日本考古学協会2003年度大会は、2003年10月25日(土)・26日(日)・27日(火)の3日間にわたり、滋賀県立大学で開催された。
第1日目の午前中には、臨時総会が開催された。臨時総会では、有限責任中間法人日本考古学協会定款案、および法人化に伴う出資金返還請求権の譲渡、財産引き継ぎについて審議され、これらが承認されるとともに、有限責任中間法人日本考古学協会の設立が決議された。また、委員定数を変更する委員選挙規定の一部改正案が承認された。また、倫理綱領の基本的な構成についての説明があり、これを『会報』150号に掲載して、会員の意見を聴取することになった。
以下、大会の詳細はこちら
おはようございます。本日は万障繰り合わせてご参集いただき、ありがとうございます。長年の懸案であった協会の法人化は一昨年の「中間法人法」の制定を機に急速な進展を見るにいたりました。これまで協会が追求して来た社団法人と、新たな中間法人のどちらが協会にとって適合的かということについては、3月1日付の会報148号で縷々説明したところで、皆様にご理解をいただけたことと存じます。
従来追求して来た社団法人においては、代議員制の導入とか、公益事業の優先とか、協会の民主的伝統を損う恐れのある無理な改変が、文部科学省の行政指導によって求められるのに対し、中間法人では協会が自主的に定款を立案し、登記することができ、これまでの協会の運営方法をスムースに継承することが出来ます。そういうわけで今回の定款の策定にあたっては、従来の協会の規約を出来るだけ生かす方向で努力しました。このことが結果として法人化の作業のスピードアップを可能として今日を迎えたのだと思います。
定款案の作成にあたっては古くからの協会員であり、ベテランの弁護士であられる岡野先生の絶大なご尽力をいただきました。また多忙な公務の中で集中的に取り組んでいただいた小委員会の方々、素案に対して積極的に意見を寄せていただいた会員の方々に厚く御礼申し上げます。
それではよろしくご審議をお願いいたします。
(会長 甘粕 健)12時45分、司会の山田昌久委員から、出席者91名、委任状792通(計883名)で総会成立要件の会員数の8分の1(479名)以上を満たしていることが報告され、臨時総会が開会された。開催にあたって甘粕健会長の挨拶があり、その後、議長団(鈴木重治・松浦俊和・用田政晴)と書記(佐古和枝・吉水眞彦)が選出され、議事の進行にあたった。
石井委員から、春の総会後、法人化問題について会員から寄せられた質問や意見を参考にしながら作成された有限責任中間法人日本考古学協会定款(案)および法人化に伴う処理について(〔1〕現日本考古学協会の出資金返還請求権について、〔2〕現日本考古学協会の財産引き継ぎについて)以下の説明があった。
有限責任中間法人化については、昨年の秋に打合せを行い、1月から月1回のペースで小委員会を開催して審議を続けてきた。定款(案)は、春の総会段階では数字が明記されていなかった第5条の基金総額に「金24,377,110円」が記された。この金額については、9月30日時点の金額で、法人が成立するのは早くても1ヶ月先なので、その間の預貯金の金利によって変動する可能性がある。さらに現物出資目録の出版物在庫欄にも金額を記したが、同じく9月30日時点の金額であり、書籍の追加販売等により法人化までに変動する可能性がある。第12条に記載された「倫理綱領」は、会報No.149に提示しており、本臨時総会の議事にもなっているものである。また、第28条3を新たに加えた。なお、定款(案)については、今後、表現や字句の修正は委員会に任せていただきたい。
続けて岡野隆男法人化小委員会委員から、法人化に伴う処理について以下の説明があった。
中間法人法には、出資者という制度がある。新法人には現日本考古学協会が出資するのだが、出資者は、いずれ出資金を返還してもらう権利がある。この出資金を最終的にどう処理するかが問題となる。現在の法律には明確な規定がない。現協会は任意団体、つまり人の集まりにすぎないので、人がいなくなると、出資金の返還はどうなるのか。今後、有限責任中間法人日本考古学協会が解散をした場合、出資金の扱いが明確でないと困る。したがって、本法人がなくなった時には、本法人を引き継ぐべき団体に出資金返還の権利を譲渡する、ということで承認してもらいたい。
法人化に伴い、協会財産は出資という形で引き継がれ、新団体の財産となる。定款(案)第5・6条にある金額について、現協会の当年度の運営資金、細かな動産類、未納会費請求の権利、広告収入未納請求の権利などについては、別途処理を行わなくてはならないことを承認してもらいたい。
質問(アメリカ・野上丈助会員):なぜ日本考古学協会を有限責任中間法人にせねばならぬのか。
回答(石井委員・岡野法人化小委員会委員):法人化問題は、1966年から始まっており、協会の総意をもって前々委員会や前委員会が継続して努力してきた。現況では、2,400万円という協会基金が個人名で預貯金せざるを得ないことには、さまざまな問題がある。幸いなことに、これまでそうした事故が生じることなくきているが、万一これが個人所有とみなされた場合、その人が亡くなった場合どうなるのか。あるいはペイオフの問題などがある。法人となれば、日本考古学協会が法律上の責任者となるので、そうした問題が解決できる。社団法人は、公益的活動を目的とする団体のためのものである。学会は内部会員の交流、情報交換を旨とするものなので、本来社団法人にはそぐわないものなのだが、従来はそれしかなかったために、社団法人化をめざすしかなかった。しかし、昨年4月に有限責任中間法人の法律ができた。社団法人は認可団体なので、定款内容や予算、人事など多岐にわたり行政が関与する。それは学会として、ふさわしくない。有限責任中間法人は、定款をつくれば成立するものであり、行政は関与しない。学会としては有限責任中間法人の方がふさわしいものである。
