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一般社団法人日本考古学協会第76回(2010年度)総会報告

 日本考古学協会第76回(2010年度)総会は、5月22日(土)・23日(日)の2日間にわたり、国士舘大学世田谷キャンパスにおいて開催された。総会前日の21日に理事会と埋蔵文化財保護対策委員会、22日は中央図書館多目的ホールにて第76回総会と公開講演会、34号館B棟地階食堂にて懇親会が開かれた。翌23日には、34号館B棟にて、研究発表(口頭発表38件、特別発表3セッション、ポスターセッション31件)と図書交換会が行われた。22・23日両日の参加者は、会員1,046名・一般524名の計1,570名に上る。なお、22日13時からは、臨時理事会が開催されている。

 総会の冒頭、菊池徹夫会長から開会挨拶があり、一般社団法人としての最初の2年間の活動の総括と課題が述べられた。会長挨拶の後、実行委員長の須田勉・国士舘大学教授から、歓迎のご挨拶があった。続いて、総会の成立につき司会から報告があった後、議長団・書記団を選出して議事に入った。議事は、2009年度事業報告を始めとする各種の活動報告から行われたが、その中でいくつか選んで報告する。まず新入会員の資格審査報告がなされ、73名の入会が承認された。次に本年は理事選挙の年にあたることから、関俊彦・選挙管理委員長から次期理事候補者の選挙結果報告がなされ、承認された。引き続き行われた各種の報告議題については速やかに進行したが、協会図書対応検討小委員会報告については、昨年度総会に引き続き、多くの意見が出された。2007年度総会での方針決定を受けて2008年度以降検討を進め、2009年度総会で承認された協会図書寄贈先募集要綱に則って、2009年度に募集を行った結果、唯一の正式応募者がセインズベリー日本藝術研究所(イギリス)であったこと、応募要件を満たしていると理事会において判断されたので、寄贈先として当該研究所に決したことが報告され、承認された。いただいた意見の多くは遠方の受贈機関における利用の便宜の確保を中心としていたので、今後の交渉の中でそれらのご意見を反映するべく努力することが確認された。この件については、別項で詳しく説明したい。

 以上の報告事項が承認され、続いて審議が行われた。2010年度事業計画はおおむね昨年同様であるが、新たに日本考古学協会賞を制定し実施することが提案され、承認された。予算案の審議・承認の後、いささか異例のことではあるが、理事の辞任と選任議案が提案された。一般社団法人に移行した昨年度に制定された日本考古学協会定款第20条で「理事の任期は、法律の定めるところによる」と規定されており、上位規定である「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」第六十六条で理事の任期は2年と定められている。一方、現理事の任期は選任された当時の中間法人法が適用されるため、5月27日までということになり、このままでは本総会において新会長選任の承認を得ることができない。なぜならば、法第九十条第3項によって、新会長にあたる新代表理事は新理事会で理事の中から選定されなければならないと規定されているからである。従って、法の定めに従うためには、現理事が辞任し直ちに新理事の選任を承認していただく必要があった。審議の結果、現理事の辞任と新理事の選任が承認された。

 新理事が選任されたので、監事出席のもと、13時から臨時の新理事会が開催され、菊池徹夫現会長・理事が引き続き代表理事(会長)に選出された。続けて菊池会長が田中良之・須田勉両理事を副会長に指名し、承認され、水村事務局長が常務理事に選出された。

 午後の講演会に先立って、13時45分から臨時理事会において菊池理事が新会長に選任されたことが報告され、直ちに菊池新会長による就任挨拶が行われた。新理事会の主要な課題として、アカデミーとしての社会的役割を意識した協会活動の強化が展望される内容であった。講演会の冒頭で、菊池徹夫会長の開会挨拶と、国士舘大学・朝倉正昭学長による暖かい歓迎の挨拶があった。公開講演会の講師は、伊藤博幸・奥州市埋蔵文化財調査センター所長と平川南・国立歴史民俗博物館長のお二人で、翌22日の研究発表第6会場で開催されるテーマ・セッション「古代東国の地域間交流−寺院・官衙出土瓦の伝播と交流−」に関連した講演が行われた。「鎮守府胆沢城−ヒト・モノの交流の舞台−」と題した伊藤先生の講演では、出土したモノを通して、胆沢城が政治的・軍事的拠点であるとともに、さまざまなモノとヒトが行き交う交易の結節点でもあったことを、豊富なスライドを通して丁寧に説明された。また平川先生の「新『古代東国論』」では、文献資料だけではなく出土資料を駆使して、〈ヤマト朝廷〉によって課された古代東国の軍事的負担や技術革新が、やがて東国の自立を促す契機となったとする壮大な新説が開陳され、今後の研究に大きな刺激を与えるものとなろう。

