会議に先立ち、菊池徹夫会長より各委員に対し、委嘱状が交付された。
続いて菊池会長から、図書問題は文化・文化財に関わる本協会らしい重要な問題である。より良い解決方策を見出して頂きたい旨の挨拶があった。
自己紹介の後、設置要綱第3条第2項に基づいて委員長、副委員長の選出が行われ、互選の結果、委員長に泉 拓良委員が選出され、副委員長には委員長により木下正史委員が指名された。
正副委員長は議長席に移動し、泉委員長から、協会や会員の大きな変化に理事会が十分な対応をしきれずに、図書問題として表面化した。この特別委員会では限られた時間の中で、内容的に、本質的なことに係わる部分と、具体的な図書問題についての部分で、会員が納得のいく結論を出し、特別委員会に与えられた使命を果たしていきたい旨の挨拶があり、以下委員長が議長となり議事が進められた。
白井委員から、1975年から市川市立考古博物館に協会図書を寄託してきたが、2000年には満杯となり、それ以降埼玉県所沢市内の倉庫に預けており活用できない状態が続いている。この状況を打開するため、2005年に「施設整備検討小委員会」を設置し、会員からの意見を聴きながら図書の収蔵施設について検討してきた。検討の結果、同小委員会及び理事会は一定の条件付きで一括寄贈を採択し、2007年度総会で所蔵図書を寄贈することが承認された。同年12月には「施設整備検討小委員会」を引き継ぐかたちで「協会図書対応検討小委員会」を立ち上げ、図書の寄贈についての協議を開始した。2008年度総会では寄贈の方針と具体的な進め方を報告した。さらに2009年度総会で「協会所蔵図書寄贈先募集要綱」が承認され、会報167及び協会の公式サイトを通じて募集を開始した。
応募は英国のセインズベリー日本藝術研究所からの1件のみであった。同研究所の内容について「協会図書対応検討小委員会」で様々な面から検討した結果、寄贈するに適当な機関であると判断した。この結果を受けて2010年1月理事会で審議し、セインズベリー日本藝術研究所を寄贈先とすることを決定した。この理事会決定は2010年度総会で報告され、承認された。
しかしながら、この2010年1月の理事会決定は無効とする「日本考古学協会蔵書の海外放出に反対する有志の会」から「臨時総会開催請求書」が提出され、2010年10月16日に臨時総会が開催された。臨時総会で審議した結果、2010年1月の理事会決定は否決され、セインズベリー日本藝術研究所への寄贈は白紙に戻ることになった。理事会は臨時総会での議長提案を受け、2011年度総会で「協会図書に係る特別委員会」を設置することとし、その前段として、臨時総会直後の臨時理事会で同委員会の準備会を立ち上げた。3回にわたる準備会での議論を踏まえ、2011年度総会で「協会図書に係る特別委員会設置要綱」が承認され、この特別委員会が設置されたことまでの経過について、資料に基づき説明があった。
大塚委員から、前回は会員に周知する期間が短く、公募期間も短かった。公的機関は予算編成があり、短期間では無理がある。経過を確認するよりも、協会をどうするのか、蔵書をどうするのかという根本的な問題を議論すべきであり、蔵書に対する認識が足りなかった、との意見があった。これに対し、泉委員長から、経過をご存じない非会員の委員さんもいるので、経過説明は必要であり、今後本委員会でも検討していく旨の発言があった。
安江委員から、市川市立博物館では閲覧できたのか。また、図書の内訳はどうなっているかとの質問があり、泉委員長から、市川市立考古博物館は会員に開放されていたとの回答があった。
白井委員から、事務局において「図書受入簿」を基にデジタル化作業をしている。市川考古博物館から所沢市内の倉庫へ移動した時点での総冊数は 56,420点である。現時点で6割までのデジタル化作業が済んでいる。内訳は発掘報告書が約60%で、残り40%が論文集、雑誌、同人誌等であるが、数的な内訳まで把握していないので本特別委員会でやらなければならない、との説明があった。
泉委員長から、協会に寄贈された図書は「会報」、公式サイトに掲載されている。公的機関ではあまり所蔵されていない同人誌があるのが特徴ではないか、との補足があった。
大塚委員から、市町村教育委員会の中には国、県等に寄贈しない所もある。協会は揃っているのではないか。協会で持っていない図書があれば収集する必要があるのではないか、との意見が出された。
木下副委員長から、国立国会図書館が昭和23年創立だと本協会と同じ時期にあたる。この時期以降のものは国会図書館に入っているのではないか。ただ、同人誌は入っていないのではないか。奈良文化財研究所の蔵書は多いが古い方については不足があり完璧ではない。それらと補完関係にあるのが協会図書ではないか、との発言があった。
安江委員から、国会図書館は地方自治体の出す報告書や一般に流通している書籍は入ってくるが、地方の同人誌分野は弱い、との発言があった。
五味委員から、協会では現在図書は受け入れているのか、との質問があり、泉委員長から、この問題は次の協議1の所で取り上げる旨の説明があった。
