最近のポスターセッションと次期学習指導要領等改訂に向けたパブリックコメントの提出
歴史教科書を考える 第15号
2017.5.28 日本考古学協会 社会科・歴史教科書等検討委員会
昨年発行した『歴史教科書を考える』第14号では、社会科・歴史教科書等検討委員会の10年間にわたる活動の内容をまとめ、全ての協会員に配布した。また、日本考古学協会のホームページの刷新にあたり、近年発行した12号~14号までの『歴史教科書を考える』PDF版をのせたところである。協会員各位への本委員会の活動内容の周知は、さらなる積極的かつ多様な働きかけが必要であることは言を俟たないが、この『歴史教科書を考える』の発行を通じて、本委員会の活動を継続的に発信していくことも極めて重要であると考えている。
本号では第81回総会(帝京大学)から第83回総会(大正大学)までのポスターセッションの内容について、その概略を説明していきたい。また、2016年度において提出した2つのパブリックコメント(2016年10月、2017年3月)についても資料を提示し説明していきたい。
ポスターセッションについて
・第81回総会(5月、帝京大学) テーマ「小学校学習指導要領等の改訂に対する要望」
2015年2月2日付で文部科学省に提出した「小学校学習指導要領案の改訂に対する要望書」および「小学校学習指導要領等の改訂に対する改正案」について、その趣旨と具体的内容について述べたものである。
歴史教育に考古学の成果が適切に生かされるよう、以下の点について強く要望した。
1. 日本列島全域に普遍的に存在する考古資料を十分に活用し、身近にある郷土の歴史を学ぶ態度を養うこと
2. 人類の発生から始まる歴史を明確に位置づけ、世界史的な視野から人類の歩みを考える視点を育むこと
具体的に学習指導要領の当該箇所について改正案を提示したものである。詳細な内容は『歴史教科書を考える』13号(2015年5月発行)で示しているのでそちらを参照してほしい。ちなみに、要望書等に先立つ1年前には「小学校学習指導要領案の改訂に対する声明」を提出している。声明から要望書に至る経緯については、『日本考古学協会内81回総会研究発表要旨』を参照してほしい。
・2015年度大会(10月、奈良大学) テーマ「小学校社会科(歴史)教科書における弥生・古墳
時代について」
・2016年第82回総会(5月、東京学芸大学) テーマ「小学校社会科(歴史)教科書における弥生・
古墳時代」について
2015(平成27)年度から小学校6年生の社会科(歴史)の授業で新たに改訂された教科書が使用されていることを踏まえ、歴史教育における現状と課題を整理し、日本考古学協会として取り組むべき点を明確にするために、東京書籍、教育出版、日本文教出版、光村図書が発行した教科書について、上記のテーマで検討をおこなった。それぞれの教科書の明らかな間違いを指摘するとともに、2011年版の教科書と比較しながら加除・変更点等について検討した内容を掲示した。詳細は『日本考古学協会第82回総会研究発表要旨』を参照してほしい。
・2016年度大会(10月、弘前大学) テーマ「2016年度中学校社会科(歴史)にみる旧石器~古
墳時代の扱い」
・2017年第83回総会(5月、大正大学) テーマ「2016年度中学校社会科(歴史)にみる旧石器~古
墳時代の扱い」
2016(平成28)年度より、中学校の社会科(歴史)の授業で新たに改訂された教科書が使用されていることを踏まえ、歴史教育における現状と課題を整理し、日本考古学協会として取り組むべき点を明確にするために、東京書籍、教育出版、清水書院、帝国書院、日本文教出版、育鵬社、自由社、学び舎の合計8社を対象としてその内容を検討した。それぞれの教科書の明らかな間違いはもとより、中学校段階の教科書の問題点は、続縄文文化や貝塚文化など、北海道・東北北部、南西諸島の歴史を記述した教科書がほとんどないか、あってもコラム程度という現状である。現行学習指導要領には「身近な地域の歴史」とあり、それは最新の学習指導要領(案)においても踏襲されていることからすれば、北海道・東北北部、南西諸島の子どもたちは自らの住む地域の歴史を教科書では学べないということになる。また、いわゆる天皇陵古墳(同一の古墳)の表記が教科書によって異なっているという現状は、現在の考古学界ならびに歴史学界における混乱をそのまま示しているともいえよう。詳細は『日本考古学協会第83回総会研究発表要旨』を参照してほしい。
