会長挨拶

会長再任あいさつ

 

 

 

  

 

一般社団法人日本考古学協会  会長 辻 秀人

 

 2022年5月に開催されました理事会において再度会長に選出されました。再任にあたり、ご挨拶を申し上げます。

 前理事会では、新型コロナ感染症の蔓延に伴い、学会活動が大きく制約されてしまいました。2020年度は総会はかろうじて開催し、新たな理事会はなんとか成立しましたが、総会後の研究発表は中止、金沢で予定されていた大会は延期を余儀なくされました。学界の根幹となる研究活動が停滞してしまったことはまことに残念な事でした。また、理事会、各種委員会も対面で行うことができず、リモートで会議を開き、活動をなんとか維持することに努力をいたしました。2021年度は専修大学実行委員会、金沢大会実行委員会のご努力を得て、総会、研究発表、大会をリモートの形ではありましたが、開催することができました。研究活動をなんとか維持できたかなと思っております。また、個人情報保護法に従いながら2021年度版会員名簿を作成、配布いたしました。法の規制により、ご許可いただけなかった会員の情報は掲載出来ませんでしたが、全体の7割程度の会員情報を掲載いたしました。学会活動の基盤となる研究活動、情報交換のため、新たな会員名簿をご活用いただければと思っています。さらに、高輪築堤の保存問題をめぐって会長声明、コメントを発出してまいりました。2020~2021年度にかけては、コロナ禍の厳しい環境の中、なんとか学会活動を維持することが出来たと考えています。

 さて、今期、2022~2023年度は、昨期よりも学会活動を活発化したいと思っています。コロナの状況にもよりますが、2022年度秋には九州大学で対面での大会開催が検討されています。また、対面方式に合わせて、リモートを活用し、多くの人々が研究会、大会に参加出来るよう工夫をしたいと思っています。さらに、今期は、研究成果を社会の皆様によりわかりやすい形でお伝えすることに重点を置きたいと思っています。そのために、昨年度に開始しました「カフェ de 考古学」を隔月で開催するなど工夫を重ねていきます。考古学は社会の理解の上に成り立っていますので、このような研究成果を社会に還元していく試みを継続していきたいと思います。遺跡の保護をめぐっては埋蔵文化財保護対策委員会が日常的に活発な活動を展開しています。現在高輪築堤の保存が大きな問題になっています。イコモスからヘリテージ・アラートが出されたように、高輪築堤は明治の日本が近代国家形成に向けて鉄道を作り上げた大事業の結果残されたもので、世界遺産にも匹敵する貴重な遺構です。残念ながら1~4区は一部国指定史跡となったほかは調査の後に壊されてしまいましたが、1~4区同様に保存状態が良好と見られる5・6区を今後どうするのかが大きな問題となっています。協会としては今後も粘り強く、全面的な保存を求め、町並みと共存する保存活用を求めていきたいと思います。

 日本考古学協会は会員数4千人にせまる日本最大の考古学会です。考古学研究を活発化し、研究成果を社会に還元し、社会的な責務を果たしていく必要があります。大きな学会を動かしていくことは容易ではありませんが、会員の皆様とともに、一生懸命運営していきたいと思います。

 会員の皆様に一層のご支援、ご協力をお願いして、会長再任のご挨拶といたします。