泉委員長から、3回開催された準備会の報告は議事録をもって代えることとしたことが報告された。次に、臨時総会で理事会案が否決された内容が確認された。まず、募集要綱の制定は総会の承認を得ているので、一部変更が必要だが有効である。一括寄贈についても同様であり、これまで小委員会が総会に報告し、承認を得た事項は生きている。前提は変えられないということではなく、委員長個人としては、これを前提としたい。否決されたのは英国セインズベリー日本藝術研究所へ寄贈することである。
白井委員から、図書受け入れ停止の文書について以下の説明があった。受け入れ停止は2009年度総会で募集要綱案を協議した際、議論の末決まった。これは、今後協会は図書を受け入れないが、寄贈先には引き続き送付してもらうという趣旨であった。文書の送付は、総会決議の再確認ということで、大量の送付が予想される年度初めを目前にした3月に行った。これに対し泉委員長から、図書の受け入れ停止の文書については第2回目の準備会議事録に載っているので、後で確認して頂きたい。また、この件については改めて検討したいとの補足があった。
大塚委員から、文書を送付した各機関に対して、協会としては図書問題について現在検討中であるから、問題解決が図られるまで図書を保管・確保してもらう措置を改めて依頼したらどうか、という意見があった。
泉委員長からこのことは記録に残し、送付する文書の内容について事務局で検討して欲しいとの指示があった。
五味委員からは、最近、報告書の発行部数が厳しくなっているので、図書の保管を依頼するには文書は必要であるとの意見があった。また、木下副委員長から、バックナンバー等の間をあけないようにしてもらう必要がある、との発言があった。
大塚委員から、部会構成を検討する前に、蔵書の保存活用の方策を議論するにあたっての全般的な認識を各委員が共有することが前提ではないか。たとえば受け入れ先の問題についても、大部分の発掘報告書は地方自治体に設置された埋文センターのものであり、この発掘を国の関係機関が指導等で深く関与してきた事実に鑑み、少なくともこれらの関係機関と本委員会が相手方の認識を確認しておく必要があり、この権限は本委員会が有しているのではないか。そのようにしないと、私どもの任務の具体的な提案ができない。また、目録作成はすべての前提であるが、今後、協会として蔵書を保持する可能性が有るか否かを含めて検討すべきである、との意見があった。これに対し泉委員長から、考古学協会は研究団体なので、国の機関とは一線を画すべきではないか、まずは協会として何をすべきかを決めるのが先ではないかとの、発言があった。
さらに大塚委員から、原則を曲げるのではなく、原点に戻して議論してはどうか。一括寄贈ではなく、分割ということをこの特別委員会で提案することも可能ではないか。外部の情報も柔軟に取り入れて判断することも重要である、との意見が出された。
泉委員長からは、一括寄贈を前提として始める訳ではないが、総会で決めているので重い事項である。ただ、この特別委員会で協議の結果、分割の方がよいとなれば総会で経過を説明し、了承を求めることになる。個々の問題は部会で検討し、重要案件は全体会議で協議したい、との発言があった。
木下副委員長から、設置要綱第1条によると「所蔵する図書に関し、保存・管理及び寄贈問題を含め云々」とある。この文言は今後協会が保存・管理していく、と読める。それに対し部会では「主として寄贈について検討する」とある。早い時期に原点に戻って議論する必要がある、との意見があった。
松岡委員から、一括寄贈を前提に議論するのではないのか、との必ずしも一括寄贈を前提に議論するわけではないことを確認する意味合いの質問があり、 泉委員長から一括寄贈は総会で決まっているが、検討することは可能である。総会と異なる結論が出た場合は、総会での説明、承認が必要となる、との回答があった。
続いて泉委員長から、今日の午後理事会があり、この特別委員会について報告しなければならない。構成委員10名、正副委員長については報告できる。部会の構成案等についてはどうか。との問いかけがあった。
白井理事から、部会についてはこの特別委員会が動き始めてから内容を詰めてはどうか。今日の委員会報告は、今後どういう課題について検討していくか、という点に絞りたいとの意見があった。
安江委員から、最初の1、2回は全体で議論し、その上で必要な部会を設けるべきではないか、との意見が出された。
泉委員長が、経緯は尊重しながらも、今後は本質的な課題を検討することとし、具体的な検討課題は次回に詰めることを提案し、了承された。
泉委員長から、第3回準備会議事録にあるように、準備会では2012年5月までに一括寄贈か否か等の基本方針を定め、併せて募集要綱も作成し、募集を開始する。そして2013年5月総会で寄贈先を決定するというスケジュールの可否の確認があり、了承を得た。
続いて泉委員長から、次回の会議日程について諮ったところ、8月末〜9月末にかけての土曜日、日曜日、祝日を前提に、事務局が全委員の都合を伺うことになった。
橋口委員から、この特別委員会の公開、非公開についてはどうするのかとの発言があり、泉委員長から、準備会では委員の人選等があったので非公開とした。ただし、議事録については全委員に回覧し、最終決定したものを会報、公式サイトに掲載した。今回も具体的な機関名などを議論することになるので、準備会と同様の扱いで如何かとの発言があり、了承された。
また、特別委員会が設置されたことについて、文部科学省記者クラブに広報することになった。