「社会科・歴史教科書等検討委員会」のこれまでの活動
歴史教科書を考える 第14号
2016.5.19 日本考古学協会 社会科・歴史教科書等検討委員会
特集:社会科・歴史教科書等検討委員会発足10周年記念号
「社会科・歴史教科書等検討委員会」のこれまでの活動
1998(平成10)年の小学校学習指導要領改訂にともない、2002年より使用の小学校社会科教科書の本文から旧石器・縄文時代の記述が削除された。このことを受けて、我が国の歴史学習において、考古学の研究成果が適切に取り扱われるよう、国等に働きかけることを目的に、2006年に「社会科教科書問題検討小委員会」が発足した。2008年には常置委員会の「社会科・歴史教科書等検討委員会」となり、小・中学校の学習指導要領や社会科・歴史教科書の内容等について分析を行い、その成果を、文部科学省への声明文への提出、テーマセッション・ポスターセッションなどを通して広く社会に伝えてきた。
その結果、2008年改訂の小学校学習指導要領において、「狩猟・採集や農耕の生活」が示され、縄文時代を扱うことが明文化された。
しかし、『小学校学習指導要領解説 社会編』では「貝塚や集落跡などの遺跡、土器などの遺物」について調べるという表記にとどまり、人類史のはじまりについての説明は盛り込まれなかった。そこで、2014年日本考古学協会第80回総会では、次期学習指導要領の改訂に際し、小学校第6学年の歴史学習に旧石器時代の取り扱いを明確に位置付けることを目的として、「小学校学習指導要領の改訂に対する声明」を発表した。さらに、声明につづき「小学校学習指導要領の改訂に対する要望書」および「小学校指導要領等の改訂に対する改正案」を文部科学省に提出した。要望書では学習指導要領の修正事項をより具体的に明確化し、その改善を促すことを目的としており、①日本列島全域に普遍的に存在する考古資料を十分に活用し、身近にある郷土の歴史を学ぶ態度を養うこと。②人類発生から始まる歴史を明確に位置づけ、世界的な視野から人類の歩みを考える視点を育むこと。以上の2点に主眼におき成文化した。
要望書および改正案は2015年2月2日付で文部科学省に送付したが、これに対する回答は現在まで得られていない。しかし、本委員会としては中央教育審議会教育課程部会での審議のまとめ公表後と、文部科学省の学習指導要領改訂案公表後のパブリックコメントへの準備等、常置委員会としてその設立の趣旨を全うすべく、今後もあらゆる形で活動内容を広げていく所存である。
年度 | 活動内容等の概要 | 国の動向 |
2006 (H18) 年度 | □「社会科教科書問題検討小委員会」発足(4月) <発足経緯> *1998(平成10)年の小学校学習指導要領改訂にともない、「旧石器・縄文 時代」について教科書に記述されていない *第71回日本考古学協会総会において、学校教育に携わる会員から、上記に関する問題点が指摘 *日本考古学協会(理事会)において小委員会の設置了承 <活動の方向性> *教科書記載内容の根拠となる「学習指導要領」の問題点の明確化とその改 訂を要望 *現況の歴史学習の実態を検証し、より適切な内容となるよう提言 *原始・古代はもとより中・近世以降においても、歴史学習の素材として考古学の研究成果が有効であることを提示 □現行の教科書・学習指導要領の内容についての分析作業着手 □教科書会社(東京書籍)訪問(教科書編集過程等を取材) □愛媛大会においてポスターセッション開催(11月) *テーマ「歴史教育と考古学『教科書から消えた旧石器・縄文時代…』」 *アンケート調査実施 □文部科学大臣・中央教育審議会会長宛「学習指導要領の改訂に対する声明」を提出(11月) *旧石器・縄文時代の取扱いと、「続縄文・後期貝塚文化」に見られる地域 性の取り扱いについて要望 □第2回「日本考古学協会公開講座」(2007年3月)において、一般市民・マスコミ対象のポスターセッション及びアンケート調査を実施(テーマ、内容は愛媛大会時と同じ) | ◇教育基本法改正(12月) ○伝統と文化の尊重、我が国と郷土を愛する態度の養成 ○国際社会の平和と発展に寄与する態度の養成、など |