 講演会終了後場所を移し、恒例の懇親会が開催された。食べ切れないほどの食事に舌鼓を打ちながら、多くの会員と実行委員会諸氏により懇談が行われた。

 翌23日の研究発表は6つの会場で行われ、第1〜4会場で一般研究発表、第5会場で協会セッション、第6会場でテーマ・セッションが開催された。当日雨天だったにもかかわらずどの会場も盛況であり、活発な質疑が行われた。第5会場の協会セッションでは、昨年に引き続き、午前中は研究環境検討委員会のセッションが行われ、最近課題となっている「資格制度」「埋蔵文化財保護体制」「博物館」の3つのテーマについて議論が行われた。午後の社会科・歴史教科書等検討委員会のセッションでは、外部講師を加えたミニシンポジウム「子ども達に旧石器・縄文時代をどう伝えるか」が開催され、指導要領の改訂問題や教育現場の現状報告が行われ、今後解決すべき課題について熱心な討論が行われた。なお理事会では、研究発表に関する改革を検討しており、来年度総会から実施する。

 ポスターセッションは会場の都合で離れた棟に設定されていたが、昼食休憩後の1時間が説明時間として確保されていたので、熱心な会員が多数詰めかけて議論の花を咲かせていた。今年度の図書交換会は、口頭発表会場に近く、まとまって設置されたためかとりわけ盛況であった。

 以上のように、本総会は多数の参加者を得て成功裡に終了した。これは国士舘大学と須田勉・実行委員長を始めとする大会実行委員会諸氏の周到な準備と熱意の賜物である。改めて深く御礼申し上げたい。

(総務担当理事 佐藤宏之)

一般社団法人日本考古学協会第76回(2010年度)総会(抄録)

 午前10時、佐藤宏之理事の司会で開会し、冒頭、前年度の物故会員22名に対して黙祷を捧げた。その後、菊池徹夫会長、須田勉実行委員長から挨拶があった。続いて司会から、現在(総会当日)の会員数が4,200名で、本日の出席者106名、委任状預かり分1,442名、合計1,548名となり、この総会が成立する旨の報告があった。

 次に、議長団及び書記団の選出に移り、議長団として斎藤稔会員、渡辺務会員、大嶌正之会員、書記団として土本麻子会員、藏持美弥子会員が選出された。 議長団、書記団は登壇し、自己紹介の後議事に入った。

【報告】

1.2009年度事業報告

 髙倉洋彰副会長から、2009年度の総会・大会、公開講座、公開講演会などの主な事業に加え、一般社団法人に移行したことにより、法に基づき監事も理事会の構成員になったこと等の説明があった。また、埋蔵文化財の不適切な扱いがあったことについて、文化庁長官、当該県・市の首長及び教育長に対し理事会声明を送付したこと等の報告があった。

2.入会資格審査結果報告及び承認

 田中和彦入会資格審査委員長から、今回は73名の入会申し込みがあり、1回目の審査で67名が資格基準を満たし、6名が保留となったこと。2回目の再審査で保留者6名が資格を満たしていると判断され、2010年度は73名が資格該当者となったことが報告された。報告を受け、議長から73名の入会について承認を求めたところ、拍手をもって承認された。その後、新入会員は登壇し、入会者を代表して東京都の平野寛之新会員から挨拶があった。

 また、田中委員長から個人情報に係る問題として、入会資格該当者の住所を全て出すのはどうか、という意見があったとの報告があった。

3.理事選挙結果報告

 関俊彦理事選挙管理委員長から、配付資料に基づいて説明があり、今回は28名が立候補し、理事定数である23名の当選者が報告された。

 また、理事選挙に関しては毎回投票率が20%台と低いことから、従来の推薦文のみではなく、立候補者の抱負、研究歴等を本人に書いていただいたこと、さらに顔写真の掲載などを委員会からお願いしたとの説明があった。また、今回は4,246名の有権者のうち、有効投票者は1,298名で、投票率は30.6%であったとの報告があった。

