第13回「令和2年度の新型コロナウィルス感染拡大防止対策と整理作業を振り返って」 上野 真由美

 令和2年度は、新型コロナウイルス感染拡大防止対策に明け暮れた1年となりました。ここでは、整理作業におけるコロナ感染拡大防止対策についてお話します。

 今年度の整理作業が始まる前、令和2年2月27日、全国の小中高校に臨時休校が要請され、3月11日に世界保健機関がパンデミックを宣言しました。3月25日には東京都知事が記者会見で週末の不要不急の外出自粛要請を出すなど、ジワリジワリと恐怖感が日ごとに増していき、マスクも消毒液も手に入りにくい状況となっていきました。4月7日からは、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県を対象に緊急事態宣言が発出され、4月11日には首相から、オフィスの仕事は原則として自宅、出勤が必要な場合でも、最低7割は減らすことが求められました。

 公益財団法人埼玉県埋蔵文化財調査事業団では令和2年度の整理作業が4月6日から始まりました。在宅勤務が要請されていましたが、遺物を対象とする作業が多い整理ですが、自宅に遺物を持ち帰ることは許可されず、職員が在宅勤務する勤務内容は限られていました。また、100名前後雇用している整理補助員が、在宅勤務を行うことは事実上不可能なことでした。未知のウイルスに対して、どのような対策が本当に必要なのかもわからないまま、手探りのような状態での作業開始でした。その頃は、町から人が消えた時期でもありました。職員が直面したのは、整理事業を行うことと、自分たちや補助員の安全を守ることが本当に両立できるのかということだったのではないでしょうか。

 新型コロナウイルス感染拡大防止対策は、3密の回避はもちろんのこと、感染者が出た場合に濃厚接触者が全員に及ばないよう作業場所を各自分散して固定化し、廊下やトイレなどの共用部分についても固定化をお願いしました。会話をする場合は、マスクを必ず装着することもお願いしました。発熱した場合や家族が発熱した場合など、様々な状況に応じた対応策も策定されました。また、夜間や休日における補助員の緊急連絡先、補助員の緊急連絡網の整備なども行いました。4月末から5月にかけては、週に1回作業休止日と職員の在宅勤務日を合計3日設けました。年末には新しい生活様式を改めてお願いしました。マスクを取る食事中の感染が多いことがわかり、「黙食」を徹底することにもなりました。対策は徐々に充実していったもので、4月の緊急事態宣言期間中は、発熱してもPCR検査を受けることが出来ないことも多く、新型コロナウイルス感染の有無を確かめられないまま、同じ部屋で作業していた整理補助員に自宅待機をお願いしたこともありました。

 1回目の緊急事態宣言が終了すれば、好転するのではという願いも虚しく、感染拡大は2波、3波と発生し、令和3年1月8日からは2回目の緊急事態宣言が発出されました。事業団で新型コロナウイルス感染拡大防止対策の真価が問われるのは、感染者が発生した時であると覚悟を決めていましたが、3月後半、令和2年度の整理作業が感染者の発生もなく無事に終了しました。しかし、コロナ感染拡大防止対策が今後も続けて行かなくてはならず、緊張状態は来年度も続いて行きます。

 新型コロナウイルスのような疫病は今まで、歴史の中で何回も現れたのでしょう。そのような視点から、考古学の成果を改めて振り返れば、何らかの現象が認められるのではないのでしょうか。今後、コロナ感染が爆発的に拡大した場合問われるのは、発掘調査、整理作業の是非かも知れません。しかし、考古学は決して生活と遠く離れたものではなく、現在の生活においても必要な学問であることを知ってもらうことも大切であると痛感した一年でもありました。