2007 (H19) 年度 | □第73回総会(5月、明治大学)において、ポスターセッション及びアンケート調査を実施(テーマ、内容は愛媛大会時と同じ) □通信「歴史教科書を考える」第1・2号発行 □東京学芸大学図書館の協力を得て、戦後から今日までに発行された小学校社会科教科書の資料収集・調査を実施 □熊本大会(11月)において、ポスターセッション及びアンケート調査を実施 *テーマ「教科書から消えた旧石器・縄文時代の記述-学習指導要領と教科書 の変遷-」 □中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会「教育課程部会におけるこれまでの審議のまとめ」に対するパブリックコメント(12月) □第1回シンポジウム「歴史教育と考古学」開催(2008年2月、東京学芸学) □「新学習指導要領の改訂」に対するパブリックコメント(2008年3月) □文部科学大臣、中央教育審議会会長宛「学習指導要領の修正に関する要望書」を提出(2008年3月) *「郷土」「旧石器時代」の取扱いを明確に追記することを要望 | ◇小学校学習指導要領告示・中学校学習指導要領告示(2008年3月) ○小学校社会科学習指導要領で、これまでの「農耕の始まり」を「狩猟・採集や農耕の生活」と改訂 |
2008 (H20) 年度 | □第74回総会(5月、東海大学)において、「考古学をとりまく諸問題」 *教科書に旧石器・縄文時代を記載する必要性や考古資料を活用した授業例 と学習指導要領の問題点の発表 □ポスターセッション及びアンケート調査を実施 *テーマ「学習指導要領と教科書の変遷―小学校第6学年社会科教科書にお ける旧石器・縄文時代の記述―」 □理事会(5月)において「社会科教科書問題検討小委員会」の常置化が承認 □理事会(7月)において「社会科・歴史教科書等検討委員会」として承認 □通信「歴史教科書を考える」第3・4・5号を発行 | ◇高等学校学習指導要領告示 (2009年3月) |
2009 (H21) 年度 | □第75回総会(5月、早稲田大学)において、『小学校6年社会科(歴史)教科書を考える一教科書改訂への提言』 *教科書の記述内容の分析作業を踏まえた具体的提言 □第75回総会(5月、早稲田大学)及び山形大会(10月、東北芸術大学)において、ポスターセッション開催 *テーマ「歴史教科書を考える」 □岩宿博物館企画展 「岩宿遺跡を学ぶ」(2010年2月)における企画展解説講座 *「歴史教育と考古学―教科書から消えた旧石器。縄文時代の記述―」とい うテーマで講演 | |
2010 (H22) 年度 | 2010 (H22) 年度 □第76回総会(5月、国士舘大学)において、ミニシンポジウムを開催 *テーマ「子ども達に旧石器・縄文時代をどう伝えるか―小学校の教科書で教えたい旧石器・縄文時代―」 *博物館及び小学校教育現場の実情についての事例報告後、課題に対する具体的な対策、学会としての活動課題について討論 □第76回総会(5月、国士舘大学)において、ポスターセッションを開催 *教科書の記載内容についての課題の掲示 *学習指導要領改訂告示後の検定本の速報展示 □兵庫大会(10月)において、ポスターセッションを開催 *テーマ「子ども達に弥生・古墳時代をどう伝える―小学校の教科書で教え たい弥生・古墳時代―」 | |
2011 (H23) 年度 | □第77回総会(5月、國學院大學)おいて、テーマセッションを開催 *テーマ「子ども達に弥生・古墳時代をどう伝えるか―小学校の教科書で教 えたい弥生・古墳時代―」 □栃木大会(10月、國學院大學栃木学園教育センター)において、ポスタ^セッションを開催 *テーマ「社会科教科書を考える」 | ◇小学校学習指導要領実施 |