4.陵墓報告

 福永伸哉理事から、2009年度の主な活動として宮内庁との陵墓懇談、陵墓保全整備工事に伴う事前調査・工事立会の見学、陵墓立入り観察などに加え、限定公開の開始30周年を記念して2回のシンポジウムが開催されたこと。また、各事業の推進にあたり、3つの実行委員会を立ち上げ、16学協会の全てがいずれかに所属し、役割を分担する新体制となったこと。さらに本協会がそれら各実行委員会のまとめ役となったこと等が報告された。

5.研究環境検討委員会

 土生田純之理事から、埋蔵文化財の資格問題について総会時の早稲田大学及び7月に関西大学で研究発表を行ったこと。また、地方分権改革推進委員会の第3次勧告にある博物館法の改正に関し、博物館の存在意義、根幹に関わる問題であると考え、内閣総理大臣を始め関係の長に委員長名で抗議文書を送付したこと。また、当初計画に無かったが上記問題の重要性に鑑み、3月に急きょ資格問題、博物館法をテーマとしたシンポジウムを仙台市内において開催したこと等が報告された。

6.国際交流委員会報告

 菊池誠一理事から、海外への情報発信を目的に「発掘された日本列島展」から8遺跡を選択して英訳し、公式サイトへ掲載したこと。また、関連3学会と合同講演会を開催したこと。さらに、アジア諸国の教科書を対象に、考古学成果の記載状況について分析を開始したこと等が報告された。

7.社会科・歴史教科書等検討委員会報告

 黒尾和久理事から、小学校の教科書改訂に伴う本委員会の検討結果について、総会・大会においてポスターセッションを行ったこと。岩宿博物館での教科書展示に際し、委員会から講師を派遣したこと。この総会期間中に日本旧石器学会と共同して「子ども達に旧石器・縄文時代をどう伝えるか」というテーマでシンポジウム・ポスターセッションを開催することが報告された。

8.協会図書対応検討小委員会報告

 白井久美子理事から、1975年以降市川市立市川考古博物館に保管していた所蔵図書が2000年には満杯となり、以後埼玉県所沢市内の倉庫に梱包されたまま保管されてきたこと。所蔵図書の今後の措置に関し、協会では2007年度から小委員会を設置して検討を重ね、一括寄贈するとの方針を定めると共に、総会や会報を通じて会員の意見を聴取してきたこと。第75回総会において「協会所蔵図書寄贈先募集要綱」の案を提示し、2009年度中に寄贈先を決定するということで、総会の承認を得たこと。承認に基づき、会報167号、公式サイト等で寄贈先を募集したところ、問い合せは6件あったが、締め切り日までに申請があったのはセインズベリー日本藝術研究所1件のみであったこと。同研究所の申請内容を小委員会、総務会で協議した結果、受理する方針を固め、その後、1月理事会で審議の結果、同研究所が採択されたこと。採択を受け、2月26日同研究所のサイモン・ケイナー副所長、平野図書館司書が来日し、覚書の内容をはじめ、今後の進め方について協議したこと。一方、市川市立市川考古博物館とも図書の移動について協議し、3月22日・23日の両日同館保管の協会図書を所沢市内の倉庫に移動したこと。また、セインズベリー日本藝術研究所が継続して図書を収集していく方策や会員が閲覧を希望した場合の対応等については、今後さらに協議を重ねていくこと等が報告された。

9.日本学術会議報告

 木下尚子会員(学術会議会員)から、考古学関係は史学委員会に属し、現在10名が6つの分科会に所属して活動していること。その中の文化財の保護と活用に関する分科会において、埋蔵文化財保護行政に関する具体的問題と文化財保護法の理念的な問題について検討したこと。史学委員会からの報告として、国際感覚を持った若手研究者の養成など3点についてまとめたこと。また、地方分権推進委員会の勧告により、博物館制度の根幹に関わる大きな問題が出てきたので、学術会議としても考古学協会と連絡をとりながら、有効な活動を展開したいこと等が報告された。