質問(野上丈助会員):税金がかかるのではないか。
回答(岡野法人化小委員会委員):法人税はかかる。
質問(野上丈助会員):「現物出資目録」の(2)保証金に「敷引き」はないのか。
回答(石井委員):精査する。
※その後、この件につき賃貸借契約書を確認したところ、敷引きは設定されておらず、保証金は全額返還されることを確認。
質問(岡山県・富岡直人会員):定款の第3条について。将来的に新法人がどういう形になっていくのか、いろいろ考えがあろうが、悲願としては独自にもちたいという願望があると思う。博物館は社会教育の管轄なので、(4)および(7)に「保護」「教育」「研究」などの字句を加えておけば、より適切な活動ができるのではないか。
回答(鈴木重治議長):字句の修正は委員会に委任していただくが、積極的な提案をとりあげてもらいたいと思う。
質問(埼玉・鈴木敏弘会員):協会員は自動的に新法人の会員になるのか。
回答(石井委員・岡野法人化小委員会委員):会員が正会員となる。根拠は、定款(案)附則第2項である。日付は記載していないが、新法人が成立する日(登記の日)を入れたいと考えている。
この後、有限責任中間法人日本考古学協会の設立についての決議が圧倒的多数の挙手をもって承認された。
小笠原委員から、委員選挙規定の一部改正について以下の説明が行われた。従来、日本考古学協会の委員は25人体制でやってきたが、社団法人では理事が20人までということなので、この4年間は20人体制となった。しかし、20人ではかなりの無理があり2つの職掌を兼務するなど委員の負担が大きかった。今後、新法人となれば、〔1〕寄付金・基金で新たな事業展開、〔2〕国際交流化をめざす活動、〔3〕会計、と新たに3つの事業が増えることになる。これらのことから、元の25人体制に戻し、できるだけ円滑な運営をはかりたい。法人化した段階で委員の選挙方法等について時間をかけて考えるべきであり、さらに、これまでは女性の委員がいなかったが、女性委員も加えるべきである。しかし、来年の5月に選出される委員に関しては、従来の選出規定に基づいて行いたい。
この説明に対しては、とくに質問もなく、挙手により承認された。
1.委員選挙規定の一部を、次ぎのように改正する。
4条の「委員定数を20名とし−略−および総得票数の上位12名まで」を、「委員定数を25名とし−略−および各地区の最高得票者8名を除く総得票数の上位17名まで」に改める。
提案理由
社団法人では委員定数が20名に規定されていたため、4年前に定数25名から20名に改正したが、有限責任中間法人では定款の定めるところによるので、元の25名に戻し、活動の活発化をはかる。
委員選挙規定新旧対照表
改正案 | 現行 |
4 委員定数を25名とし、立候補、あるいは推薦の有無にかかわりなく、投票の結果、北海道・東北・関東・東京・中部・近畿・中四国・九州の各地区の最高得票者、および各地区の最高得票者8名を除く総得票数の上位17位までの会員をもって委員とする。ただし、辞退者が出た場合は、順次くりあげる。 | 4 委員定数を20名とし、立候補、あるいは推薦の有無にかかわりなく、投票の結果、北海道・東北・関東・東京・中部・近畿・中四国・九州の各地区の最高得票者、および総得票数の上位12位までの会員をもって委員とする。ただし、辞退者が出た場合は、順次くりあげる。 |
谷川委員から、倫理綱領については5月24日の第69回総会で基本的な考え方は承認され、会報No.149にも掲載して8月末を締切として会員からの意見を募った。それをふまえて9・10月の委員会で審議を重ねて、本日「倫理綱領の基本的な構成について」の案を提出した。この作成にあたっては、他の学会の倫理綱領や日本学術会議学術と社会常置委員会による「科学における不正行為とその防止について」(2003年6月)などを参考にした。引き続き、会員の意見を聞いて倫理綱領案文を作成したい。
この件については、とくに質問や意見はなかったが、今後も来年の1月末まで、引き続き意見を受付けるということである。
去る10月25日に開催された臨時総会において、「倫理綱領の基本的な構成について」を提示しました。その作成にあたっては、EAAなどの外国の考古学会の倫理綱領や国内の他の学会の倫理綱領、日本学術会議学術と社会常置委員会報告『科学における不正行為とその防止について』(2003.6)などを参考にしました。
「倫理綱領の基本的な構成について」は、倫理綱領の具体的な文案の前提となるものですが、あくまでたたき台として委員会が作成したものです。つきましては、この「倫理綱領の基本的な構成について」に対するご意見を日本考古学協会事務局宛に文書もしくはFAXでお寄せ下さい。なお、期間は2004年1月末日までといたします。
倫理綱領の基本的な構成について
1.これまでの経緯
・2003年5月の第69回総会において、「倫理綱領制定に関する基本的な考え方」を示し、『会報』149号にもこれを掲載して、会員の意見を聴取することにした。
・その後、9・10月の委員会での議論を経て、ここでは倫理綱領の基本的な構成について示し、『会報』にも掲載して、さらに会員の意見をうかがうことにしたい。
2.倫理綱領の2つの柱
・会員に関わる2つの側面、すなわち「社会人として」の側面と「研究者として」の側面を2つの柱にして、倫理綱領を策定することにしたい。
3.「社会人として」の基本的な構成
4.「研究者として」の基本的な構成
14時10分、臨時総会議事がすべて終了した。