社会科・歴史教科書等検討委員会の目的と活動の概要および2020~2022年度の活動報告

歴史教科書を考える 第20号
2023.5.27 日本考古学協会 社会科・歴史教科書等検討委員会

1.社会科・歴史教科書等検討委員会の目的と活動の概要
 社会科・歴史教科書等検討委員会は「考古学の学問的特性や研究成果が学校教育に適切かつ有効に活用されるよう図るとともに必要な働きかけを行うこと」(委員会規定・目的 第2条、2016年施行)という任務のもと、活動を展開している(本委員会の発足の経緯および概要に関しては第17号の冒頭を参照)。以下、2020~2022年度の活動について記していきたい。
2.2020~2022年度活動報告
(1)総会セッション「旧石器時代を小学校の授業で語りたい」
 本委員会は発足以来、小学校の教科書に旧石器時代に関する記述が掲載されることを最優先の課題として取り組んできた。2020~2021年もテーマセッションやポスターセッションにおいてこの問題を取り上げている。
 2020年6月の第86回総会においては「旧石器時代を小学校の授業で語りたい―博物館・埋蔵文化財センターからのアプローチ―」というタイトルでセッションを予定していたが、新型コロナウィルス感染拡大に伴い研究発表は中止となった(発表要旨は『日本考古学協会第86回総会研究発表要旨』119-129頁に掲載されている)。あらためて翌2021年5月の第87回総会(於:専修大学)において「続・旧石器時代を小学校の授業で語りたい―博物館・埋蔵文化財センターからのアプローチ―」というセッションを開催し、オンラインで下記の発表が行われた。
①釼持輝久「続・旧石器時代を小学校の授業で語りたい」
 小学校の歴史学習における旧石器時代の必要性や児童向けの図書における旧石器時代の扱い、および旧石時代の授業に関する   実践的な授業例について。
②小菅将夫「続・岩宿博物館における体験学習から旧石器(岩宿)時代を学ぶ意義を考える」
 群馬県みどり市の岩宿博物館における黒耀石を使用した体験学習の実践例やその教育的な意義について。
③大竹幸恵「続・ふるさとの歴史に学ぶ人類の絆」
 長野県の黒耀石体験ミュージアムの事例を紹介しながら、国際的見地からの歴史学習の重要性について。
④田中広明「学習用キットを用いた「文字と国つくり」の授業」
 埼玉県埋蔵文化財事業団が行った学習用キット授業案「文字と国つくり」について。
⑤松本建速「小学校歴史教科書と旧石器時代―記述テーマ変遷の歴史」
 小学校の教科書における旧石器時代の記載について、1958年以降現在にいたる変遷の歴史について。
 いずれも意義深く、触発されるところが大きい内容であった。さらにこれらの報告の要旨は2021年10月に開催された大会(於:金沢大学)のポスターセッション「学校教育と考古学(その4)」でも公表された。
(2)小学校および中学校の教科書に関する検討
 2020年度においては2020年4月から使用されるようになった小学校の社会科の教科書全3社(東京書籍、日本文教出版、教育出版)に関して、旧石器時代から古代までの内容を検討し、問題点について話しあった。上記のように本委員会は発足以来小学校教科書における旧石器時代の記述の掲載を主要な目標に掲げてきたが、唯一旧石器時代に関する言及があった1社からもその記述が無くなっており、より一層の努力が必要であることが痛感させられた。
 続く2021年度においては2021年4月から使用されている中学校の歴史の教科書全8社(東京書籍、教育出版、帝国書院、山川出版社、日本文教出版、育鵬社、学び舎、自由社)に関して、旧石器時代から古墳時代までの内容を検討し、問題点を洗い出した。その検討結果は2022年10月に開催された大会(於:九州大学伊都キャンパス)のポスターセッション時に口頭にて解説された。
(3)ホームページリンク集「考古学と教育」
日本考古学協会のホームページの「考古学と教育」の項目に、「授業で使える遺跡・博物館ホームページリンク集」を作成した(/education/for-education-link/)。
(4)委員による旧石器時代を扱った小学校での実践授業
 本委員会の小森牧人委員が勤務先の小学校において旧石器時代に関する実践的な授業を行い、2021年10月の大会(於:金沢大学)におけるポスターセッションでその報告がなされた。さらにその後、『教育科学 社会科教育』に成果が公表されている(小森牧人「地域の旧石器時代を教材とした、歴史学習の導入―歴史の学習をはじめよう―」『教育科学 社会科教育』761号、明治図書出版、2022年9月、26—29頁)。黒曜石の石器で本物の肉を切る実験を行ったり石器作りの動画を視聴したりした際には、生徒から感嘆の声が上がったという。旧石器時代に関する有益な授業プランであり、今後同様の実践が普及することが期待される。
(5)教科書会社訪問
 2021年12月10日に本委員会の委員2名が日本文教出版株式会社を訪問し、小学校の教科書作成に関する情報収集を行った。それにより、教科書の記載内容は執筆者が決めること、かつて記載があった旧石器時代に関する記載が削除された理由は捏造問題とは無関係であること、小学校の教科書で扱う歴史は通史ではなく、また扱う「量」を減らす必要があることなどから縄文時代からの記載になっていることなどが確認された。この訪問により得られた情報を踏まえた上で、本委員会として今後いかなる活動を展開していくのか検討されよう。
(6)教育用Webコンテンツの作成
 現在、上記の「授業で使える遺跡・博物館ホームページリンク集」とは別に、教育用のWebコンテンツを作成すべく検討中である。GIGAスクール構想にも対応すべく小学生、中学生および教員が使用できる考古資料に関する写真・動画・3Dデータなどを一覧できるページを作成していきたい。
(7)カフェde考古学
「ここまでわかった旧石器時代」というテーマで2月11日(土)に岩宿博物館からオンラインで開催し、延べ46名の参加を得た。当日の進行は、小菅委員より岩宿遺跡発掘から70年を経過する旧石器時代研究の現状と成果について解説を行い、木村委員の司会で事前に寄せられた参加者からの質問に小菅委員が回答する形とした。アンケートでは、旧石器時代をテーマとするトークを初めて聞くという方も多い中で、研究の成果がよくわかったと概ね好評であった。