日本考古学協会・社会科・歴史教科書等検討委員会では、2006年以降、考古学研究の成果が小・中学校の歴史教育において十分に活用されるよう、その基礎となる歴史教科書の内容や、教科書の内容を大きく左右する学習指導要領の分析を行ってきました。また、その実態と課題についてテーマセッションやポスターセッションの場を通じて公開し、文部科学省をはじめとして具体的な提言と共に改善に向けての要望を伝えてまいりました。
2008年の学習指導要領改訂において、歴史学習のはじまりが「狩猟・採集や農耕の生活」と改められ、小学校の歴史教科書にそれまで記載のなかった縄文時代の記述が復活したことは大きく評価されます。しかし、『小学校学習指導要領解説 社会編』では、その具体的な内容として「貝塚や集落跡などの遺跡、土器などの遺物」について調べるという表記にとどまり、狩猟・採集の生活を営んだ日本列島における人類史のはじまりについての説明がありません。そのため旧石器時代について、本文で明確に位置付けられた教科書はなく、年表でも旧石器時代の名称が記載されていないという状況にあります。
こうした状況を改善するためにも、学習指導要領と教科書の記述との対応関係を客観的に分析し、今年5月に開催された日本考古学協会第80回総会では、「小・中学校段階における歴史学習と考古学の役割」と題しテーマセッション・ポスターセッションを開催いたしました。その目的とするところは、1)日本考古学協会の設立の経緯から、戦後歴史教育における考古学の社会的責任と役割を考え、2)義務教育段階の社会科歴史教科書の分析結果から、歴史教育における現状と課題を整理し、日本考古学協会として取り組むべき課題を明確にすることにありました。そして、2006年に提出した学習指導要領の改訂に対する提言が、2008年の小学校学習指導要領の改訂を見る限り、その目標を達成していないことから、あらためて文部科学省に次期学習指導要領の改訂に対する声明文を提出いたしました。
こうした活動の一環として、本シンポジウムは5月に開催したテーマセッションと同じテーマとなりますが、戦後の義務教育段階における歴史学習の目的と考古学の果たす役割を確認し、教育学の立場からのご意見を伺いながら考えていきたいと思います。そして将来、日本の教育現場の最前線に立つ若い世代の皆さんからも広く意見を求めながら、活発な議論を重ねていきたいと考えております。
総合司会 日高 慎(東京学芸大学准教授) | |
13:00〜13:10 | ■ 開会の挨拶 長谷川 正(東京学芸大学副学長) 髙倉洋彰(日本考古学協会会長) |
---|---|
13:10〜13:15 | ■ 趣旨説明 岡内三眞(日本考古学協会社会科・歴史教科書等検討委員会委員長・早稲田大学名誉教授) |
13:15〜16:05 | ■ 基調報告 |
13:15〜13:55 | T 日本考古学界の歩みと歴史教育 大塚初重(明治大学名誉教授) |
13:55〜14:35 | U 戦後の学習指導要領における歴史教育・社会科教育の変遷 加藤 章(元盛岡大学学長) |
― 休憩:10分 ― | |
14:45〜15:25 | V 社会科歴史教育と『学ぶ側』の視点 坂井俊樹(東京学芸大学教授) |
15:25〜16:05 | W 小・中学校教科書と学習指導要領の分析からみた考古学の役割 大下 明(雲雀丘学園中学校高等学校教諭) |
― 休憩:10分 ― | |
16:15〜18:00 | ■ パネルディスカッション
「小・中学校段階における歴史学習と考古学の役割」
|
18:00〜18:15 | ※質疑・応答 |
〜18:20 | ■ 閉会の挨拶 佐々木和博(社会科・歴史教科書等検討委員会副委員長) |
東京学芸大学 東京都小金井市貫井北町4-1-1
一般社団法人 日本考古学協会
東京都江戸川区平井5-15-5 平井駅前協同ビル4階 電話:03-3618-6608