の歴史を考える上でかけがえのないものであることに疑問の余地はなく、保存措置が講じられるのは当然でありましょう。しかし、遺跡は地中に埋もれていては活かされているといえません。地表面にあってつねに人々の目に触れ、実地に親しむことができて、はじめて活用されたことになるのです。その意味で今回発表された盛土による地中保存では不十分といわざるを得ません。また、盛土の厚さに関わりなく、柱の打設による遺構の損傷は免れないでしょう。
中城御殿は世界遺産のバッファゾーンにあり、2005年版世界遺産条約には「推薦された遺産の直接の背景、重要な風景、遺産とその保護を支えるための重要な機能を持つ他の地域または付属物を含まなければならない」、また「バッファゾーンに加えたいかなる変更も世界遺産委員会の同意を得なければならない」とあります。この条文の理念に沿うならば、本来首里城と一体であるはずの中城御殿を地中に埋もれさせるべきではなく、これを機に史跡指定を視野に入れた適切な整備を行い、琉球王国の誇るべき歴史的景観として市民に提示することが行政の責務と考えます。
以上の諸点に鑑み、日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会は下記のように要望します。
記
以上