10.埋蔵文化財保護対策委員会報告

 松本富雄理事から、約120名の委員が委員会、幹事会、研修会等で意見交換しながら活動していること。2009年度は要望書を2件提出したが、1件は「出土遺物に関わる適切な取扱いを求める声明」で、出土遺物を埋めてしまったことに対する抗議と、出土遺物を今後いかに保存・活用していくかについて提言したこと。2件目は「郡山城五軒屋敷における観光バス駐車場建設に関する要望書」で、城郭に限らず近世遺跡全体の問題を内包しており、今後そのあり方について文化庁と協議していく必要があること。また、委員が現地を視察する中で地元の人と意見交換しながら保存に結びつける事例もあること等が報告された。

11.2009年度決算報告並びに監査報告

 下條信行理事から、資料に基づき説明があり、事業経費については40,148円の剰余金が生じ、次年度に繰越すことが報告された。

 続いて金子直行監事から、監査の結果、適法且つ適正に処理されている旨報告があった。さらに金子監事から、会費未収金の回収率をあげること。会員数が横ばい、減少傾向にある中、協会として今後の方向性について検討する必要があるとの指摘があった。

 以上で報告が終わり、2の入会資格審査報告並びに承認を除く各報告について質問を受けた。

 千葉県の植木武会員から、協会所蔵図書の寄贈問題について、なぜ海外の機関に寄贈なのか。日本情報考古学会がバックアップし、ITライブラリーを作りたいので、海外への寄贈を再考できないか、との質問があった。

 白井理事から、事前に問い合せのあった国内の機関では雑誌、論文集は受け入れるが、発掘報告書は不要とのことで一括寄贈の条件とあわないこと。また、IT化については、セインズベリー日本藝術研究所でIT化を図ることを明言している、との回答があった。

 さらに植木会員から、IT化の技術が日本にあるのだから、金はかかるが日本でやるべき、との再質問があった。

 白井理事から、発掘調査報告書は調査機関や各自治体で保管しており、考古学協会の所蔵図書を使わなくともできるのではないか、と回答があった。

 続いて、協会図書対応検討小委員会の委員である埼玉県の高橋一夫会員から、日本の機関で受け手がないという現実に、日本の底の浅さを感じた。IT化については以前埼玉県で試みたことがあるが、サーバーの関係でうまくいかなかった。また、常時専門の職員がいなくてはいけないので、協会では難しい。各自治体で電子データで出している報告書を、どういう形で集約するかを協会で考えたらどうか、との意見があった。

 同じく、同小委員会の委員である東京都の石井則孝会員から、図書の問題はかなり古い段階から検討されている。図書専用施設の建設も検討されたことがあった。その後2007年に所蔵図書に関する小委員会が発足し、検討した結果、一括して受け入れてくれる機関を公募することになった。国内の研究機関・大学に呼びかけたが、結局応募が無く、英国行きとなった。考古学協会というのは研究者の集まりで財産をもつ団体ではない、この辺を承知して議論したほうがよい、との発言があった。

 次に神奈川県の馬淵和雄会員から、図書は協会の財産、資産なので処分にあたっては総会で議決すべきで、理事会の議決は無効である。議論の前提に図書が外国に行くことが入っていない。報告書を毎年協会に寄贈するのは、日本の考古学図書館の建設を念頭に置いているからである。これを決めた理事、小委員会の委員は罷免されても仕方がない、という意見があった。

 続いて福岡県の溝口孝司会員から、日本の報告書が欧州に移るということは、諸外国の人が日本の報告書に接する機会を増やし、供給できる場所が確保できることである。今後、協会寄贈図書を通して日本考古学を研究しようとする方々のチャンスが世界的に広がり、国際化にも大きな力となって考古学協会としても喜ぶべきことではないかと考える、という意見があった。

 次に埼玉県の鈴木正博会員から、IT化の問題は技術の提供ではなく、運用していくことが難しい。また、セインズベリー日本藝術研究所で担当者が替わる、環境が変わる、組織そのものが廃止になるといった場合どうするのか、という質問があった。

 続いて福島県の廣田吉三郎会員から、現在、契約の上ではどういう状況にあるのか。日本の研究者がいつ頃から、どのように利用できるのか、利用について要望は出せるのかとの質問があった。