2012 (H24) 年度 | □2012年度4月実施の「中学校学習指導要領」と中学校社会科(歴史)教科書の内容について継続的に分析 □第78回総会(5月、立正大学)及び福岡大会(10月、西南学院大学)において、ポスターセッションを開催 *テーマ「中学校社会科(歴史)教科書を考える」 *現行の検定済中学校歴史教科書(7社)の内容を一部掲示 □公募による委員の改選 □ポスターセッションにおける意見の整理・集約、問題点の抽出と総合的な比較・検討 ◇中学校学習指導要領実施 | ◇中学校学習指導要領実施 |
2013 (H25) 年度 | □第79回総会(5月、駒澤大学)及び長野大会(10月、長野市若里市民ホール・長野市社会福祉総合センター)において、ポスターセッションを開催 *中学校社会科(歴史)教科書の分析結果及び学習指導要領と教科書の記述 との対応関係を客観的に掲示 □ポスターセッションにおける意見の整理・集約、各社の教科書を「人類の誕生」「旧石器時代」「縄文時代」「弥生時代」「古墳時代」に区分した上で、問題点の抽出と総合的な比較・検討 | ◇高等学校学習指導要領実施 |
2014 (H26) 年度 | □文部科学大臣・中央教育審議会会長宛「学習指導要領の改訂に対する声明」を提出(5月) *「旧石器時代」の取扱いを明確にする声明 □第80回総会(5月、日本大学)において、テーマセッションを開催 *テーマ「小・中学校段階における歴史学習と考古学の役割-日本列島にお ける旧石器時代の取り扱いについて考える-」 □伊達大会(10月、だて歴史の杜カルチャーセンター )において、ポ スターセッションを開催 *テーマ「小・中学校段階における歴史学習と考古学の役割」 □第2回シンポジウム(11月8日、東京学芸大学)を開催 *テーマ「小・中学校段階における歴史学習と考古学の役割」 □通信「歴史教科書を考える」第12号を発行 □文部科学大臣、中央教育審議会会長宛「小学校学習指導要領の改訂に対する要望書」を提出(2015年2月) *「地域に残る遺跡や文化財」「人類のはじまり」「石器」の取扱いを明確 に追記することを要望 | |
2015 (H27) 年度 | □第81回総会(5月、帝京大学)において、ポスターセッションを開催 *テーマ「小学校学習指導要領等の改訂に対する要望」 □2015年度検定済小学校社会科教科書(4社)の内容について継続的に分析 □奈良大会(10月、奈良大学)において、ポスターセッションを開催 *テーマ「小学校社会科(歴史)教科書における弥生・古墳時代について」 *現行の検定済小学校歴史教科書(4社)および前回検定済教科書の弥生時 代から古墳時代の内容を比較掲示 □通信「歴史教科書を考える」第13号を発行 □「社会科・歴史教科書等検討委員会に関するアンケート」を実施 |
協会員の皆様へのお願い
これまで、ポスターセッション開催時や2015年8月発行の会報等で社会科・歴史教科書等検討委員会の活動等に対するアンケートを実施してまいりましたが、必ずしも多くのご意見が寄せられたわけではありませんでした。本委員会は、社会科・歴史教科書等の諸問題について多くの協会員と共有していく必要があると考えています。社会科・歴史教科書は子どもたちにとって考古学への入り口であり、考古学の将来のためにも極めて重要であることは言うまでもありません。どのようなことでも構いませんので、ご意見がありましたら下記へ、郵便またはメールでご一報ください。今後の活動に生かしてまいりたいと存じます。
〒132-0035 東京都江戸川区平井5-15-5 平井駅前共同ビル4階
日本考古学協会 教科書委員会担当
eメールアドレス:kyoukasyo@archaeology.jp