2016年10月に提出したパブリックコメントについて(3頁1~4)
・「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ」に対するパブリックコメント
1.134頁4行目 「博物館や資料館、図書館などの公共施設についても引き続き積極的に活用すること」
について
日本列島全域に普遍的に存在する考古資料は、それぞれの地域の博物館・資料館等に保管されているものなので、体験プログラム等、博物館・資料館の積極的かつ具体的な活用の方法を次期学習指導要領・学習指導要領解説に明示すべきとした。
2.135頁 社会科、地理歴史科、公民科における教育のイメージ 別添3-1【高等学校】①、【中学校】社会科③、【小学校】社会科(第3~6学年)③について
日本列島における弥生時代以降の歴史について、北海道および沖縄の独自な文化の存在を次期学習指導要領に明確に位置づける必要性を述べた。
3. 141頁 小学校社会 考えられる視点例 5~6行目 「時代、起源、由来」について
「起源」という視点が新たに示されたことを評価しつつ、人類の発生から始まる歴史を明確に位置づけ、グローバルな視点を学ぶよう次期小学校学習指導要領に盛り込む必要性を述べた。
2017年3月に提出したパブリックコメントについて(4頁1~4)
・「小学校学習指導要領案及び中学校学習指導要領案」に対するパブリックコメント
1.30頁の第1目標(1)および(3)、42頁の[第6学年]2内容(2)ア(ア)、46頁の第3指導計画の作成と内容
の取扱い2(1)および(3)について
小学校学習指導要領案の上記の箇所には、地域や我が国の歴史や伝統と文化、あるいは身近な地域および国土の遺跡や文化財といった記述があるが、日本列島における決して一律ではない歴史の流れ、すなわち北海道や沖縄の文化について子どもたちが学べるよう小学校学習指導要領および同解説に正確に位置づけられることを要望した。
2.42頁の[第6学年]2内容(2)ア(ア)、43頁の2内容(2)イ(ア)および45頁3内容の取扱い(2)キについて
小学校学習指導要領案の上記の箇所に「起源」という視点が新たに示されたことを評価しつつ、その始まりである日本列島における人類の出現、旧石器時代を学ぶことは不可欠であり、人類の発生から始まる歴史を明確に位置づけ、人類の歩みをグローバルに考える視点を育むことを小学校学習指導要領および同解説に盛り込むことを要望した。
3.45頁の[第6学年]3内容の取扱い(2)カについて
小学校学習指導要領案の上記の箇所の「年表や絵画」の前に「遺跡や文化財」という文言を加えることを要望した。
4.34頁の2内容B(1)ア(イ)および40頁の3内容の取扱い(3)アについて
中学校学習指導要領案の上記の箇所について、日本列島における弥生文化以降の歴史の流れが一律ではないことから、北海道や沖縄の文化を学習できるよう中学校学習指導要領および同解説に位置づけられることを要望した。
2016年10月に提出したパブリックコメント
日考協第56号
2016年10月5日
文部科学省 初等中等教育局教育課程課 様
一般社団法人日本考古学協会
会 長 谷 川 章 雄
平成28年9月9日に公表されました次期学習指導要頷等に向けたこれまでの審議のまとめに対するパプリックコメントの実施について、一般社団法人日本考古学協会としての意見を申し述べることにいたします。学習指導要領の改訂にあたり、歴史教育に考古学の成果が適切に活かされるよう、以下の点について強く要望します。なお、一般社団法人日本考古学協会といたしましては、次期学習指導要領改訂に係る協力は惜しまない所存です.