 これまでの質問について白井理事から、2007年度の総会で一括寄贈が承認されており、それを受けて作業を進めている。また、募集要綱では寄贈先について国内外とうたっていない。国内に限ると海外に門戸を閉ざすことになる。また、1月の理事会でセインズベリー日本藝術研究所に決まった後、2月18日付けで「決定通知書」を出している。現在は「覚書」を取り交わしている段階である。今後どのようにして皆さんの利用に供するかを協議していく。相手方に予期しない事態が生じた場合は、双方で別途協議することになっている、との回答があった。

 埼玉県の鈴木敏弘会員から、これまで会員が利用するという前提で寄贈してきたが、今後も一冊づつ寄贈しなければならないのか、という質問があった。

 続いて埼玉県の橋口定志会員から、募集要綱を読むと、応募資格があるのは国内の機関であり、図書は国内に置くと読める。2010年1月の理事会議事録で突然セインズベリー日本藝術研究所が出てくる。経過説明が不足である。また、昨年7月の大阪読売の記事に、海外を含め受け入れ先を探すとあったが、これは既に海外に寄贈ということが決まっていて、会員に知らせなかったのではないか。さらに、海外への寄贈は重要事項なので審議事項としてやり直してほしい、という質問があった。

 これに対し白井理事は、寄贈先を国内に限るということを定めていない、と解釈してほしい。大阪読売の記事は総会後であり募集を開始するという話が広まった時期で、応募の問い合せはあるかという取材に対し、海外の機関も含めていくつかある、という事実を伝えたものである。また、募集を10月末日で締め切った後、小委員会、総務会で検討し、直近の1月理事会で協議して決定したこと。さらに、昨年の総会で募集要綱を承認いただいたという前提で進めてきたこと。ここで過去の決定を差し戻すことは総会の決議を否定することになるので、できない。また、契約の内容については、会員の意見を聞きながら最大限活用できるよう、時間をかけて協議していきたい。また、要綱により協会は図書の寄贈は受けられないので、ご協力いただける機関に寄贈をお願いすることになる、との回答があった。

 東京都の関俊彦会員から、セインズベリー日本藝術研究所がどういう研究所なのか、また今後契約を結ぶにしても会員が納得する契約書を交わす、ということを説明した方がよい、という意見があった。

 続いて山梨県の萩原三雄会員から、昨年の総会では要綱は承認したが、寄贈先を決定したわけではない。これは、定款に定める総会決議事項ではないか、との質問があった。

 この質問に対し石川理事から、要綱にある図書寄贈に関しては3月末日完了を実行し、報告している。応募が1件のみという事実を受け止めなければならない。図書は財産だということだが、法的には財産とみなしていない。取り消した場合、相手から法的措置を取られたら対抗できない。今後は、情報の海外発信を含め活用の仕方を検討する必要があると回答があった。

 千葉県の植木武会員から、今覚書の段階ならば破棄すればよい。法的措置が取られたらペナルティーを払えばよい。セインズベリー日本藝術研究所はインターネットに乗せるようだが、それを私たちにやらせて欲しい、という要望があった。

 ここで議長から、昨年の総会で承認され、方向性が出た。国内で受け入れる機関が無かったという結果もある。現在本契約ではないということなので、今後、日本の研究者が利用・活用しやすい状況を作っていくということでいかがでしょう、という発言があった。

 白井理事から、現在は覚書を取り交わしている段階で、正式な契約手続きを進めている。会員の意見を生かせる方向で契約を結びたいと回答があった。

 再び議長から、国内外の人たちが活用できる状況をいかに作っていくかが課題となる。国内にあった時以上に活用の利便性を図っていくかがポイントとなる。新しい執行部でこれらを進めていただくことでどうかという発言があった。

 さらに千葉県の植木武会員から、どこかに100㎡の土地を5年間用意してくれれば、機械の費用はかかるが、インターネットにのせる作業ができる。との要望があった。

 議長から、まだ覚書の段階であり正式な契約は結んでいない。今後会員の意見、要望が入る余地はある。このことをご理解いただいた上で質疑を打ち切りたいとの発言があり、報告のあった1及び3から11までの事業報告並びに決算報告、監査報告について諮ったところ、拍手をもって承認された。

