日本考古学協会委員会
11月5日,マスコミによって暴露された,いわゆる「石器発掘捏造事件」は,考古学に対する社会的信頼を失墜させ,日本列島の人類文化の起源という歴史上の重大問題に関する学術研究上の不備を示すこととなった。
日本考古学協会委員会は,この事態を深刻に受け止め,11月12日に緊急委員会を招集し,この問題への対応を協議した結果 ,このことは個別研究分野,あるいは関係機関や関係研究者だけの問題でなく,事実の解明とともに,考古学の負わされている社会的責務に鑑みて,日本考古学協会が中心となって全学界的に早急に取り組むべき課題であるとの共通 認識に達した。
この認識に基づいて,本委員会は見解を発表し,その中で,標記の特別 委員会の設置準備をすすめることを言明した。委員会・事務局では,会長・副会長の指示の下,有志会員の意見を聴取するなどのことを含めて特別 委員会設置に向けての準備をすすめてきた。その結果,下記のような基本方針で,特別 委員会準備会を発足させたいとの結論に至った。
本委員会活動は,積極的に公開性と相互批判を進めるもので,学術的な公正さを堅持するものでなければならない。
本特別委員会の任務は大きく分けて次の2点である。(1)「捏造工作」の発覚で疑惑のもたれている,前・中期旧石器時代諸遺跡の事実認定調査を支援し,これに協力し,学会として必要な助言,調整を行うこと。(2)前・中期旧石器時代研究の現状を整理・総括し,課題と研究の論点を明らかにし,日本列島の人類文化の初源に関する集中的な研究の進展に必要な方法論の確立と,研究および調査体制の整備を進める。
本特別委員会は2001年5月に予定されている2001年度日本考古学協会第67回総会において設置の決議が行われ,正式に発足する運びとなるが,その組織は,日本考古学協会会員のみでなく,関連諸科学分野の研究者を委嘱するなど,100名規模の大型プロジェクトとなることが想定され,諸課題にそった複数のサブ・プロジェクトによって具体的な調査・研究が進められることになろう。
以上のような諸活動には,会員,会員外を含めた研究者が積極的に参加できる組織運営が必要である。
今回の不祥事への対応は緊急を要する。しかし,日本考古学協会の規約に基づく特別 委員会の設置は,上記の通り来春の総会決定を待たなければならない実情である。このため,日本考古学協会委員会では,それまでの間,実質的に特別 委員会の目的につながる諸課題の基本的な解決方法を検討する。
協会委員会としては,各地域の研究団体,関連各分野の学会,文化庁をはじめ関係地方自治体の文化財行政機関等々に,特別 委員会の活動への支援・協力を求め,必要な協議・要請を進める。