日本列島には自然災害が多く、平成23年(2011年)の東日本大震災を経験した今日では、災害への備えが日常に不可欠であることを誰も認識すようなった。文化財保護も例外ではない。
平成25年(2013年)、文化庁は文化財部に文化財等災害対策委員会を設置して文化財の救出、修復等の方針の検討を開始し、さらに独立行政法人国文化財機構に文化財防災・救出センター(仮称)(以下「防災・救出センター」という。)を設置する計画を示し、平成26年(2014年)度の文化庁概算要求・要望に掲げた。結果的に平成26年(2014年)度予算では、文化庁からの補助金として、大規模災害時の文化財等の防災・救出のために必要な全国的体制整備等のための事業費が計上されるに留まったものの、国レベルの施策は一歩前進した。
東日本大震災から3年を経た現在、被災文化財の救援活動は、一部の地域を除き、活動は、一部の地域を除き応急的な作業から本格的な修復作業に重心を移しつあり、被災文化財の保護は次の段階に進んでいるといえる。
こうした状況をふまえ、今後の災害を前提とした文化財保護政策の効果的な実現のために、関係する行政機関(文化庁、地方公共団体、博物館・美術館等施設)と研究・高等教育機関(文部科学省、大学)に向けて4項目の提言をおこなうものである。