【審議】

1.2010年度事業計画案

 髙倉副会長から、総会・大会の日程、内容。5年ぶりに会員名簿を作成すること。各委員会の活動内容。日本考古学協会賞を制定すること等が資料に沿って説明があった。

 同計画案について神奈川県の三瓶祐司会員から、図書については協会図書対応検討小委員会などで、より良い運用等について充分検討いただきたい、との意見があった。

 次に、埼玉県の橋口定志会員から、図書の問題について来年度はどの事業の中で、誰が中心になってやっていくのか明記すべき。総会での報告は委員長でなく担当総務が行うべき。不十分な情報でなく、積極的に出して欲しいとの意見があった。

 これに対し髙倉副会長から、小委員会の日程は不定期なので明記できなかった。小委員会のメンバーは会長、副会長1人、理事1人、常務理事と会員から3人が加わっているとの回答があった。

 続いて橋口定志会員から、個々の名前でなく責任を持つ組織はどこなのかという質問があり、髙倉副会長は、会長・副会長が小委員会の構成員なので、責任ははっきりしていると回答した。

 埼玉県の高橋一夫会員から、年報を廃止して、それにかかる労力・予算等を会報や機関誌等、他の事業に振り分けたらどうか。時代に合ったスクラップ&ビルドを行うべき、との提言があった。

 これに対し髙倉副委員長から、年報の現状については満足している訳ではなく、理事会で議論している。引き続き理事会で検討すると回答があった。

 東京都の石井則孝会員から、日本考古学協会賞の記念品はどのような物を考えているのか。また、受賞資格が協会員以外でも可とした理由を伺いたいとの質問に対し、髙倉副会長から、記念品は予算の関係で心ばかりのものを考えている。実質的に名誉だけである。また受賞資格を会員外も可としたのは、対象論文を機関誌以外の雑誌掲載のものを含めたことや団体・共著で出版した場合会員以外の方もいることを想定している。また、将来、協会の公益性を問われることも考慮し、会員外にも開放しておこうと考えたとの回答があった 。

 その後、2010年度の事業計画について諮ったところ、拍手をもって承認された。

2.2010年度予算案

 下條理事から資料に基づき説明があり、2010年度は総額46,575,148円の予算をもって事業を展開するとの説明があった。また、会費は前納制となっているが未納者が相変わらず多い。昨年度も事務局や理事から働きかけたが最終的に9名を除籍としたとの説明があった。その後直ちに2010年度予算案について諮ったところ、拍手をもって承認された。

3.理事の辞任について

 石川理事から、現在の理事は、就任時の中間法人時代の定款の任期規定の適用を受けるので、任期が5月27日までとなる。すると、法により本日の理事選任は予選ということになる。しかし、理事と異なり会長は予選できない。したがって、本日は新会長を選定できないことになってしまう。そこで司法書士と相談した結果、法的に問題なく解決するには、本日この場で現理事全員が辞任し、新たな理事を選任することで問題解決を図りたい。ここに常務理事を含め理事全員から辞任届が提出されているのでご承認願いたいとの説明があった。直ちに諮ったところ拍手をもって承認された。

4.理事の選任について

 続いて石川理事から、現理事の辞任に伴い、関委員長から報告のあった新たな理事を本日付けで選任したいとの説明があった。

 説明に対し埼玉県の橋口定志会員から、総会の日程によって今後も同様なことがあるのか、と質問があり、石川理事から、法的に遺漏の無いよう進めていきたいと回答があった。以上で質疑を打ち切り、諮ったところ拍手をもって承認された。

 ここで議長から、前回、2008年度の理事選挙までは、総会に出席した会員による投票で会長を選出したが、一般社団法人となった結果、法により会長は理事会で選出することになったことが説明されるとともに、午後1時45分にその結果が報告されるとの説明があった。

5.その他

 議長から、追加して審議すべき事項の有無について発言があった。

 東京都の五十嵐彰会員から、諸先輩方が戦時期に収集した大陸の考古資料についてその入手経路、現状、実態等について調査する必要があるのではないか。調査を行うについては、協会内に状況調査の専門委員会を設置し、併せて問題解決の声明、提言を行うべきであるとの提言があった。

 これに対し石川理事から、重要な意見であり理事会で検討したいとの回答があった。

 これをもって議事はすべて終了した。(午後1時05分)

