社会科・歴史教科書等検討委員会の目的と活動の概要および2019年度の活動内容
歴史教科書を考える 第18号
2022.10.8 日本考古学協会 社会科・歴史教科書等検討委員会
1.社会科・歴史教科書等検討委員会の目的と活動の概要
本委員会は、1998年の学習指導要領改訂で、2002から使用する小学校の歴史教科書本文から旧石器・縄文時代の記述が削除されたことをきっかけに、2006年に小委員会として発足し、2008年からは常置委員会となった。その任務は「考古学の学問的特性や研究成果が学校教育に適切かつ有効に活用されるよう図るとともに必要な働きかけを行うこと」(委員会規定・目的・第2条、2016年施行)である。委員会発足以来、第一に取り組んできたのは小学校教科書への旧石器時代記述の掲載に向けた活動である。このため、歴史教科書やそれを規定する学習指導要領等の分析・検討をおこない、結果を本協会の研究発表会・大会ならびにシンポジウム等を通して公開・発信し、議論を深めてきた。また文部科学省や中央教育審議会に学習指導要領に関して要望書や声明文等を提出してきた。以上の目的を達成すべく2019年度には、以下のような活動をおこなった。
2.2019年度の活動内容
(1)総会・研究大会でのポスターセッション
1)第85回総会
5月19日に駒澤大学で開かれた総会のポスターセッションで、本委員会は「学校教育と考古学(その2)−各地の教育実践の紹介ほか−」と題したポスターを作成して参加した。9枚のポスターを掲載したが、そのうち7枚は2018年度秋の研究大会で作成した委員会活動の概要をまとめたものと北海道での博学連携事業、群馬県の中学校での調査で出土した考古学資料を使った授業の報告である。、他に、「旧石器時代を学習する意義と課題」について2枚を新たに作成し、展示、解説した。
1枚目では、小学校・中学校の教科書、博物館の図録等に使用された旧石器時代のイメージ画について集成・考察を行った。現在、小学校では教科書に掲載された大きな挿絵を使って子供たちが考えるスタイルの授業が多く行われており、挿絵の重要性は増している。ポスターでは旧石器時代のイメージ画を発行年代順に並べ、挿絵主題の変遷と旧石器時代研究の進展について分析した。挿絵はその時代のイメージを強烈に植え付けることから、しっかり考証する必要性を示した。
2枚目は、旧石器時代を初等教育で扱う意義について言及した。現行の小学校教科書では、狩猟・採集の時代について縄文時代の事例のみでとらえようとしているが、旧石器時代だからこそ語ることができる主題について示した。例えば、日本列島における人類史の始まりを示すこと、旧石器時代の自然環境と生活の関わりを考察できること、人類の移動や黒曜石の流通などに関わるグローバル、ダイナミックな視点などを挙げた。
2)岡山大会
10月26日・27日の両日、岡山大学を会場として開かれた研究大会で、本委員会は「学校教育と考古学(その3)−各地の教育実践の紹介ほか−」と題したポスターを作成し、ポスターセッションに参加した。埼玉県埋蔵文化財調査事業団、石川県埋蔵文化財センター、岐阜県文化財保護センター、島根県立埋蔵文化財センターによる「博学連携活動」の事例報告を、各機関1枚ずつのポスターにまとめて掲示した。特に年間100件以上実施する岐阜県、170例の貸出キットを準備する埼玉県などは、参考になる先進的事例であった。
事例報告をした財団の職員の来場もあり、ポスターのHPへの掲載の積極的推進について賛同を得るとともに、「出前授業」の問題点についても意見交換することができた。各県の埋文センター等で調査を経験した高校教員の来場がいくらかあった。春の総会に比べると学生の来場は少なかったが、これは東京における参加学生総数との違いがあろう。会場校の学生は高い関心を示してくれた。
来場者との意見交換の結果、学校側から博物館、埋蔵文化財センターに「旧石器時代を語る」依頼が無い現状を確認した。
第86回総会では「歴史教科書と旧石器時代」をテーマにセッションを行う。学習指導要領により、狩猟採集民について教えることが可能となり博物館の利用が推奨される状況を鑑みて、旧石器時代の教科書掲載に意義があることを再確認したい。
※本号は2020年度の総会会場での配布を目指して準備されてきたものを再編集したものである。