長崎県庁舎跡地に所在する遺跡の取り扱いに関する要望書
埋文委 第11号
2019年3月7日
文化庁長官 宮 田 亮 平 様
長崎県知事 中 村 法 道 様
長崎県教育委員会教育長 池 松 誠 二 様
長崎市長 田 上 富 久 様
長崎市議会議長 五 輪 清 隆 様
長崎市教育委員会教育長 橋 田 慶 信 様
一般社団法人日本考古学協会
埋蔵文化財保護対策委員会
委員長 藤 沢 敦
長崎県庁舎跡地に所在する遺跡の取り扱いに関する要望について
標記の件について、別添書類の如く、当該地は日本歴史にかかわる学術上極めて重要な内容をもつものでありますので、貴殿におかれましては、包蔵された埋蔵文化財について、適切な取り扱いをしていただくことを要望いたします。
なお、まことに恐縮ですが、当件の具体的な措置、対策については2019年3月29日(金)までに、当協会埋蔵文化財保護対策委員会委員長宛にご回答を下さるようお願いいたします。
記
一、別添書類 一通
以上
埋文委 第11号
2019年3月7日
文化庁長官 宮 田 亮 平 様
長崎県知事 中 村 法 道 様
長崎県教育委員会教育長 池 松 誠 二 様
長崎市長 田 上 富 久 様
長崎市議会議長 五 輪 清 隆 様
長崎市教育委員会教育長 橋 田 慶 信 様
一般社団法人日本考古学協会
埋蔵文化財保護対策委員会
委員長 藤 沢 敦
長崎県庁舎跡地に所在する遺跡の取り扱いに関する要望書
長崎県庁舎跡地は、イエズス会本部のあった「岬の教会と関連施設」、その後に置かれた「長崎奉行所西役所」、そして幕末期日本にあって近代化をいち早く取り入れた「海軍伝習所」や「医学伝習所」、「活字版摺立所」など、日本の歴史上重要な施設がおかれていた場所であります。イエズス会本部と岬の教会は、キリスト教日本布教の原点とされる施設であり、先に世
界遺産に登録された「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の原点ともなるところです。長崎奉行所は近世における日本の外交窓口として機能しており、幕府遠国奉行の首座の地位にありました。国指定史跡である「出島和蘭商館跡」は長崎奉行所の真下の海中を埋め立てて築かれ、長崎奉行所が管理しました。幕末には「日英和親条約」もここで結ばれています。これは古代の「大宰府」と外国人接待所の「鴻臚館」との関係とも共通しており、日本歴史の上において極めて重要な施設であります。今回、長崎県は長崎県庁舎跡地の整備開発計画を公表し、2020年の着工をめざして三つの機能をもつ施設を建設するとされております。先年行われた範囲確認調査は、県庁が機能していた段階に行われたもので、制約の多いきわめて限定的な調査であり、県庁舎跡地の遺跡の遺存状況を把握するには、まったく不十分であると言わざるを得ません。特に、県庁舎の中庭区域は、大きな破壊を受けていない可能性が高いと考えられます。さらに、
県庁舎が建設された1950・60年代には、建物基礎による掘削工事は部分的であった場合が多く、基礎工事で破壊されていない遺構が、現庁舎の建物の下に残されている可能性があります。そしてまた、周囲の石垣の様相からは、時期が新しくなるとともに地盤のかさ上げがなされていたと推定され、古い時期の遺構は、県庁舎建物基礎による掘削より深い場所に残されている可能性もあります。したがって県庁舎建物が置かれていた西地区を含めた確認調査を綿密に行い、開発計画を再構築すべきだと考えます。以上のことから、一般社団法人日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会は、以下のような措置が講じられることを強く要望します。
記
1.長崎県庁舎跡地に広がる各時代の遺構の残存状況を把握するために、県庁舎建物の区域を含め、確認調査を実施すること。庁舎基礎の撤去工事で、遺存していた区域が破壊されることのないよう、適切な時期や方法で調査を実施すること。
2.確認調査の結果に基づき、必要な場合には遺跡の性格を明らかにするために、保存を前提とした綿密な発掘調査を実施すること。
3.長崎県庁跡地の活用計画は、調査成果を踏まえてあらためて検討すること。重要な遺跡が発見された場合には、遺跡の破壊をさけ、調和の取れた景観の中で遺跡の活用を
はかり、歴史と文化の香るまちづくりをめざすこと。
以上