記
1.134頁4行目 「博物館や資料館、図書館などの公共施設についても引き続き積極的に活用すること」について
2.185頁 社会科、地理歴史科、公民科における教育のイメージ 別添
3- 1【高等学校】①、【中学校】社会科③、【小学校】社会科(第3~6学年)③について
3.141頁 小学校社会 考えられる視点例 5~6行目 「時代、起源、由来」について
件名:【次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめへの意見】
氏名:一般社団法人日本考古学協会
職業:団体
住所:東京都江戸川区平井5-15-5-4F
電話番号:03-3618-6608
意見:分類番号⑨第2部2.(2)社会、地理歴史、公民
•134頁4行目 「博物煎や資料館、図書館などの公共施設についても引き続き積極的に活用すること」について
博物館や資料館、図書館などの公共施設の活用については、これまでも行なわれてきたことですが、引き続き積極的な活用を促していることは極めて重要かつ評価できると考えます。そのためには、日本列島全域に普遍的に存在する考古資料を保管する地域の博物館・資料館の充分な活用や、それらの館における子供たちの発達段階を踏まえた体験学習プログラムの活用が不可欠です。博物館・資料館を積極的かつ具体的に活用する方法を次期学習指導要領・学習指導要領解説に明示すぺきと考えます。社会科教育からの視点のみならず、この審議のまとめの眼目である「主体的・対話的で深い学び」の実現にも大きく寄与すると考えます。
件名:【次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめへの意見】
氏名:一般社団法人日本考古学協会
職業:団体
住所:東京都江戸川区平井5-15-5-4F
電話番号:03-3618-6608
意見:分類番号⑨第2部2.(2)社会、地理歴史、公民
•135頁 社会科、地理歴史科、公民科における教育のイメージ 別添
3 – I【高等学校】①、【中学校】社会科③、【小学校】社会科(第3~6学年) ③について
日本列島における弥生文化以降の歴史の流れは一律ではなく、北海道には続縄文文化・擦文文化・オホーツク文化・アイヌ文化、沖縄には貝塚文化・グスク時代の文化があり、それぞれ独自の文化が存在します。これらの文化について、子供たちが学習できるよう、次期学習指導要領に位置づけられることを要望します。
件名:【次期学習指導要領等に向けたこれまでの寄儀のまとめへの意見】
氏名:一般社団法人日本考古学協会
職業:団体
住所:東京祁江戸川区平井5-15-6-4F
電話番号:03-3618-6608
意見:分類番号⑨第2部2.(2)社会、地理歴史、公民
•141頁 小学校社会 考えられる視点例 5~6行目 「時代、起源、由来」について
今回の審議のまとめにおいて、新たに「起源」という視点が示されたということは、極めて重要かつ評価できると考えます。その点について、人類の発生から始まる歴史を明確に位置づけ、グローバルな視点から人類の歩みを考える視点を育むことを次期小学校学習指導要領に盛り込むことを要望します。具体的には、日本列島における人類の出現、すなわち旧石器時代を是非とも明示すべきであると考えます。現生人類は10~7万年前にアフリカ大陸を出て何世代もかけて世界各地へと拡散し、遅くとも4~3万年前には日本列島に人類が出現することは定説です。日本列島における人類の出現を学ぶことは、グローパル社会に生きる子供たちの国際理解を深めることは間違いないと確信します。
2017年3月に提出したパブリックコメント
提出意見1:42頁の【第6学年】2内容(2)イ(ア)および45頁の3内容の取扱い(2)キについて
2016年9月9日に公表されました審議のまとめにおいて、 新たに「起源」という視点が示されたということは、極めて重要かつ評価できると考えます。
しかし、【第6学年】2内容(2)ア(ア)では現行学習指導要領と同じ「狩猟・採集」という表現であり、日本列島における人類の出現・旧石器時代が明示されていません。現生人類は10~7万年前にアフリカ大陸を出て何世代もかけて世界各地へと拡散し、遅くとも4~3万年前には日本列島に人類が出現することは定説です。日本列島における人類の出現を学ぶことが、グローバル社会を生きる子供たちの国際理解を深めることは間違いないと確信します。
また、2内容(2)イ(ア)には「我が国の歴史上の主な事象を捉え、我が国の歴史の展開を考える」、3内容の取扱い(2)キには「我が国は長い歴史をもち伝統や文化を育んできた」とあります。我が国の歴史を学ぶためには、その始まりである日本列島における人類の出現・旧石器時代を学ぶことは不可欠ではないでしょうか。人類の発生から始まる歴史を明確に位置づけ、人類の歩みをグローバルに考える視点を育むことを小学校学習指導要領および同解説に盛り込むことを要望します。
提出意見2:小学校学習指導要領案:45頁の【第6学年】3内容の取扱い(2)カについて
「年表や絵画」の前に「遺跡や文化財」という文言を加えることを要望します。
提出意見3:中学校学習指導要領案:34頁の2内容B(1)ア(イ)および40頁の3内容の取扱い(3)アについて
2内容B(1)ア(イ)の表題を「日本列島における国家形成と多様な文化」に訂正することを要望します。また、「農耕を行わない地域や大和政権(大和朝廷)の勢力が及ばない地域があることにも留意すること」という文章をこの項目の末尾に加えることを要望します。
3内容の取扱い(3)アには「農耕の広まり」と「古墳の広まり」という文言がありますが、日本列島における弥生文化以降の歴史の流れは一律ではなく、北海道には続縄文文化・擦文文化・オホーツク文化・アイヌ文化、沖縄には貝塚文化・グスク文化があり、それぞれ独自の文化が存在します。子供たちが自らの地域のこれらの文化について学習できるよう、中学校学習指導要領および同解説に位置すけられることを要望します。
おわりに
近年の本委員会の活動内容を紹介してきたが、今後、正式に発表される学習指導要領およびそれに基づいて発行される教科書の内容について、本委員会さらには日本考古学協会として注視し、検討を加えたい。