三原市所在県指定文化財和霊石地蔵磨崖仏の保存に関する要望書 2016年2月10日
埋文委 第9号
2016年2月10日
文化庁長官 青柳 正規 様
広島県知事 湯﨑 英彦 様
広島県教育委員会教育長 下崎 邦明 様
三原市長 天満 祥典 様
三原市教育委員会教育長 瓜生 八百実 様
一般社団法人日本考古学協会
埋蔵文化財保護対策委員会
委員長 矢島 國雄
三原市所在県指定文化財和霊石地蔵磨崖仏の保存に関する要望について
標記の件について、別添書類の如く、当該文化財は学術上極めて重要な内容をもつものでありますので、貴殿におかれましては、緊急に保存対策を講じられることを強く要望いたします。
なお、まことに恐縮ですが、当件の具体的な措置、対策については2016年2月20日(金)までに、当協会埋蔵文化財保護対策委員会委員長宛にご回答を下さるようお願いいたします。
記
一、別添書類 一通
以上
埋文委 第9号
2016年2月10日
文化庁長官 青柳 正規 様
広島県知事 湯﨑 英彦 様
広島県教育委員会教育長 下崎 邦明 様
三原市長 天満 祥典 様
三原市教育委員会教育長 瓜生 八百実 様
一般社団法人日本考古学協会
埋蔵文化財保護対策委員会
委員長 矢島 國雄
三原市所在県指定文化財和霊石地蔵磨崖仏の保存に関する要望書
広島県三原市佐木島(向田浦)に所在する県指定文化財和霊石地蔵磨崖仏は、鎌倉時代後期の正安二(1300)年、沼田荘(三原市西部)を管轄した有力在地領主・小早川(平)茂遠を大願主として造立され、以来地域住民にとってかけがえのない存在として、代々篤く祀られてきました。作者の念心は鎌倉時代末期における我が国屈指の石工であり、瀬戸内地方に多くの優れた石造工芸品を残しています。その中で和霊石地蔵磨崖仏は、彼の最初期の記念碑的作品です。
しかし、波打ち際にあって満潮時には像容の半分以上が海面下に沈む本磨崖仏は、近年とみに表面の風化・剥離が著しくなってきました。1976年11月に樹脂による補強と亀裂部のモルタル補修が実施されたのちも、特に仏像本体部分や銘文において剥落は止まらず、2011年11月、目視で確認された亀裂に再度の樹脂補修が施されました。ところが、2度目の補修後間もない2012年5月~8月、今度は接着処理のなされなかった右腕・錫杖の表層が大きく剥離してしまいました。2015年10月現在では、接着が行われた部分でも、人名を示す「釈尊円寂」の「円(圓)」字が剥落寸前のきわめて危険な状況にあります。以上の経過は、従来の保存処理方法がいずれも有効ではなかったことを示しています。この状態を放置しておけば、剥離は次々と広がり、やがて像全体に及ぶことは確実です。
風化や剥離の多くは、海水に浸かる部分で起きています。したがって主因が海水にあることは、誰の目にも明らかです。となれば本磨崖仏の保存は、いかに海水の影響を遮断するかにかかっていると考えます。
以上の諸点に鑑み、日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会は三原市和霊石地蔵磨崖仏の保存に関して、以下のことを要望します。
記
和霊石地蔵磨崖仏の急速な風化・剥離等に関し、速やかな保存措置を講じること。
本磨崖仏の恒久的な保存対策として、海水の影響を受けない方法についても十分に検討すること。
以上