会長再任のご挨拶:会長 菊池徹夫

2009年度事業報告

1.総会・大会・公開講座等

  • (1)総会2009年5月30・31日於:早稲田大学
  • (2)大会2009年10月17・18・19日於:東北芸術工科大学
  • (3)公開講座2009年11月1日於:ビッグハート出雲
  • (4)公開講演会 2010年3月14日於:東京大学

2.理事会等

  • (1)理事会 2009年4月25日(協会事務所,以下特に記載のないものは同じ)、5月29日(早稲田大学)、8月22日、10月16日(東北芸術工科大学)、2010年1月23日、3月27日
  • (2)監査 2010年5月8日(2009年度事業及び会計監査)

3.年報・会報・機関誌

  • (1)年報 第60号(2007年度版)2009年5月20日発行、第61号(2008年度版)編集
  • (2)会報 No.167(2009年8月1日発行)、No.168(2009年12月1日発行)、No.169(2010年3月1日発行)
  • (3)機関誌
  •  『日本考古学』第27号 2009年5月20日発行
  •  『日本考古学』第28号 2009年10月10日発行
  •  『日本考古学』第29号 編集
  • (4)公式サイトの更新

4.組織

  • (1)入会資格審査委員会(審査委員会:2009年12月5日,2010年1月23日)
  • (2)理事選挙(選挙管理委員会:2009年11月7日、2010年2月9日、4月3日)

5.陵墓報告

  • (1)懇談(2009年7月13日)
  • (2)見学(2009年7月3日、12月4日、12月18日、2010年1月22日、2月11日)
  • (3)陵墓の立入り(2010年2月18日)
  • (4)シンポジウム(2009年5月17日、11月23日)

6.研究環境検討委員会報告

7.国際交流委員会報告

8.社会科・歴史教科書等検討委員会報告

9.協会図書対応検討小委員会報告

10.日本学術会議報告

11.埋蔵文化財保護対策委員会報告

  • (1)委員会等 委員会:2009年5月29日(早稲田大学)/幹事会:2009年4月18日(協会事務所、以下特に記載のないものは同じ)、5月16日,6月27日,7月18日,9月19日,11月15日、11月21日、12月23日、2010年1月16日、2月20日、3月20日/夏期研修会:10月3・4日(東海大学セミナーハウス)/情報交換会:10月18日(東北芸術工科大学)
  • (2)要望書等
    • 〈要望書提出2件〉
    • 2009年12月10日 埋文委第8号「出土遺物に関わる適切な取扱いを求める声明」
    •    11月27日 埋文委第9号「郡山城五軒屋敷における観光バス駐車場建設に関する要望書」
    • 〈回答1件〉
    • 2009年12月11日 大郡教生第230号 大和郡山市長 上田 清 大和郡山市教育長 赤井繁夫「郡山城五軒屋敷における観光バス駐車場建設に関する要望について(回答)」

2010年度事業計画

1.総会・大会・公開講座

  • (1)総会 2010年5月22・23日 於:国士舘大学
  • (2)大会 2010年10月16・17日 於:明石市生涯学習センター、播磨町中央公民館、兵庫県立考古博物館
  • (3)公開講座 2010年12月4日 於:壱岐市立一支国博物館

2.理事会等

  • (1)理事会 年間7回(2010年4月・5月・6月・9月,10月、2011年1月・3月)
  • (2)総務会 随時
  • (3)監 査

3.年報・会報・機関誌

  • (1)年 報 第61号(2008年度版)2010年5月発行、第62号(2009年度版)編集
  • (2)会 報 No.170・No.171・No.172
  • (3)機関誌 『日本考古学』第29号 2010年5月発行
  •    『日本考古学』第30号 2010年10月発行
  •    『日本考古学』第31号 編集
  • (4)公式サイトの更新

4.組 織

  • (1)入会資格審査
  • (2)名簿発行

5.陵墓問題

6.研究環境検討委員会

7.国際交流委員会

8.社会科・歴史教科書等検討委員会

9.日本学術会議

10.埋蔵文化財保護対策委員会

  • (1)委員会 委員会(2010年5月21日)・幹事会毎月1回・夏期研修会1回・情報交換会1回
  • (2)要望書提出

11.日本考古学協会賞の制定